風邪引き日記 その2



 まんじりともせず夜が明けてしまった午前7時ごろ、ようやく見つけた体温計で熱を測って見ると、はたして38度5分。最初は流行のノロウィルスに感染したのかとも思ったが、生牡蛎など貝類を食べた記憶は無い。ノロウィルスの場合は吐き気と下痢は激しいけれど、高熱が出ることはあまりないとも聞く。となると風邪だろうか。
 幸いにしてこの日は会社が休み。掛かりつけの大学病院が始まる9時まで待って、電話。診察の予約日ではなかったが、事情を説明し、診察してもらえることになった。ただし大病院というのはどこでもそうなのだろうが、非常にシステマチックに出来ており、急病になっても予約が入っていなければ、簡単には診察してもらえない。診察の許可が出るまで30分近く待たされたのには閉口。
 診てもらえることになったとはいえ、この体では病院まで辿り着くのも至難の業。通常電車を乗り継いで1時間程度で行けるところ、座れる電車が来るまで待っていたら1時間半ほど掛かってしまった。フラフラになりながら11時過ぎに病院到着。
 体温と血圧を測った後、診察室のすぐ隣にある簡易ベッドで横にならせてもらい、診察の順番が来るのを待つ。小1時間ほど待って主治医の診察を受ける。やはり風邪だろうとのこと。
 元より食欲は全く無く、何か口に入れてもすぐに出てしまうので、朝からは水分も摂っていなかった。医師の判断でビタミン剤の点滴を打ってもらう。看護婦さんや、1年前からお世話になっている治験担当の女性やら、かいがいしく世話を焼いてくれ、ありがたさを痛感しつつ、点滴が落ちるまでの2時間ほどやっと安眠することができた。カーテン1枚を隔てた隣の簡易ベッドでは、痴呆が始まったらしい老女とその娘が深刻な、しかし噛み合わない会話を交わしているのが聞こえてきて、どちらさんも大変なのだなと熱のある頭でぼんやり思う。
 点滴が終わってもすぐに起き上がることができず、そのままさらに30分ほど寝かせてもらう。解熱剤、下痢止め、整腸剤、抗生物質など、薬を出してもらい、帰宅。この時熱を測ったら38度7分。まだ下がってはくれていなかった。
 病院を出る時に職場に電話を掛け、事情説明。明日は出勤できないかもしれないことを伝える。そろそろ夕方のラッシュが始まりかける時間でもあり、さすがに電車で帰る気にはならなかったので、タクシーに乗る。自宅まで1万円ほど。貧乏人には痛い。