UA@日比谷野外音楽堂



 ということで、埼玉スタジアムから日比谷へ移動。18時の開演直前に滑り込む。UA野音公演は毎年の恒例行事となっており、人気が高い。この日も立ち見多数の超満員だった。
 定刻になると告知されていなかったスペシャル・ゲスト、朝崎郁恵がステージに登場。UAの大師匠であり、奄美島唄伝承の第一人者だ。内橋和久、鈴木正人のバッキングを従え、島唄を2曲披露。満員の野音を独自のカラーに染めてしまう神秘的な歌声が圧巻だった。オープニング・アクトとしてはあまりにも豪勢。
 そしていよいよ本編のUA登場。気になるサポートメンバーは先ほどの内橋(ギター)、鈴木(ベース)に加え、芳垣安洋(ドラムス)、青木タイセイ(トロンボーン、キーボード)、塩谷博之(クラリネット、サックス)、MEG(コーラス)、太田美帆(コーラス)という布陣。pupaの権藤知彦(ユーフォニアム)が抜けている以外は、今年発売された『ハルトライブ』の面子と同じだ。『Golden Green』のツアー辺りから、メンバーは多少違えど概ね同じ編成でライヴを行っているので、UAとしても究極のアンサンブルなのだろう。
 セットリストは別掲の通り。発売されたばかりのカヴァーアルバム『KABA』のナンバーを中心に、それ以外は新旧取り混ぜて全キャリアから掬い上げた感じ。本人が何度か口にしていたように、このライヴはデビュー15周年の記念でもあり、全編を通して感謝の念が込められていたように思う。
 それだけに祝祭的色合いの強いライヴで、バンドとの緊密な駆け引きから紡ぎ出されるカタルシスの発露といった、普段のUAのライヴでの言葉を奪われるような圧倒的な迫力は少なめ。肩の力を抜いたフランクなパーティーとでも言うべきものだった。こういうライヴもたまには良いだろう。同じ野音でもガチガチだった『Golden Green』の時のライヴと比べると、何と陽気だったことか。
 しかしあくまでもUAのライヴなので、舌を巻くような瞬間もここそこに。「Lightning」でのヴィブラートを含んだ伸びやかなヴォーカルに胸を打たれ、「買い物ブギ」でのラップまがいのテンポで繰り出される流暢な関西弁はまさに笠置シヅ子が乗り移ったかのようだった。また『ATTA』の曲はやらないのかなと思っていた矢先に演奏された「Famillia」と「TIDA」のグルーヴィーなメドレーがこの日のハイライト。ジャズ・ファンク調のビートに乗って、UAとコーラスのMEG、太田美帆のヴォーカルが絡み合う様はえも言われぬ快感。『ATTA』発売後のライヴの時より良かったほどだ。
 鉄壁のアンサンブルはもう一方の主役で、痒いところに手が届くというか、ツボを押さえたバッキングに感嘆しきり。特に魅了されたのはドラムの芳垣安洋。ジャズ畑のミュージシャンだけあって、リズム楽器でありながら雄弁に物語るプレイは見事としか言いようがない。オカズだらけのこのドラムだけで、ご飯が食べられそうだった。いつもながらUAはもの凄いドラマーを起用する。
 本編だけで終わったとしても充分におつりが来るライヴだったが、2度のアンコールによってさらなるプレミアが。1度目のアンコールでは何とデビュー曲の「HORIZON」が聴けた。私は『アメトラ』のツアーから合計30回以上UAのライヴを見ているが、「HORIZON」を聴いた記憶は無い。これぞ15周年ならではのスペシャル。続いて『KABA』からアコースティック・ギターをバックに歌われた「わたしの赤ちゃん」に会場が静まり返った。「今にこの子は/喋るわ/魔法の言葉を」なんてUAに歌われたら泣かずにいられようか。この曲は七尾旅人の作品で、オリジナルを聴いてみたいと思い探したところ、まだ音源は発売されていなかった。7月リリースの彼の新作にて初めてCD化されるようだ。
 そして2度目のアンコールはファン・サービスの極致のリクエスト大会。まず一番リクエストの多かった「水色」を採用。しかしアカペラに近いアレンジによる「水色」だけでは、せっかく出てきているバンド全員がもったいないともう1曲募って「情熱」も演奏することに。「情熱」→「水色」の順で披露されることになったが、「情熱」で大喜びした観客の反応の良さに応えて、さらに「太陽」までサービス。
 会場からのリクエストはどうしても初期の曲に集中してしまうのは仕方のないところか。個人的には「ドア」とか「Moor」とかでも嬉しかったのだが、それは野暮というもの。15周年を祝うイベントとしてはこういう締めくくりで良かったのだと思う。


【セットリスト】
01. セーラー服と機関銃
02. モンスター
03. そんな空には踊る馬
04. TORO
05. Lightning
06. きっと言える
07. 買い物ブギ
08. Hyperballad
09. 太陽ぬ落てぃまぐれ節 (w.朝崎郁恵
10. 閃光
11. 雲がちぎれる時
12. Famillia
13. TIDA

Encore 1
14. HORIZON
15. わたしの赤ちゃん
16. ミルクティー
17. 故郷(ふるさと)(w.朝崎郁恵

Encore 2
18. 情熱
19. 太陽手に月は心の両手に
20. 水色