You took my life and then I knew that very soon you leave me

k_turner2006-02-14



ビル・ワイマン主宰の“A.I.M.S.”コンサート、DVD化
 “A.I.M.S.”とは "Ambitious, Ideas, Motivation, Success"の略で、ビル・ワイマンが発起人となって英国全土の若いバンドにレコーディングとレコード契約の機会を与えようという、いかにも半隠居の老人が思いつきやすいおせっかいなプロジェクトのこと。当時ストーンズは活動休止中だったため、有閑セレブのビル・ワイマンストーンズ所有のモービル・スタジオを巡回させ、イギリス各地のアマチュア・バンドに無料で貸し出し、1年ほどかけて若手の才能発掘に乗り出したのだった。
 選考の結果残った5バンドのショウ・ケース・ライヴと、それを記念したビル・ワイマンの呼び掛けで集まったロン・ウッド、テレンス・トレント・ダービー、フィル・コリンズ、エディ・グラント、イアン・デューリー、レイ・クーパー、ケニー・ジョーンズらによるオールスター・バンドのライヴが一度に楽しめるイベントが、1988年2月20日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開かれた。このコンサートはビル・ワイマンが関わっていた小児病院のためのチャリティー目的も兼ねていた。
 老人の御加護に与ろうなどという下心のある連中から大した才能が見つかるはずもなく、このプロジェクトは成果らしい成果を残すことなく終わってしまったが、この時のオールスター・バンドの演奏が映像作品として残された。この当時のストーンズは全員がソロ活動に従事していたため「このまま解散するのでは」との憶測すらあり、ストーンズのメンバー2人が一堂に会しただけでもちょっとしたニュースになった。
 個人的に注目すべきポイントは、まずオールスター・バンドでイアン・デューリーがリード・ヴォーカルを取っていること。「Tallahassee Lassie」「Lucille」「Johnny B Good」の3曲を歌っており、正規に発売されたイアン・デューリーのライヴ映像というだけで貴重である。
 もうひとつはオールスター・バンドの前座としてエルヴィス・コステロとクリッシー・ハインドのアコースティック・デュオも見ることが出来ること。元々はクリッシー・ハインドがソロの弾き語りで出演する要請が来ていたところ、弾き語りなどやったことがなかったクリッシーがエルヴィスに助けを求めた結果、誕生したデュオである。当初コンサートの開催が発表された時には二人はそれぞれソロでの出演が予定されていたらしい。CDJournalの記事によると1曲目に「There's A Place」が収録されるとある。以前発売されたことのあるビデオにはこれは収録されていなかったので、これは大変嬉しい。なお2、3曲目の「Windows Of The World」「Days」ともカヴァー(前者はバカラック、後者はキンクス)であり、この日はカヴァーばかり3曲を演奏している。この選曲もエルヴィスのアイディアらしい。既にクリッシー・ハインドはレイ・デイヴィスと破局を迎えていたはずだが、あえてキンクス・ナンバーを選んだエルヴィスは勇気があるなあ。この時のいきさつについてクリッシーが語るインタビューがここにある。この共演だけでなく、エルヴィスとクリッシーがそれぞれの出会いなどを語っており、面白い。
 クリッシーは声域が狭く、エルヴィスとのハモリも上手くいっているとは思えないのだが、何にせよこの組み合わせのライヴはこの時だけ。ちょうどエルヴィスは『Spike』のためのデモを作っていた頃で、「Satellite」での共演はこれが切っ掛けだったことは間違いなかろう。