リリース情報:Phil Spector関連作リイシュー



 フィル・スペクターのフィレス・レコーズが今年で設立50周年だそうで、それに合わせて関連作品がSONYのLEGACYレーベルより4タイトル同時にリリースされる。
 クリスタルズ、ロネッツ、ダーレン・ラヴのそれぞれのベスト盤と、フィル・スペクターが手がけた代表曲の編集盤がそれ。スペクター関連作品の編集盤は数年前にイギリスのAceが数回に分けてリイシューを行っていたが、いずれもマニア向けの仕様だった。一方クリスタルズやロネッツのベスト盤は92年に発売された後、90年代後半にリイシューされたことはあったが、現在は廃盤。91年に出た4枚組のボックス・セット『Back To Mono』も随分前に廃盤になっている。
 フィル・スペクターと言えばウォール・オブ・サウンドであり、その代名詞とも言うべき大ヒット曲の数々の方が却って入手困難という不健全な状態が続いていたが、これで解消されるかと思うと溜飲が下がる思いだ。

 この古びなさはどうだ!この「ダ・ドゥー・ロン・ロン」とか「ビー・マイ・ベイビー」なんて曲はあまりにも有名だし、何度も聴いてよく知っているのだが、今でもふとラジオなどで流れると思わずヴォリュームを上げたくなる。50年近く前に作られた曲なのに何故こんなに心を震わせられるのだろう。文字通り不朽の名作、エヴァー・グリーンの輝きとしか言いようが無く、フィル・スペクターという人は一種の魔法使いだったのだなと思う。その人格が破綻しているとはよく言われる上に、今や獄中の身であることもご存知の通り。だからと言って残された作品に罪があるわけでなく、末永く聴かれるべき名作たちである。


DA DOO RON RON; THE VERY BEST OF THE CRYSTALS

DA DOO RON RON: THE VE

DA DOO RON RON: THE VE


1. There's No Other Like My Baby
2. Oh Yeah, Maybe Baby
3. Uptown
4. What A Nice Way To Turn 17
5. He Hit Me (It Felt Like A Kiss)
6. No One Ever Tells You
7. He's A Rebel
8. I Love You Eddie
9. Another Country - Another World
10. Please Hurt Me
11. He's Sure The Boy I Love
12. Da Doo Ron Ron
13. Heartbreaker
14. Then He Kissed Me
15. I Wonder
16. Little Boy
17. All Grown Up
18. Woman In Love (With You)

 フィレス・レコーズの第1弾グループ。ロネッツと並んでフィレス・レコーズの看板であり、ガール・グループの代表的存在。全米No.1に輝いた7を始め、クリスタルズのヒット曲を全て収録。さらにシングルB面曲や、未発表曲18も。


BE MY BABY: THE VERY BEST OF THE RONETTES
BE MY BABY: THE VERY BEST

BE MY BABY: THE VERY BEST


1. Why Don't They Let Us Fall In Love
2. Be My Baby
3. Baby, I Love You
4. (The Best Part Of) Breakin' Up
5. So Young
6. Do I Love You?
7. Walking In The Rain
8. I Wonder
9. When I Saw You
10. You Baby
11. Born To Be Together
12. Is This What I Get For Loving You?
13. Paradise
14. Here I Sit
15. I Wish I Never Saw The Sunshine
16. Everything Under The Sun
17. I Can Hear Music
18. You Came, You Saw, You Conquered

 特にオールディーズに興味が無い人でも2は知っているでしょう。日本ではクリスタルズより人気が高いかな。でも意外なことにトップ10ヒットは2だけ(Billboardで最高2位)。こちらもロネッツの全ヒット曲を網羅するとともに、フィレス閉鎖後、ロニー・スペクターが単身A&Mへ移籍後にロネッツ名義で発表した18も収録。ジョージ・ハリスンが提供した「Try Some, Buy Some」も入れてくれれば良かったのに。契約の問題があったのだろうけど。


