PAUL COLLINS' BEATがやって来る!!!



 正式発表があったのは先週のことなので、既にご存知の方も多いだろうが、改めて。ポール・コリンズ率いるThe Beatの来日が決まった。以下、招聘元となっているロッキン・ジェリー・ビーンEROSTIKAのブログより転載。

3/4 (FRI)
AT 下北沢SHELTER
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV: 3,000 / DOOR:3,500

【BAND】
PAUL COLLINS' BEAT(U.S.)
JACKIE & THE CEDRICS
THE PLAYMATES
THE COKES

INFORMATION:
下北沢SHELTER 03-3466-7430
http://www.loft-prj.co.jp/SHELTER/

チケット取り扱い:下北沢シェルター、EROSTIKA


3/5 (SAT)
AT 下北沢GARDEN
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV: 3,000 / DOOR:3,500

【BAND】
PAUL COLLINS' BEAT (U.S.)
TWEEZERS
RAYDIOS
THREE MINUTE MOVIE

【DJ】
NAKAGAMI

INFORMATION:
下北沢ガーデン 03-3795-1069
http://www.gar-den.in/pc/index.php

チケット一般発売日: 1/20(木)

ローソンチケット: 0570-084-003 【L】73233 http://l-tike.com
e+: http://eplus.jp


3/6 (SUN)
AT 難波Mele
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV: TBA / DOOR: TBA
【BAND】
PAUL COLLINS' BEAT (U.S.)
LIQUID SCREEN
THE YAGGIES
THE WIMPYS

【DJ】
Von Sentimental(Pop'n'Roll),Kodama(time bomb),James(twist & Shout)

INFORMATION:
難波Mele 06-6634-1539
http://namba-mele.com/

予約の方には限定でファンジン、ステッカーをプレゼント(70部予定)

チケット取り扱い;イープラス、タイムボム、ナイトビートレコーズ


3/8 (TUE)
AT 新潟WOODY
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV: 2,800 / DOOR:3,300

【BAND】
PAUL COLLINS' BEAT (U.S.)
THE FADEAWAYS (TOKYO)
EL ACTIO'N (FROM EXTENSION 58)
THE MANKY

【DJ】
MARKY, CB, TAEKO, WILD OX

チケット、INFORMATION:
新潟WOODY 025-224-4525
http://www16.ocn.ne.jp/~ls-woody/

 詳細はまだ変更の可能性があるらしいのだが、日程はこれで確定。3/5の下北沢ガーデン公演のチケットは上掲の通り今月20日より一般発売開始。それ以外の公演は各ライヴハウス、または以下の連絡先まで問い合わせを。
東京公演チケット:daddyonov_radio_u@ybb.ne.jp
大阪公演チケット:info@namba-mele.com (1/18〜)
新潟公演チケット:woody@adagio.ocn.ne.jp


 パワー・ポップのファンなら失禁確実、正に夢にまで見た来日だ。この凄さが分からない可哀想な人のために解説すると、PAUL COLLINS' BEATとはパワー・ポップなる曖昧な呼称を定義づけたバンドと言っても過言ではない。
 パワー・ポップという用語が最初に使われたのは恐らく60年代。ザ・フーピート・タウンゼンドが「俺たちがやっているのはパワー・ポップだ」と発言したのが最も古いとされている。ただしこれはビートルズなど当時のポップ・グループザ・フーを差別化する意味で用いられたようで、現在使われている意味とは少し異なる。
 パワー・ポップを音楽のカテゴリーとして用いた最も有名な例は、BOMPレーベルを主宰していたグレッグ・ショウ編集によるBOMP MAGAZINEでの「パワー・ポップ特集」(1978年3月発行)がある。この中でグレッグはパワー・ポップとは何かを解説し、それに該当するバンド、楽曲を紹介している。大雑把に言うと60年代のブリティッシュ・ビートをルーツとし、ティーネイジャー向けのバブルガム・ポップスの要素を携え、制御不能な凶暴性(要するにパンク的)も併せ持った音楽をパワー・ポップと呼ぶのだとまとめている。
 この「パワー・ポップ特集」はその当時のロンドン、LA、ニューヨークでパワー・ポップと呼ぶべきバンドが同時多発的に増加していることにも触れ、LAの代表的パワー・ポップ・バンドとしてNERVESの名前も挙げられている。このNERVESこそが、ポール・コリンズが在籍したバンドである。
The Nerves / Hanging On The Telephone

