Video killed the rational floor

k_turner2006-07-09



 1週間ほど前だったか、Totちゃんから電話があり、掃除をしていたらもう見ないビデオ(VHS)が出てきたけど要らないかと聞かれた。内容を尋ねると「ポール・マッカートニーのライヴとか…」と言うので、てっきり2〜3本なのかと思い引き取る旨を伝えたまでは良かった。「今度会った時にでも渡してもらえば…」と言いかけたら、「いや、沢山あるから今度送る」と言われ電話は切れた。
 そして今日、件のビデオが届きましたよ。140サイズぐらいのダンボール箱で2箱。数にして100本近いビデオが。ただでさえレコード、CD、本など嵩と重量のある物で占拠され、床がきしんでいる我が家にとっては、ちょっとしたテロである。嬉しくって涙が出そうだ。
 マッカ卿のビデオは確かにあった。他にもエルヴィス・コステロとかジョージ・ハリスンとかウィルコ・ジョンソン、ポーグスの市販されていないビデオも入っていた。嬉しいけど、大体持ってんだよね。他には映画も多く、「ワンダとダイヤと優しい奴ら」「ブラッド・シンプル」あたりはまだ分かる。アル・パチーノロバート・デニーロ作品もウェルカムだ。しかしチャップリンの短編集とかムーミン(アニメのです。念のため)とかサンダーバードとか、何でこんなの持ってるんだよと言いたくなるものも。こうなったら全部見てやるからな。今世紀中には必ず。


 beatlegという雑誌でレヴューを担当していると、それまで存在自体を知らなかった映像や音源に接することがある。今日レヴュー用に見たのは、「ROCK POP」という70年代後半にドイツで放送されていたテレビ番組の総集編。その当時のトップ・ミュージシャン達がレコードの音に合わせてスタジオで口パクで演奏する当て振りをするものだが、今となっては貴重な映像の数々だ。
 マンフレッド・マンズ・アース・バンドの動いている姿なんて初めて見た。他にはデビュー当時のポリスとか、やはりデビュー直後のヴァン・ヘイレンとか。亡くなる直前のボン・スコットが拝めるAC/DCの映像には思わず身を乗り出した。リップ・シンクなのにメーターが振り切れているアンガス・ヤングに感動。この人は今も全く変わらない。一方今となっては人前でのパフォーマンスは期待できそうにない、若きケイト・ブッシュのセクシーなパントマイムにはドキドキしてしまったし、これまたデビューしたばかりのパット・ベネターは初々しく、可愛かった。『Live at Budokan』の音に合わせて「I want you to want me」を演奏するチープ・トリックには爆笑。やはり彼らはこのレコードでスターの仲間入りを果たしたのだね。
 フォリナー、ジャーニー、スティクスなどダイナソー・ロックというか、産業ロック系のバンドも多く、これらは音楽性にしろファッションセンスにしろ、今では目も当てられない。しかし演奏中にメンバー同士が眼を合わせてニカッと笑ったり、ギターソロを弾きながら目を閉じて陶酔の表情を浮かべたりといった習慣はいつ頃無くなったのだろう。この時代のミュージシャンにはそれがまだ残っているのである。ジャンル的にはバラバラの収録内容だったが、ある時代の一部は確かに刻まれていて、歴史的資料としては大変面白かった。