あなたが人を裏切るなら僕は誰かを殺してしまったさ

k_turner2005-11-19



 昨夜テレビを付けたらサンボマスターの山口が暑苦しい顔で「全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ 」を歌っていた。「ニュース23」への出演だったようで、演奏するサンボの後ろで筑紫哲也がニヤニヤしながら見ているという、映像的に大変面白い代物だった。
 この曲は初めて聴いたのだが、相変わらず難しいコードを使っているし、曲の構成も複雑。痛快だったのがアドリブで歌詞をどんどん変えてしまっているらしく、テロップで出ている歌詞とまるで違ったこと。そのためテロップを出すタイミングが段々グダグダになっていき、後半はついに出すのを諦めてしまったようだ。しかも山口が延々エンディングを引っ張るので、曲が終わる前に番組が終わってしまった。ワハハハ。ざまあ見ろ、テレビ局。


レコードのような溝付きのCD-R(ネタ元:トーイチャンネット)
 レーベル面にはちゃんと溝が入っているそうな。これ日本でも買えないかと思って調べたら、三菱化学から同じようなCD-Rが発売されていた(→ココ)。
 音楽用CD-Rということで私的録音補償金が上乗せされているので、ちょっと高め。レーベルデザインは三菱の方がちょっと劣るな。レーベル部分がブランクになっていて、自分でデザイン出来るようになっていたらもっと良かった。レインボー・キャピトルとか、コロンビアの360サウンドとか、模したデザインで遊びたい。レコード・コレクターたるもの、レーベルのデザインにも大変なこだわりがあるものだ。例えばココとか。


「洋楽で育ったぼくらの話」
洋楽で育ったぼくらの話 (エイ文庫)
 読了。音楽評論家の鈴木カツがホスト役となり、10人の洋楽フリークと洋楽にまつわる四方山話を繰り広げた対談集。洋楽不況と言われる現状に危機感を抱き、その状況を打破すべく「洋楽への熱きメッセージを語ってもらおう」と企画されたものらしい。その対談相手として登場するのは、萩原健太木滑良久なぎら健壱南佳孝、宮治ひろみ、鈴木惣一郎、沢野ひとし、山内雄善、本秀康、ダグラス・アルソップ。
 予想通り、大半はお年寄りの茶飲み話である。昔はああだった、こうだったということが延々語られているだけだ。「若い人にもっと知って欲しい、聴いて欲しい」という発言は山ほど出てくるが、いつの時代も若者は年寄りの話にそう簡単に耳を傾けないものだ。ましてや自分の経験を元にただ想い出を語るだけで、現代の若者に何をどう訴求しようというのか。
 現状を打破しようという意気込みがあるにも関わらず、ホストを含め多くの登場人物がその現状を正しく認識しているとは思えないのはいかがなものか。その中で唯一興味深く読めたのは鈴木惣一郎のページだ。
 音楽を本当に好きな人は雑食であるはずで、間口を狭めてジャンルで追いかけていると見落とすものが沢山あるという切り口から、iPodの可能性、ノンパッケージ化がもたらす音楽の変化、現代ジャズ・シーンの活況ぶりなどが語られる。
 現状認識と展望がしっかり語られているし、論拠も明確なので、この部分は楽しく読めた。この本に登場する対談相手としては若い方(と言っても40代半ば)である鈴木惣一郎だからこそ成立したのだろう。
 それ以外はトリビア的な知識を仕入れる役割ぐらいは果たしているかもしれない。それらを読んだ田舎者としては、50〜70年代のロック、ポップスの黄金時代に東京に住んでいた彼らに対する僻みが無いと言ったらウソになる。やっぱり東京で生まれないとダメだね。
 私が初めて東京のレコード屋に足を踏み入れたのは87年のことだが、新宿や渋谷のレコード店の品揃えを見て愕然とした記憶が今でも生々しく蘇る。地方では絶対に在庫していないレコードが嫌というほど見つかるのだから。私がスミスのレコードを初めて見たのはその時で、スミスって普通に店頭で買えるんだと驚いたのだった。スミスは86年に解散しているというのに。東京と地方とではそれほどまでに文化的に格差があった。
 米軍基地とは縁の無い地方に生まれたので、FENも聴いたことがなかったし、そもそも輸入盤が買えるレコード店なんて近くに存在していなかった。都市部を除けば、輸入盤などというものが一般に流通するようになったのは、外資系のメガストアが支店を増やした90年代以降である。90年代の中ごろ、西日本の某県で一番大きなCDショップで働いていた私は、輸入盤を購入した客から「歌詞カードが付いてないから不良品だ」というクレームを頻繁に受けたし、日本盤と比べて「同じアルバムなのにどうして値段が違うのか」という質問にも何百回も答えた。
 それを考えると「洋楽で育ったぼくらの話」に登場する方々は日本の中でもかなり特殊な経験をされた方々ということになる。その特殊な経験を一般化して、現状を打破しようという考え自体に無理があるのではないか。今やAmazonを通じてどんな地方に住んでいても輸入盤は容易に買えるし、商品化されていない音源だってネットを通じてどんどん入ってくる。昔のように洋楽ポップスが歌謡曲と並んでヒットチャートに入るということは無いかもしれないが、洋楽リスナーそのものの裾野は広がっていると考える方が自然だ。