起きろよ愛人!



 オリジナルのタイトルは「Wake Up and Make Love With Me」。イアン・デューリーの傑作『New Boots and Panties!!』のオープニングを飾ったナンバーで、発売時に付けられた邦題が「起きろよ愛人!」。因みに「Sweet Gene Vincent」は「いかすぜジーン・ヴィンセント」。当時の日本盤の担当者のセンスに脱帽である。
 何故こんなことを書いているかというと、今日はデューリーさんの命日だったから。亡くなってもう9年になるのだなあ。
 うちのiTunesにはデューリーさんの全アルバムが入っているので、割りと聴く機会は多いのだが、今日改めてじっくり聴き直してみてその個性的な音楽に魅了された。ファンキーでユニークで、どうしようもなくロックンロール。つくづく稀有な才能だったのだと思う。

 「Sex & Drugs & Rock & Roll」。恐らくこの曲が一番有名かな。この猥雑なリズム!ブロックヘッズは英国の至宝だ。

 「Sweet Gene Vincent」。79年12月のカンボジア難民救済コンサート出演時の映像。同じ日に出演していたクラッシュのミック・ジョーンズがゲストで登場する。トップ10ヒットを連発していた時期でもあり、デューリーさんの絶頂期と言っていい。

 「Rough Kids」。ブロックヘッズ結成以前に活動していたキルバーン・アンド・ザ・ハイ・ローズのライヴ。こんな映像が残っていたとは今日まで知らなかった。YouTubeは偉大だ。

 「Sweet Gene Vincent」のストレイ・キャッツによるカヴァー。ジーン・ヴィンセント賛歌だけに彼らがカヴァーするのも頷けるが、これを聴くと原曲の普遍性にも気付かされる。

 こんなカヴァーもあった。ニナ・ハーゲンによる「Hit Me With Your Rhythm Stick」。アレンジはほぼオリジナル通り。ニナ・ハーゲンをしても原曲は破壊できなかったようだ。でもなかなか良い仕上がり。

 「Wake Up and Make Love With Me」。多分これが最晩年のライヴ。癌に侵されていることを公表した後だろう。登場の仕方が痛々しいものの、ステージに上がれば問答無用のイアン・デューリー節が展開されるのはさすが。残念ながら音も映像も良くない。もう少し良好な素材は残っていないのだろうか。
 盟友ブロックヘッズは新しいヴォーカリストを加えて現在も活動中。来月には新作アルバムも発売される。イギリスほどではないだろうが、日本にもイアン・デューリーのファンは少なからず存在しており、その証拠に過去のカタログが何度も再発されている。じゃがたらミュート・ビートがデューリーさんの曲をカヴァーしたことがあったし、エゴ・ラッピン森雅樹イアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズを信奉しており、バーニー・バブルズがデザインしたブロックヘッズのロゴをパクったりしている。その土壌があるのだから、これを期に来日なんて実現しないものか。