ROCKS OFF vol.6発売中

k_turner2008-12-09



 すっかり紹介するのを忘れていた。既に1ヶ月近く前に発売されているROCKS OFF vol.6で記事を少々書かせてもらっています。担当したのは「ROCKS OFF BEST SELECTION 2008」の一部。今年の年間ベストアルバム企画です。
 ご存知ない方もおられるかもしれないので解説しておくと、ROCKS OFFというのは「THE DIG JAPAN EDITION」とサブタイトルの付く姉妹誌で、60年代以降に登場した邦楽ロックを歴史的に検証し、また現在の活動まで取り上げています。THE DIGやレコードコレクターズなど、洋楽中心に同様のコンセプトを持つ雑誌はありましたが、邦楽に限定したものは既に休刊してしまったロック画報を除けば皆無と言っていいでしょう。日本のロックもこうした雑誌が作られるほどに成熟した証だと思います。身贔屓で言うわけではありませんが、この雑誌は毎回読み応えがあって、ほとんど全ページを読み耽ってしまわずにおれないという、昨今珍しい音楽雑誌です。
 レココレなどは音源主義というか、パッケージ化された録音物で全てを語ろうとするきらいがあります。それは海の向こうの音楽に対しての視点として仕方の無い面でもありますが、日本には伝わって来ないアメリカやイギリスの日常に起こる様々な事象が音楽性に影響を及ぼさないはずはなく、ことロックと呼ばれる表現において、それらを全く知らずに音楽を正確に理解することは難しいでしょう。例えばキンクスのレコードの発売時期と、その頃英国社会で何が起きていたかを調べると「ああ、そういうことだったのか」と発見することが沢山あります。社会的な背景など知らなくてもキンクスの音楽は楽しめるので、知らなければいけないとまでは言いませんが。
 同じ国に住み、同じ言語を話し、恐らく見聞きするものも大きくは違わないだろうし、食べているものや着ているものもおおよそ見当が付く邦楽アーティストの場合、どういう経路でその音が生まれたのかは想像し易いです。また海外のアーティストに比べると、直接話を聞くことも容易。にも関わらず、従来の邦楽誌には生々しさが欠けていたように思われてなりません。それは邦楽アーティストを洋楽アーティストのように隔離された存在に押し込めようとしていたからではないかと。
 ROCKS OFFで読める各ベテラン勢のインタビューは、今だからこそ話せる当時の逸話も多く、共有する知識が多い分、彼らが実際に吸っていた空気を感じることができます。年齢を重ねたことで、(本人の意思とは別に)守らねばならなかった壁が取り払われたせいもあるでしょう。彼らの立脚点が明確になることで、かつての作品がよりリアルに聴こえてくるようにも思えるし、今を生きている彼らの現在の活動にも興味が湧きます。
 一読者として支持していたROCKS OFFから、記事の依頼が来た時は嬉しかったです。初めてさせてもらった仕事が、年間ベストのセレクションというのはどうだろうとは思いましたが。計31名のライター、編集者の投票によって選ばれた2008年の邦楽の新録作品のベスト50と、発掘、再発作品のベスト50が掲載されています。集計結果は誌面でご覧いただくとして、私個人が投票した結果は以下の通り。

【1】新録作品
●ヒコーキもしくは青春時代/MAMORU & THE DAViES
●イッツ・マイ・ターン/ロマーンズ
●magic hour/キセル
●キラキラ!/曽我部恵一BAND
●I'm not fine, thank you. And you?/54-71
●トラブルボーイズ/夜のストレンジャーズ
●サマードレス/石橋英子×アチコ
●カンテ・ディアスポラソウル・フラワー・ユニオン
●ロール・オン・グッド!!/ザ・ニートビーツ
●スマイル/ボリス

【2】発掘・再発作品
●ハウス・ストンプ/サンハウス
●一番列車ブルース/サンハウス
●1987DX キャプテン・コレクション/アンジー
●腹貸し女/ジャックス
●新宿マッド/フード・ブレイン
●U.G LAND/U.G MAN
●ウェルカム・トゥ・フラワーフィールズ・ライブ・ショウ/ザ・コレクターズ
●見るまえに跳べ/岡林信康
●ナイアガラ・カレンダー 30th Anniversary Edition /大滝詠一

 編集部の意向により順位は付けていません。
 関係ないけど、誌上では私の名前が間違っています。どうやらシンコーの編集者の皆さんは、一度は私の名前を誤植せずにおられないようです。