Hard Candy vol.7@新宿Marble

Hard Candyフライヤー



 エルヴィス・コステロの来日が延期になったお陰で最初から見ることができた。Hard Candyの第7回。前回Marbleへ来たのも去年のこの企画ではなかったかな?


 IMPOSTERSと書いてインパスターズと読む。エルヴィスの来日が実現していれば、トップバッターである彼らを見ることができなかったであろうと考えると、因縁めいたものを感じる。彼らのライヴを見るのは去年の秋に続いて2回目。
 インスト中心の無国籍ファンク路線に変化は無し。リズムの整合性よりも破壊衝動を優先させるパンクな姿勢と、エキゾチックな猥雑さがユニークで好きなバンドだ。爆音で演奏するのも好感度高し。ただこの日は朝から自宅でずっとミーターズを聴いていて、その複雑に絡み合うリズムに身悶えした後だったので、どうしてもシンプルなインパスターズでは食い足らなさを感じてしまう。コンセプトが違うのだから、彼らに複合的に重なるシンコペーションを求めるのは筋違いであることも分かっているのだが、「トロンボーンとギターが同じパターンでどうする!」とか思ってしまうのだ。彼らが悪いのではない、ミーターズが凄すぎるのだ。

 それと、こういう音楽で演奏が30分程度で終わってしまうのは明らかに短いと思う。早くビッグになって2時間ぐらいのワンマン・ライヴが出来るようになることを願う。今mF247では彼らの曲が3曲無料ダウンロードできるので、これが起爆剤にでもなれば…。
 写真はこれだけ。1番手なのでタバコのけむりによる空気汚染が少ないため、ピントは合わせやすかったが、ステージに6人(途中からゲストのサックスが入って7人)もいるバンドは撮影が難しいね。

  • LUCKY AND THE RADICALS

 RADICALSにZIPPERS(名前しか知らない)のヴォーカル、LUCKYが加わった新ユニット。この日が2回目のライヴだったらしい。一体何をやるのだろうと思っていたら、ヴォーカルLUCKYはフロアから水を噴出しながら登場。わめきながらステージに上がり、演奏がスタート。ストゥージズタイプのコード展開の少ないロックンロールを叩きつけるように鳴らし、LUCKYはアジりながら絶叫。RADICALSの力也は完全にリズム・ギターに徹している。

 演奏が始まった当初こそ面白がって見ていたが、1曲目が終わる頃には飽きてしまった。う〜む、RADICALSは非常に演奏が上手いバンドで、音だけでも充分聴かせられる力量があると思っていただけにもったいない気がする。2曲目から半裸になったりそれなりに頑張っているものの、LUCKYのパフォーマンスにはどこか卑屈さと照れがあり、見せることを優先するには厳しいものを感じた。やはりちぇるしぃの馬場ぐらいのカリスマ性とふてぶてしさが無いと。パンク路線に転じたのかと思いきや、中にはファンク調の曲があったり、ブルース・ロックがあったり、音のコンセプトも煮詰め切れていない印象。

 RADICALS自体は活動を止めたわけではないようだが、今後はこのユニットでの活動を平行していくようだ。結論を出すにはまだ早すぎるだろうが、もう少し違う展開を期待したい。

  • NYLON


 そして我らがNYLONである。今月もハイウェイバスをぶっ飛ばして上京してくれたのだ。先月は割りとオーソドックスな選曲だったので、今日はどうなるのだろうと思っていたところ、1曲目からいきなり新曲!(多分)初めて聴く曲で、オールディーズ調のミディアム・テンポの曲だった。この曲を含め、前半はNYLONとしてはテンポの遅い曲が多く、珍しく和やかに進行した。フロントの3人は何故か笑顔を振りまいており、路線を変更したのかと一瞬心配になったほどだ。新曲は既に相当数出来ているようだが、オールディーズ・ポップス風の曲が何曲かある。バンドも続けていれば変化が起きるのは当然であって、それ自体は否定しない。むしろいろんなタイプの曲に挑戦して、バンドの音に幅を持たせるのは好ましい。ただこの傾向の曲が多くなるのにはいくらか違和感があるのは事実だ。「Ride on R&R」などのキャッチーなビート・ナンバーの新曲が待ち望まれる。

 前半に緩めの曲を並べたのは意図的な演出だったのか、後半はいつもの攻撃的なナンバーを連発。やはりNYLONはそうでないと!シマノはマイクに噛り付いたと思ったら、ステージに叩きつけ、テレキャスターを抱えたままフロアに突っ込む。シマノ神輿も何度か拝むことができた。

 客のニーズは身勝手なもので、このくらい暴れ回ってくれないとNYLONのライヴを見た気がしない。最終的には見ていただけなのに汗だくなのだから、満足だ。

 終演後マサオ君に聞いたら、新曲はかなり溜まっているけどレコーディングの予定はまだ具体的には無いとのことで、残念。目標は年内にレコーディングという感じらしい。次の都内でのライヴは今月26日の新高円寺Club Linerにて。今月は2回もNYLONが見られるというだけで舞い上がる私である。


 この時点でステージ前に陣取っていた私の耳はかなりダメージを受けており、人の声がヘリウムガスを吸ったようにしか聞こえなくなっていた。音量は大したこと無いと思っていたが、気付いたら突発性難聴だ。頼むよMarble。

 ということでこの辺から音に対する判断が真っ当にはできていないと不安を覚えつつ、続ける。片山ブレイカーズも京都のバンドで、ライヴは2〜3年ぐらい前に見たような気がするが、よく覚えていない。

 こう言っては悪いが、怒髪天とか騒音寺を彷彿とさせる和風のロックで、音そのものには目新しさは感じない。前述のバンドよりは多少ガレージ色が強いかなという程度だ。ただ演奏は上手いし、場数を踏んでいるだけあって、ステージングなど盛り上げ方の達者なところには風格すら感じられる。この日の出演者の中ではステージ前の女子比率が極端に高いバンドでもあって、経験上こういうバンドは内容が伴っていなかったりするのだが、彼らは貴重な例外と言える。私は充分楽しめた。

 この日の濃い面子の中でトリを飾るだけあって、さすがの貫禄あるライヴだった。夜ストも別に目新しいことは何もしない。ブルージーなロックンロールに乗せて日常の機微を歌う、お馴染みのライヴだ。トリオ編成だしミディアムの曲も多いので、特にこの日のようなバンドが続いた後だとどうしても地味な印象が強いのだが、退屈しないで聴けるのは集中力を持続させるだけの力があるからに他ならない。

 ライヴは好きだが、家でアルバムまでは聴かないというバンドは実は少なくない。夜ストはライヴも良いし、自宅でCDプレイヤーに乗る機会も多い稀有なバンドだ。お陰で耳に馴染んだ曲は、ライヴでもつい口ずさんでしまう。キャッチーな曲が多いということだ。ブルース、R&B(りずむあんどぶるーす)を消化した上でのオリジナルな味付けを行っているところも、評価が上がる理由だ。実際夜ストを聴いた後で、ブルースのレコードが聴きたくなったりするし。
 この日は「出来立ての曲をやります」と言って、先月のUFO CLUBとは違う新曲を(歌詞を書いた紙を見ながら)演奏。最後はアンコールがかかって、「何やる?」とか言いながらアップ・テンポなナンバーを2曲立て続けに演奏した。いちいち夜ストらしいのである。

 写真が少ないのはご容赦願いたい。この人たちはあまり動かない上に衣装も変わらないので、毎度同じような写真になってしまうのだ。おまけにこの日は立ち位置の関係でヨーホー氏が撮影できず。まあ、また撮影する機会はあるでしょう。