beatleg vol.78発売中

k_turner2006-12-01



 今月もbeatleg誌が発売になりました。2ヶ月前から予告されていた通り、今号から値上げされ、定価が1,260円(税込)になっています。理由は編集長自ら先月、先々月の2回に亘ってコラムで述べています。
 ブート情報をメインにした雑誌という性格上、レコード会社からの広告収入は期待できないわけで、小売店からの出稿を除けば広告は無し。つまり純粋に雑誌の売上げによって全ての費用が賄われていることを考えると、むしろ今までが安すぎたのかもしれません。そもそもが何万部も売れるような種類の雑誌でもないですし。
 音楽CDが売れなくなったと言われるようになって久しいですが、それはブート業界とて例外ではないでしょう。実際、今の西新宿は90年代前半までの活気が嘘のように寂れています。ただ非公式なプライベート音源に対する需要が無くなったかと言えば、そんなことはありません。正規リリースの音源では飽き足らないファンはいつの時代にも存在しますし、彼らの追及する対象が、ブートレガーが製造するパッケージメディアから、ネット上でのトレードへと移行しただけだと言えます。BitTorrentなどによる音源トレードが盛んに行なわれていることは、ちょっと事情に詳しい人ならご存知でしょう。昔ならエアメールでトレードリストを送って、トレードする条件に折り合いが着いたらテープにダビングして、それをまたエアメールで送って、と恐ろしく手間が掛かったことが、ネットの発達によっていとも簡単にできるようになりました。その分間口が広がったことは間違いないでしょう。
 金銭の授受が行なわれなくなったということは、間にブートレガーが介在しないため、むしろ今の方が健全だとすら言えます。それでもアーティストの著作権は侵害しているのですが、非公式音源にまで手を出す人は、公式音源などとっくに購入済ですから、アーティストにとっては得意客でもあるわけです。むしろ80年代後半以降の各種ボックスセットや、アーカイヴ的な発掘音源の正規リリースのラッシュは、非公式音源(ボツ音源と言ってもいい)が商品となることが証明された結果以外の何物でもありません。ロック界にはそのお陰で生き永らえた人が少なからず存在します。
 beatlegはブート音源に関する情報を中心とした定期刊行物としては、世界的にも貴重な存在であり、ある文化を担っているとさえ言っていいでしょう。質的にはまだ改善の余地があると私でも思いますし、音楽雑誌全体が低迷する中での値上げは一種の賭けとも判断できますが、無くなって欲しくない雑誌ではあります。
 さて、今月の巻頭特集はビートルズの「忘れられないアウトテイク」。他に現在来日中のエリック・クラプトンの日本ツアー速報として、11/11〜15に行なわれた大阪での4公演分の詳細レポートなど。
 私はプライベート盤のレビューを2点ほど書いています。