ロックンロールお年玉@川崎Club Citta



 最後にクラブ・チッタへ行ったのはソニック・ユースの時だったか、クランプスの時だったか。いずれにしても10年ぐらい前で、今の場所に移転する前のことだ。昔チッタから徒歩15分ぐらいの所に住んでいたこともあり、非常に懐かしい気持ちで再訪。かつてシネチッタだった建物もすっかり建て替えられてかつての面影は無く、戸惑ってしまった。
 16時半開演のところ、17時過ぎに到着したら既に夜のストレンジャーズが演奏中だった。慌てて上着をロッカーに押し込み、フロアに駆け込んだ。フロアは案外空いていて、真ん中よりやや前の位置まで楽に進めてしまった。サミー前田さんがブログでこぼしていたように、チケットの売れ行きはあまり良くなかったようだ。私などにはこの面子で即日完売しないことが不思議でならないが。
 それはともかく夜スト。こんなに明るいステージで彼らを見るのは初めてだ。「おやすみ恋人よ」の途中から5〜6曲聴けた。「最終バス」を聴くのはこれで4回目だったけれど、またしても泣かされた。何てスゴイ曲なんだ。ミウラさんも途中で感極まっているように見えたのは何故だろう。「Young & Hippie」も既にセットリストの重要な位置を占める曲になっているようだ。こんなに強力な未発表曲を持っているバンドはそういるものではない。ラストは「トラブルボーイズ」。夜ストが目当ての観客は少数派だったようだが、それでも全体のウケは良かった。
 続いて登場したのは、てっきりトリだとばかり思っていた遠藤賢司&カレーライス。まずエンケンがひとりで現れ、アコギを掻き毟りながら「夜汽車のブルース」を絶唱。エンディング曲でもここまで激しくないだろうと思うような凄まじいテンションに、観客は呆気にとられる。弾き語りなどという生やさしいものではない。ギター公開処刑とでも言うか。これで還暦を過ぎた爺さんなのだから恐れ入る。
 バックバンドのカレーライスが加わってからは、エンケンのテンションが益々エスカレート。グレッチで轟音ノイズを撒き散らしながら叫ぶ叫ぶ叫ぶ。カレーライスのメンバーはギターとベースがフラワーカンパニーズの竹安堅一とグレートマエカワで、ドラムが元くるり森信行と、いずれも二回り近く若い顔ぶれなのだが、エンケンのパワーに押されてしまっている。後半は「不滅の男」「東京ワッショイ」といった伝家の宝刀でこれでもかと観客をねじ伏せ、エンケンはステージを後に。演奏時間は1時間ほどで、この日の出演者では最も長かったにも関わらず、アンコールを求める拍手が鳴り止まなかった。それに応えたエンケンとカレーライスのメンバーは、猫のポーズで「ニャー」とカーテンコール。この人の衰えなさは一体何なのだ。狂ってる。エンケン、最高。
 次がTHE 5.6.7.8's。改めて物凄いラインナップだなあ。最近はライヴをあまり活発には行っていないようで、3年ぶりぐらいに見た。ベースのオモさんはまた辞めてしまったのだろうか。ベースとオルガンのサポートを入れての編成だった。
 ゴロッパのライヴは楽しいに決まっているので、期待も大きかったのだが、ロニーさんのギターの調子が悪く、チューニングに苦しめられていたため集中力を欠き、遂には演奏が中断する始末。いつものエレガントなパフォーマンスには程遠い残念な出来だった。4月に夜ストと2マンのライヴがあるそうなので、それにリベンジを期待しよう。
 続いて騒音寺。この人たちを見るのも3年ぶりぐらいのはず。しかしいつの間にこんな人気バンドに成長したのだ?MCが「次は京都から来た…」とバンド名を告げただけで場の空気が変わった。
 ヴォーカルNABEは確かに華やかさがある。ルーズに見えて実は計算が行き届いているステージ運びなど、ストーンズにも通じる。しかし肝心の音楽性が好みでないので、私は心を揺さぶられない。本人達が言うほどロックンロールには聴こえないのだな。ソウルとかブルースとかの要素が希薄なのが原因と思われる。見せることには大変なこだわりがあるバンドなのでライヴはそれなりに楽しめるが、CDで聴いたりはこれからもしないだろう。
 そしてThe ピーズ。既にイベントは佳境に入っていながら、この時点でもフロアの後ろ半分はかなりスカスカ。面子は豪華すぎるぐらい豪華だ。しかもチケット代は前売り3000円の出血大サービス価格。これで何が足らないというのか。出演者は狂ってるが、世の中はもっと狂っている。
 それはともかくピーズである。ここ数年は赤羽ブリローでしか見てなかったので、こちらが本業であることを忘れかけていた。余興の赤羽ブリローでも楽しめるのだから、本業が面白くないはずがない。アビさんのストラトは饒舌で聴かせる。「肉のうた」「とどめをハデにくれ」「シニタイヤツハシネ」などの懐かしいナンバーには、10数年の歳月を一気に無かったことにしてしまう力があった。やっぱり良いバンドだなあ。復活後のピーズはまともに聴いたことがなく、これを機会に聴いてみようという気になった。
 トリを飾ったのはフラワーカンパニーズエンケンもピーズも差し置いての重責を担うだけの安定感が今のフラカンにはある。とは言っても私はそれほど詳しくないけれど。実は彼らのライヴを初めて見たのが去年の10月なのだ(笑)。MAMORU & The DAViES企画のイベントでだった。もちろんその時点で多少の予備知識はあったが、フラカンはこちらの予想を気持ち良く裏切ってくれる素敵なバンドだった。おっそろしく演奏が上手いし、肯定的な意味でメジャー感があった。実際久々のメジャーレーベル復帰アルバムを完成させた直後のライヴでもあった。
 その記憶が残っていたので当然期待するものがあり、見事に応えてくれるので安心して見ていられた。鈴木圭介のヴォーカルはちゃんと歌詞が聞き取れるので、偉い。ライヴ・バンドとしての力量も見事で、短い時間の中できっちり観客を楽しませていた。唯一残念だったのは、10月に見た時とセットリストがほとんど同じだったこと。音楽的な引き出しを豊富に持っていると思われるので、違うタイプの曲も聴いてみたかった。まあこれは贅沢な注文で、またの機会を楽しみにしよう。

【深夜の部へ続く…】