THE DIG No.55発売中

k_turner2009-01-03



 シンコーミュージックからTHE DIGの55号が発売されました。メインの特集は「1969」。ロック史において特に激動の1年だった69年の出来事を、40年後の現在から検証するというもの。私も目を通しましたが、読み応えのある特集でした。それにしてもたった1年の間に実に多くの傑作が生み出されたのだなあと、感嘆することしきり。
 私はそれには全く関与しておらず、恒例の年間ベスト・セレクションに寄稿させてもらいました。既に姉妹誌のROCKS OFFにて邦楽限定の2008年間ベストも選出しており、年間ベストライターとして大活躍しております。今年もこの調子で頑張っていきたい所存です。昔は菅原洋一とかフランク永井とか、年に一度紅白でしか見かけない歌手というのが存在しました。私もそのポジションを狙っています。
 THE DIGのベストは洋邦問わずで、新録部門と再発・発掘部門を分けての選出。因みに私のセレクションは下の通り。

■1)2008年リリース“新録アルバム・ベスト10”

1.MAMORU & THE DAViES / ヒコーキもしくは青春時代(MAGIC TONE)
2.Jenny Lewis / Acid Tongue (Rough Trade / ワーナー)
3.AC/DC / Black Ice (Columbia / ソニー)
4.Al Green / Lay It Down (Blue Note / EMI)
5.夜のストレンジャーズ / トラブルボーイズ (MOVE ON OUT)
6.Jack McManus / Either Side Of Midnight (Polydor)
7.Eli ”Paperboy”Reed & The True Loves / Roll With You (Q Division / P-Vine)
8.Alejandro Escovedo / Real Animal (Back Porch)
9.Ray LaMontagne / Gossip In The Grain (RCA)
10.Elvis Costello & The Imposters / Momofuku (Lost Highway / ユニバーサル)

■2)2008年リリース“再発/発掘音源収録アルバム・ベスト10”

1.The Kinks / Picture Book (Sanctuary / ユニバーサル)
2.The Pogues / Just Look Them Straight In The Eye And Say Pogue Mahone!! (Rhino)
3.The Move / Anthology 1966-1972 (Salvo)
4.Roy Orbison / The Soul Of Rock And Roll (Sony BMG / ソニー)
5.Otis Redding / Live! In London And Paris (Stax / ユニバーサル)
6.V.A. / Strange Pleasures Further Sounds Of The Decca Underground 1966-75 (Decca)
7.Squeeze / The Complete BBC Sessions (A&M)
8.Rocket 88 / Rocket 88 (Wounded Bird)
9.Nick Lowe / Jesus Of Cool (Yep Roc)
10.サンハウス / ハウス・ストンプ (SONRISE2000)

 2008年は総じて秀作が多く、例年ならベスト10入りしておかしくないような作品で泣く泣く選外となったものも数多くありました。それとこれは例年のことながら締め切り(12月初め)の関係で、08年中に聴けずにエントリーそのものを逃してしまった作品も。新録であればFiremanの『Electric Arguments』は十分候補作になっていたでしょう。発掘部門はNina Simoneの『To Be Free』というボックスセットを見落としていたのが不覚。これは9月に発売になっていたのに、最近まで知りませんでした。
 このニーナのボックスもそうですが、日本盤が発売されない洋楽作品が増えているのも困りものです。新録6位のジャック・マクマナス、8位のアレハンドロ・エスコヴェド、9位のレイ・ラモンターニュなど、どうして日本で紹介されないのか不思議で仕方ありません。売り上げ最優先なのは分かりますが、少なくとも文化を担った事業であるという自覚があるならば、日本発売を見送るのはどうかと。
 他の雑誌やネットでも2008年の年間ベストを取り上げた記事を数多く見ることができます。色々見て回った結果、TV on the Radio、Vampire Weekend、Fleet Foxes、MGMTThe RaconteursColdplay、Bon Iver、David Byrne & Brian Enoなんてところが評価が高いようですね。いずれも私は選んではいませんが、全体的な傾向としてはメロディーの復権と、フォーク、カントリーの要素が色濃くなっているように思います。これを保守化と見るかどうかは意見の分かれるところでしょうが、スタイルとしての革新性に限界が来ているのは間違いないでしょう。限界を感じながらも、ニヒリスティックに取り組むのではなく、おずおずとでも自分のスタイルを模索しているような作品が多いことは歓迎しています。
 ではそんなアーティストの一人である、レイ・ラモンターニュさんのアルバム『Gossip In The Grain』に収録されている、「Let It Be Me」という曲をどうぞ。これを時代錯誤と見るか、現代的と見るかは各自でご判断ください。