 NERVESはこの曲を含む4曲入りシングルを自主制作で76年に発売。三つ揃いのスーツ姿でロックンロールを奏でるこのトリオには、グレッグ・ショウが言うところのパワー・ポップの要素が過不足なく揃っていた。しかしバンドは鳴かず飛ばずで、アルバム1枚作られることなく解散。78年にブロンディがこの曲をカヴァーし、ヒットさせた頃にはバンドは存在していなかった。
 NERVES解散後、メンバーはそれぞれソロ活動を始め、NERVESで担当していたドラムをギターに持ち替えたポール・コリンズが結成したのがTHE BEAT。このバンドで大メジャー・レーベルのCBSから79年にデビュー。1stアルバムのオープニングを飾ったのがこの曲だ。
The Beat / Rock 'n' Roll Girl

 小気味の良いビートとスピード感、キャッチーなメロディとハーモニー、これぞ理想のパワー・ポップ・ナンバー。1stアルバムは一部共作曲を含み、全曲がポール・コリンズのペンによるもの。ナーヴス時代のサウンドをさらに洗練させたパワー・ポップの名盤と呼ぶに相応しい傑作だ。
 79年にはナックが「マイ・シャローナ」の特大ヒットを放ったこともあり、柳の下のどじょうを狙ったレコード会社が同様のポップなロックンロール・バンドを次々とデビューさせたが、ほとんどのバンドは商業的な成功とは縁遠く、アルバム1枚か2枚で消えてしまっている。同種のバンドがにわかに氾濫したことで、パワー・ポップが一躍メインストリームのムーヴメントになったのかと思いきや、実はそうでもなかったのだ。
 そもそもパワー・ポップなる呼称もこの当時は定着していたとは言いがたい。79年発売のブラム・チャイコフスキーの1stアルバムに『パワーポップの仕掛け人』との邦題が付けられたぐらいなので、用語として使われていなかったわけではないだろうが、例えばTHE BEATの1st日本盤のライナーノーツ(書き手は大貫憲章さん)には「パワー・ポップ」という用語は1回も登場しない。その代わりTHE BEATの音楽を「アメリカのニュー・ウェーヴとでも呼ぶべきポップでシンプルなロックンロール」と形容している。
 パワー・ポップというカテゴリーが定着し、70年代後半から80年代初頭に活動したバンドたちが再評価されたのは90年代に入ってからのように記憶する。ライノが編纂したパンク、ニュー・ウェーヴ期のコンピレーション、DIYシリーズの「American Power Pop」編と「UK Pop」編(共に93年発売)が引き金になったこと。また同時期に活動していたマシュー・スウィート、ポウジーズ、ティーネイジ・ファンクラブなどが70〜80年代のパワー・ポップ・バンドからの影響を公言したことなどが切っ掛けとなって、再評価の機運が高まった。その頃から中古レコード屋のバーゲン・コーナーに捨て値で眠っていたレコードが高騰しだしたりもした。
 ただしパワー・ポップの呼び名は今でも様々な意味で使われているのは事実で、ウィーザー以降のオルタナ・バンドや、メロコアと呼んだ方が適切なバンドまで「パワー・ポップ」で括られると個人的には違和感を覚えたりもする。重要なのはカテゴライズではなく、その音が痛快かどうかなので、私が考えるパワー・ポップが実はパワー・ポップではないとしても特に不都合は無いのだが、人から「パワー・ポップとは?」と問われれば、私が差し出す最初の何枚かの中に必ずTHE BEATのレコードは含まれるだろう。
 恐らくこの考えに賛同してくれる人たちは日本にもたくさんいる。また同好の士によって結成された日本のバンドも多数存在し、そうしたバンドがこぞって今度のPAUL COLLINS' BEATの日本ツアーをサポートするのは、もうひとつの楽しみだ。
 90年代の日本ではティーンジェネレイトを筆頭に、パワー・ポップの初期パンク、ガレージ・パンク的側面にスポットを当てたバンドがシーンを形成しており、その中枢を担っていたメンバーで結成されたスーパー・バンド、TWEEZERSがこの日のために再結成されるのが嬉しい。TWEEZERSはティーンジェネレイトのFIFI(g. vo.)、スーパースナッズのTOMOKO(b. vo.)、サマンサズ・フェイヴァリットのKOJI(g. vo.)、同じくサマンサで元ピーズでもあるUGANDA(ds.)という布陣。ただTOMOKOさんは今身重なんだよなあ。このメンバーで演奏できるのかしら。TWEEZERSは97年に唯一のアルバムを発表した直後解散しており、その後単発的に再結成されたことはあるものの、私は一度もライヴを見たことが無かった。この対バンはBEATの来日に匹敵するほどの大事件。今回見逃したら二度と見られない可能性もあるので、3/5は必ず駆けつけねばなるまい。
 他には90〜00年代にかけて日本のパワー・ポップ・シーンの中心的存在だったTHE PLAYMATES、元ティンジェネのFINK率いるRAYDIOS、元FIRST ALARTのメンバーが中心に結成されたLIQUID SCREENなどの顔ぶれも。
 70年代後半〜80年代初頭に活動したパワー・ポップ・バンドは、90年代以降に有志の草の根的尽力によって何組か来日が実現しているが、いよいよ真打登場といったところ。ポール・コリンズはパワー・ポップ界最大のイコンであるばかりか、70年代から現在までずっと現役で音楽活動を続けてきた、この世代としては稀有な人でもある。最近のライヴでも初期のTHE BEATの曲はもちろん、NERVESの曲も演奏しているらしい。THE BEATのファースト日本盤には、ポールの直筆で「I HOPE TO SEE YOU IN JAPAN」とメッセージが寄せられている。30年以上かかってこの願いが叶えられるのかと思うと、感無量だ。3月には諸手を挙げて来日を歓迎したい。


