夜のストレンジャーズ 『SOUL ON FIRE』

SOUL ON FIRE


 そんなこんなで今日も仕事がなかなか終わらず、退社できたのが7時半ぐらい。新宿のRed Clothで夜ストのレコ発ワンマンがあったので、早めに仕事が終われば駆けつけるつもりだったのに、会場に急行する頃には8時は回ることが確実。ライヴは極力最初から見たい主義の私なので、その時点で意気消沈。それより何より、新宿までダッシュする体力はもう残っていなかった。
 仕方なく涙を飲んで帰宅。代わりに、この新作アルバムを2回聴いた。
 夜ストはもちろん好きなバンドで、私が好きなバンドと対バンすることも多いので、ライヴを見る機会は頻繁にある。ここ1年ぐらい、夜ストのライヴで聴けた曲が収録されている。半数以上の曲は聴き覚えがあり、「ギブソン」に至っては、あまりに馴染みがあるので、再レコーディングしたのかと思ったほどだ。過去のアルバムをチェックしたらこの曲はどこにも入っておらず、そこで初めて新録曲であることが分かったような次第。
 今回はゲスト・プレーヤーもおらず、3人のみで制作されており、ライヴで散々演奏していた曲ばかりということもあって、伸び伸びとした印象を受ける。曲調は今まで以上にソウル色が強まっており、タイトル曲や「この熱き愛」などはメンフィス・ソウルの臭いがプンプンと漂う。
 3人それぞれが卓抜したプレーヤーとは言えないし、音楽的に斬新なことをやっているのでもない。ただしこの3人ならではのアンサンブル、この3人だから生まれるグルーヴは確立されており、充分に個性的である。ソウル、R&B、ブルースを単に消化するに止まらず、血肉化されているというか、正に魂を吹き込んでいることが分かるから、夜ストは楽しく、美しい。日本人がそうした異国の文化を取り入れる際、教条主義的になるがあまり、オリジナルにいかに近づくかが目的化してしまうケースが起こりがちだが、夜ストの音楽にはそのような愚かな発想が感じられないのがいい。
 オリジナルには最大限の敬意を。しかしやるのは自分たちだと言わんばかりに、身の丈に合った世界を築いているのである。なかなか簡単にできることではない。人としての醜さも、しかし承服しかねるものに対してははっきり拒絶するストイックさも、つまり弱い部分も、強い部分も並列に曝け出している彼らを正視できる間は、まだ自分も大丈夫かなと思う。しかし、ワンマン・ライヴは見たかった。