妄想セックス、露出オナニー in TOKYO@新宿LOFT



 けったいなイベントタイトルを付けるなよ。ファミマでチケットを発券するまで知らなくって、「こちらでよろしいですか?」とレジのお姉ちゃんに聞かれて恥ずかしかったじゃないか。
 ミドリが毎年一度企画するイベントで、今年は初めて東京での開催となったのだとか。この日は定期通院の日で、朝から病院へ行って、帰宅したのが4時半ぐらい。睡眠不足の日が続いていたためフラフラで、6時まで寝てからまた出掛けようとソファに横になったまでは良かった。しかし月日の経つのは早いもので、次に気がついたのは8時半だった。イベントは7時開演だったので当然スタートしている。この時間から向かってもあまり見られないだろうから、もう行くのはよそうかと逡巡したが、最終的にチケット代が惜しいという判断に至り、ノコノコと新宿へ。貧乏性は意外な行動力を生む。
 LOFTに着いたのは既に9時過ぎで、ステージではオシリペンペンズが演奏していた。まあ、こんな感じ。

 と、手抜きで片付けるのも何だが、3曲ぐらい、しかも満員だったため柱の裏にあるモニターを通して見ていただけなので評価が難しい。所謂関西ゼロ世代に属するバンドで、その肩書きがブランドになってしまっているため、ライヴを見たのは初めてだったが期待したほどの意外性は無かった。「北海道行って牧場経営せえ!」には笑ったけど。
 続いてバー・ステージの方でチョップリンが出演。コントである。バンドだけではなく、コメディアンも出演するイベントなのだ。私はメインのステージの方に残り、これもスクリーンで見た。日常的な設定に不条理を持ち込み、強引に話を進めるコントを2本。無理やりに不条理世界で辻褄を合わせようとするのではなく、時々常識で引き戻すあたりが良い。だからボケより突っ込みが面白かった。
 そして早くも大トリのミドリ。チョップリンの出演中にメイン・ステージのフロアが少し空いたため、モッシュゾーンへ。最近は年齢を考え、モッシュすることも無くなってしまった私ではあるが、少しでもチケット代の元を取りたいという考えが頭をもたげたのだと思われる。貧乏性は意外な行動力に結びつくのだ。
 6月にやはりこのロフトで見た時と同様、今のこのバンドには神々しいオーラが感じられる。加えて自主企画とあって、テンションの高さは半端ではない。それに負けじと観客も熱い声援とモッシュで応える。1曲目からもみくちゃにされ、楽しい楽しい。このバンドと対峙するにはこれくらいの環境が望ましい。
 セットリストは現在のミドリの極みと言えるもので、短い時間に可能な限り詰め込んだ贅沢なもの。その分普段からライヴに通っている人にはありがたみが薄かったかもしれないが、にわかファンの私にとっては満足の行くものだった。当然ながら後藤まりこは度々フロアにダイブを敢行。ナウシカのラストシーンのように、王蟲の触手のごとき無数の腕が掲げられた上で絶叫する後藤の根性の座り方には驚かされる。観客を信頼していなければこんなことはできないはずだ。ましてやセーラー服姿なのだから。私もモッシュゾーンにいたので、本当に間近に後藤のお顔を拝見したが、迷いの無い実に良い表情をしていた。
 本編はあっという間に終わってしまい、アンコールを求める嬌声だか怒声だか、何だかもうよく分からない声が飛び交う中、メンバーは本当にアンコールに応えた。後藤のMCによるとアンコールに応じるのははバンド史上2回目か3回目のことだそうだ。この日がスペシャルなライヴであったのには理由があり、前任のベースである劔樹人が失踪してちょうど1年に当たる日だったからのようだ。以前は体調不良のため休養→脱退と説明されていたが、昨年の9月18日に大阪でのライヴを終えた翌日、劔樹人は失踪したのが真実であることが後藤の口から明かされた。そして劔とは恋人関係にあったことも。劔が行方不明になった時には、今後大勢の人の前でライヴをすることもないだろうとまで思っていたそうだ。しかしミドリはそれ以後むしろ知名度を上げた。今では拠点も東京へ移し、馴染みのバンドをいくつも大阪から呼び、自主企画ライヴを東京で開くことができたことを感謝していると。本心からそう言っているとしか思えない感動的なMCで、このライヴが記念碑的なものであることが観客全員に伝わっただろう。そして「お猿」「POP」の2曲を叩きつけ、幕。
 この日は全出演者の持ち時間が30分ずつということで、短いライヴではあったが、それでも全身汗だくで髪はボサボサになった。それも勲章のようなもので、誇らしく感じられるほど充実したライヴだった。評判は聞いていたneco眠るや、5年ほどライヴを見ていない怒髪天を見逃したのは残念だったが、やはり来て良かった。ありがとう、貧乏性。