Bob Dylan『THE ORIGINAL MONO RECORDINGS』インプレその5
まだまだ続く、ディランのモノ・ボックス検証シリーズ。今回は6作目『Highway 61 Revisited』。
■『Highway 61 Revisited』
前作『Bringing It All Back Home』から取り入れたバンド・スタイルでのサウンドは、このアルバムで完成される。フォーク・ロックと呼ばれるサウンドの到達点であり、ディランの、ひいてはアメリカン・ロックの代表作でもある。収録曲はいずれも人気が高く、今もってライヴのセット・リストに組み込まれることが多い。
こちらがモノ盤ジャケット。右の写真にある通り、中にはリトグラフ風のイラストが封入されていた。オリジナル盤発売当時に付けられていたおまけの復刻らしい。レーベル面はデザインが変わり、「360 SOUND」のロゴが。
今回比較に使用したステレオ盤は、03年リマスターの日本盤紙ジャケCD。デザインはやっぱりステレオの方がぎこちない。ただし、色合いは日本盤の方が鮮やかだった。
これまで比較してきた5枚のアルバムに関しては、概ねモノ盤の方が「聴きやすい」という印象だった。しかし、このアルバムで初めてステレオの方に軍配を上げたくなった。
例えばオープニングを飾る大ヒット曲、「ライク・ア・ローリング・ストーン」を聴いてみると、よりインパクトを感じるのはステレオだった。この曲の場合、バンドはベース、ドラム、リード・ギター、ピアノ、オルガン、タンバリンの大所帯で、そのバックを従えてディラン本人のヴォーカル、ギター、ハーモニカが聴こえる。
これだけ厚いサウンドが中央から聴こえるモノは、さすがにべったりとした印象で、ディランのヴォーカルが埋没してしまっている。ヴォーカルにはリヴァーブがかけられていて、少しでも目立たせようとしているようだが、焼け石に水。
ステレオは左側にピアノとベース、右側にオルガンとタンバリン、リード・ギター、それ以外が中央に配置されているので、それぞれが混じり合うことなく迫ってくる。この曲のダイナミズムを味わうには、ステレオが理想的に思えた。
2曲目の「トゥームストーン・ブルース」も同様で、マイク・ブルームフィールドの凶暴なギターは右側から切り込んできた方がスリリングに聴こえる。
03年版リマスターは他のアルバムと同じく、このアルバムでも音圧が高めではあるものの、この分厚いサウンドはけたたましく響くぐらいが相応しい。
モノの方がしっくりくると感じたのは「クイーン・ジェーン」「廃墟の街」などの比較的落ち着いた曲だ。これらは他の曲より編成がシンプルなので、そう感じたのだろう。
ただステレオはステレオで欠点があり、「ライク・ア・ローリング・ストーン」では24秒あたり(〜you're bound to fallのところ)で、一瞬左チャンネルのレベルが落ちる。古い録音なので聴き苦しい部分が発生するのは仕方のないところだろうが、モノ盤ではこうした箇所は見つからなかった。
モノとステレオの違いで気付いた点がもうひとつ。アルバムのトータル・タイムは、モノが49分19秒、ステレオが51分33秒と、初めてモノの方が短かった。いずれの曲もモノの方が短いのだが、特に顕著だったのは「悲しみは果てしなく」(モノ3分30秒、ステレオ4分09秒)「クイーン・ジェーン」(モノ5分01秒、ステレオ5分31秒)「追憶のハイウェイ61」(モノ3分19秒、ステレオ3分30秒)「親指トムのブルースのように」(モノ5分12秒、ステレオ5分32秒)あたり。モノの方が11秒から、最大で39秒短い。
それぞれ聴き比べてみると、モノが短い理由は共通していた。どの曲もアウトロが早くフェード・アウトするのだ。このアルバムはどの曲もセッション形式で録音されており、アウトロの長さははっきり決められていなかったようだ。そのため録音後、適当なところでフェード・アウトするようミックスされたのだが、そのタイミングはいずれもモノの方が早かった。
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検証シリーズで紹介している通り、私が購入したセット(US盤)ではCDが入っている紙スリーブは全て白の無地なのだが、ファーストとセカンドは印刷されたスリーブがあるようだ。
その情報が掲載されているのがこちらのブログ。これによると、ファーストはスリーブにコロムビア・レコードの宣伝、セカンドはコロムビアのロゴ入りの模様が印刷されている。
何故このような違いが発生しているのかは不明。私は日本のAmazonから購入したのだが、先のブログの方はAmazon UKで購入された模様。つまりUS盤とUK、もしくはEU盤の違い?或いは同じUS、もしくはUK、EU盤でも生産ロットによって違いがあるかも。
もしかするとスリーブ以外にも何かが違うヴァージョンがあるのかもしれない。このセットを購入された方で、私が紹介した内容と違うものを持っているという方は、コメント欄かTwitterからお知らせいただければ幸いです。