Beat / Kids Are the Same

Beat / Kids Are the Same

 THE BEATのファーストとセカンドをカップリングしたCD。何はともあれ名曲満載のファーストは必聴。イギリスに同名のスカ・バンドがいたことから、セカンドよりPAUL COLLINS' BEATと改名。多少音に丸みが出たものの、こちらも決して悪くは無い出来。オリジナルLPに未収録のボーナス・トラックを2曲収録。
To Beat Or Not to Beat / Long Time Gone

To Beat Or Not to Beat / Long Time Gone

 こちらは3rdと4th(いずれもミニ・アルバム)をカップリングしたもの。多くのパワー・ポップ・バンドが失速していく中で、基本路線がぶれることなく、時代に迎合しないサウンドを作り続けたのは立派。シンセが大活躍したり、リバーヴたっぷりのスネアが響いたりということもない。ファーストあたりと比較すると多少地味な印象ではあるが、佳曲は多い。オリジナルLP未収トラックを3曲含む。
ALREADY!

ALREADY!

 今度の日本ツアーをサポートするため再結成を果たすTweezersの唯一作。まだ廃盤になっていなかったことは喜ばしい。後発だけあってピュアなパワー・ポップを追求することに心血が注がれており、文句なしの仕上がり。ギターのリック、リズムのフックなど随所にザ・ビートからの影響が感じられることにもニンマリ。


【1/22追記】
 EROSTIKAのブログで対バンの出演日変更が発表された
 TWEEZERSとJACKIE & THE CEDRICSの出演日が入れ代わり、
 TWEEZERS 3/5下北沢GARDEN → 3/4下北沢Shelter
 JACKIE & THE CEDRICS 3/4下北沢Shelter → 3/5下北沢GARDEN
 へとそれぞれ変更に。いずれにしろ私は4日、5日の両方へ行くつもり。