君だけが僕の味方だった 時もあった



SNOOZER:特集『ロック暗黒大陸ニッポン』
 HMVで立ち読みしたSNOOZERの最新号に『ロック暗黒大陸ニッポン』という特集記事があった。日本のロックアルバムから150タイトルを順位を付けて選んだもの。

snoozer (スヌーザー) 2007年 12月号 [雑誌]

snoozer (スヌーザー) 2007年 12月号 [雑誌]

ここに選ばれた150枚のアルバムの選択基準と順位付けに対する視点をここで事細かに説明するつもりは毛頭ない。これが我々の歴史観だ、言うべきことがあれば、それだけである。そう、これが正史だ。
もはや『風街ろまん』で始まるチャートなど見飽きてしまった。この我々の問題提起を発端にして、さらに議論が巻き起こり、欧米のようにきちんとスタンダードが確立されていけばいい。ここが最初の出発点だ。

 と、相変わらずこの雑誌らしいアジ文のようなリードからスタートする。どれどれという感じでそのランキングを眺めていて案外納得できるものだったのが、我ながら意外だった。そして1位に選ばれたアルバムを見て驚いた。多分1位が何だったのかを一発で当てられる人はいないと思う。何と、RCサクセションの『楽しい夕べに』だったのだ。このどんでん返しに軽い感動を覚えて、思わず購入。SNOOZERを買ったのは10年ぶり2度目ぐらいだなあ。ランキングを全て引用するのは面倒だし、著作権上もどうかと思うので上位20タイトルまでを転載。

1.RCサクセション / 楽しい夕べに
2.ローザ・ルクセンブルグ / ローザ・ルクセンブルグII
3.フィッシュマンズ / 空中キャンプ
4.村八分 / ライヴ
5.中村一義 / 太陽
6.ボアダムス / SUPER ARE
7.岡村靖之 / 早熟
8.ローザ・ルクセンブルグ / ぷりぷり
9.コーネリアス / ファンタズマ
10.ソウル・フラワー・ユニオン / エレクトロ・アジール・バップ
11.暗黒大陸じゃがたら / 南蛮渡来
12.フリクション / 軋轢
13.スチャダラパー / WILD FANCY ALLIANCE
14.山口冨士夫 / ひまつぶし
15.裸のラリーズ / '77 LIVE
16.佐野元春 / ヴィジターズ
17.P-MODEL / パースペクティヴ
18.RCサクセション / シングル・マン
19.ミッシェル・ガン・エレファント / ギヤ・ブルーズ
20.ザ・ブルーハーツ / ザ・ブルーハーツ

 21位以下も興味深いので、実際の記事を一読することをお勧めする。因みに『風街ろまん』は32位で、『ゆでめん』はノン・チャート。例えばこれが90年代半ば、渋谷系の後の時期に選ばれたものだったらもっと評価は高かっただろう。付け加えればシュガーベイブの『SONGS』は102位だし、フリッパーズ・ギターも『ヘッド博士』が117位に入っているのみ。
 この手のものは「どうしてこれが入ってないのか」とか「これは過大評価だ」と突っ込みたくなる部分があるのは致し方ないところで、どうしたって完璧なランクなど作ることは出来ない。音楽の評価は常に相対的なものであって、今の耳で聴いて作成されたという意味においては面白いものだと思った。佐野元春で最も高評価なのが『ヴィジターズ』というのも、ニュー・ウェイヴ・リヴァイヴァル以後の現代らしい。
 しかし1位がRCで、しかも『楽しい夕べに』とは。意外だったが、個人的には嬉しい。この頃はまだフォークの形態を取っていたし、一般的な意味でのロックンロールのカタルシスからは遠い音楽なのだが、軽いアシッド感というか、静かな狂気を孕んでいる点で今の空気にフィットしている気はする。
 RCサクセションの、というよりは忌野清志郎のこのセンスは彼の音楽経歴を通して時々顔を出すもので、今もって失われていない。わざとらしくなく、こういう感覚を表現できる人は大変貴重だと思う。例えば近年のこんな曲を聴いても、それは感じられる。
http://youtube.com/watch?v=uyJLpoXIjG0
 曲調は「夜の散歩をしないかね」によく似ているものの、「イヤシノウタ」と皮肉っぽいタイトルを付けているところとか、ご覧のようなブラックなユーモアに満ちた衣装とか、才気が漲っていると思う。こうした才能はもっと評価されるべきで、『楽しい夕べに』が日本のロック・アルバムのベストに選ばれた意義は大きい。