But I'm not the only one



17歳の少年が歌う「Imagine」

 上手いなあ。上手いよ、上手いんだけどさあ。何だろう、この納得が行かない感覚は。
 ジョン・レノンのヒット曲として余りにも有名な曲である。ただ私はレノンの曲としてはそれほど好きな方ではない。「Cold Turkey」とか「Crippled Inside」の方が何倍も好きだ。バラードなら「Jealous Guy」とか「Love」などの方が真に迫るものを感じる。
 「Imagine」がそれらに比べると今ひとつ好きになれない理由は、この曲の評価が誤解の上に成り立っていると思えるからである。この曲は世界の恒久平和を声高に訴えるという程のものではないと私は考えるのだ。オノ・ヨーコの一連の作品は命令形のもの(「Breathe」とかね)が多く、そこから影響を受けて書かれたものだと思われるが、「思ってみろ」とのタイトル通り、想像力の可能性について歌われている曲というのが私の解釈。
 この少年が歌ったのは3番に当たる部分だ。私が訳すなら本来の詞はこうなる。
 「思ってみろよ、所有物なんて無いと/君にできるか分からないが/ガツガツする必要は無いし、飢えることもない/人類は皆兄弟だと/思ってみろよ、全ての人が世界を分かち合っていると」
 と、空想するだけなら夢のようなことが可能になる。ただこれでは現実とかけ離れているために「君は僕を夢想家だと言うかもしれない」とフォローが入る。夢みたいな話だと自覚があるからだ。「でも僕はひとりではない」と言える根拠はそんな気がするからであって、これも想像によるもの。そして「いつか君も同じように思ってくれたらなあ/そうすれば世界はひとつになるのに」と結ばれる。この件には希望的観測というより、諦観を読み取ってしまうのは私がひねくれているからだろうか。レノンの謙虚とも投げやりとも取れる歌い方を聴いていると、そうとしか思えないのだが。
 しかるにこの少年、David Archuleta君の自信たっぷりな歌い方はどうだろう。その主張に一点の疑いも無いとでも言いたげではないか。これを聴くと世界平和なんて5分後にも実現してしまいそうだ。そんなに簡単なことなら誰も苦労しないし、わざわざ歌にする必要も無いのに。
 平和を願わない人なんていない。多分ブッシュだって、ビン・ラディンだって、シー・シェパードの人だって、平和を望んでいる。ただお互いに相容れないから争いが起きてしまうし、起こさずにはいられない程度に人は愚かなのである。その点を踏まえた上でこの曲は書かれているのだと思う。
 ところでこのDavid Archuleta君のファースト・ネームは「アーシュレータ」と読むらしい。惜しいな。もし「アーキレータ」だったら、同姓の少年を集めて「あーきれーた・ぼーいず」が結成できたのに。