THE SOUND OF LOVE: THE VERY BEST OF DARLENE LOVE
Sound of Love: the Very Best of Darlene Love

Sound of Love: the Very Best of Darlene Love


1. No Other Love
2. He's A Rebel
3. My Heart Beat A Little Faster
4. He's Sure The Boy I Love
5. Why Do Lovers Break Each Others Hearts?
6. (Today I Met) The Boy I'm Gonna Marry
7. Not Too Young To Get Married
8. Wait Til' My Bobby Gets Home
9. Run Run Runaway
10. A Fine, Fine Boy
11. Strange Love
12. Stumble And Fall
13. (He's A) Quiet Guy
14. Long Way To Happy
15. That's When The Tears Start
16. Good, Good Lovin'
17. Lord, If You're A Woman

 ダーレン・ラヴはブラッサムズというガール・グループのリード・シンガーだった人。1956年にブラッサムズでデビューするもグループとしては商業的成功は果たせず、主に有名シンガーのバック・コーラスを担当していた。そんな折にフィル・スペクターの目に止まり、2をレコーディング。クリスタルズ名義で発売したところNo.1ヒット。それ以降ダーレン・ラヴ及びブラッサムズは覆面シンガーとしての仕事が続くことに。
 ダーレン・ラヴの名前を表に出して発売したのは6からで、フィレスにはソロ名義で4枚のシングルを残している。有名なフィル・スペクターのクリスマス・アルバムで唯一のオリジナル曲「Christmas (Baby, Please Come Home)」を歌っているのもダーレン・ラヴ。
 ここにはフィレス時代の作品はもちろん、フィレス以前、以後の作品まで収録。

WALL OF SOUND: THE VERY BEST OF PHIL SPECTOR 1961-1966

WALL OF SOUND: THE VERY

WALL OF SOUND: THE VERY


1. He's A Rebel
2. Da Doo Ron Ron
3. Be My Baby
4. Then He Kissed Me
5. (Today I Met) The Boy I'm Gonna Marry
6. Baby, I Love You
7. He's Sure The Boy I Love
8. Zip-A-Dee-Doo-Dah
9. Wait Til' My Bobby Gets Home
10. Walking In The Rain
11. Uptown
12. Why Do Lovers Break Each Others Hearts?
13. Do I Love You?
14. A Fine, Fine Boy
15. There's No Other Like My Baby
16. You've Lost That Lovin' Feeling
17. (The Best Part Of) Breakin' Up (The Best Part Of) Breakin' Up
18. Not Too Young To Get Married
19. River Deep, Mountain High

 そしてこれがフィル・スペクター傑作選。彼が残した良い仕事の美味しい部分だけを濃縮したようなキラー・チューンだらけの1枚。フィレス・レコーズは約6年間の活動期間で40枚のシングルを発売しており、代表曲はこの1枚で概ねカヴァーできる。
 ウォール・オブ・サウンドを確立した記念的作品、ボブ・B・ソックス&ブルージーンズの8や、ブルー・アイド・ソウルの代表的デュオ、ライチャス・ブラザーズの16、フィレス後期にスペクターが売り出しに力を入れたアイク&ティナ・ターナーの19など、ヒット曲満載。
 ただしクリスタルズ、ロネッツ、ダーレン・ラヴはそれぞれのベストとダブりが多いので、今回の4タイトルでどれか1枚というならばこれだけでも良いかも。まあ、今Amazonなら各タイトル800円台(2/3現在)なので4枚まとめても大した出費にはならないけれど。実際私は4タイトルとも予約済み。92年に出たベスト盤は手放しました。今のところ日本盤のリリース情報が無いのだが、日本のソニーが発売するとしたら各1800円ぐらい?フィル・スペクター作品なら人類の共有財産として輸入盤程度の価格でいつでも購入できるようにしておいて欲しいものだ。
 では最後にフィル・スペクターのスタジオでの作業風景を収めた珍しい映像を。歌唱指導を受けているのはブラッサムズですな。『Story of Phil Spector』というドキュメンタリー番組で流れたもののよう。