STUPID BABIES GO MAD "BURN UP THE WORLD" release party@下北沢Shelter



 静岡のハード・コア・ロックンロール・バンド、STUPID BABIES GO MADのレコ発企画で、出演は順にBAREBONES、TEXACO LEATHERMAN日本脳炎、そしてSBGM。久しぶりのシェルターで、しかもこの濃い〜い面子ということで気合を入れて挑んだ。

  • BAREBONES


 3人それぞれが高度な演奏力を持ち、文字通り火花を散らすようなアンサンブルを聴かせるヘヴィ・ロック・バンド。重たくて、速くて、さらにドライヴ感ある曲展開は、何度見ても興奮させられる。

 ライヴは久しぶりだったようだが、この日の演奏も手堅く、オープニングにはもったいないくらいの貫禄のステージだった。ただしばらく活動には目立ったものが無く、アルバムのリリースがあるとか、ツアーを行なうなどの話題も聞かない。12月にはルースターズのトリビュートでアベフトシを加えた4人編成でのライヴをやるそうだ。こういう切っ掛けから何らかの展開が生まれると嬉しいが。

 伝説のBACK FROM THE GRAVE時代から活動する超ベテラン。ノイジーで狂った変態ガレージ・サウンドはこの日も絶好調。

 彼らの場合個性溢れるメンバーのキャラクターも売りで、バカバカしいというか、クレイジーというか、サーカスのようで楽しい。何故タワーレコードのタオルなのか、何故下着姿なのか、何故TOTOのTシャツなのか、そうした疑問にいちいち答えを期待してはいけない。

 モッコス股間をいじりながら意味不明の絶叫を繰り返し、日本刀を振り回す。王様も奇怪なステージングでノイズを撒き散らす。いつものテキサコのステージだ。バンド活動はあくまで趣味と言い切る彼らの根性は筋金入りだ。何しろ20年近く活動しながらアルバムは3年前に1枚出した切りで、このような狂乱のライヴを延々続けている。セカンドアルバムはきっと2025年頃発売されるのではないか。「混乱」が墓碑銘となるに相応しいバンドは彼らを置いていない。いや、死んでも墓から出てきて乱痴気騒ぎを続けているかも。彼らを見る度に、東京のガレージ・シーンの層の厚さを実感する。カッコイイぜ。

 元々はハード・コアのバンドをやっていたメンバーが集まってプロジェクト的に始めたバンドだが、最近はこちらが本業になっているみたい。ライヴもリリースも活発で、去年見た時よりも観客の反応が圧倒的に違う。演奏が始まった途端、フロア全体がモッシュ状態で、写真を撮るのも一苦労だった。

 ルーズで退廃的な出で立ち、ハード・コアを経由したスピード感たっぷりのサウンド、そしてキャッチーなメロディーの融合は先祖返り的ではあったが、現代のニーズにも上手く嵌ったようで、とにかく観客の盛り上がりが凄まじい。

 客がガンガン歌うわけですよ。私も『狂い咲きサタデーナイト』は去年の一時期毎日のように聴いていたので、自然に覚えてしまっていて、思わず歌詞が口を突いて出てくるのだけれど、歌っていると写真が撮れないので、我慢しながらシャッターを切った。しかしこれが実にストレスの溜まる要因なのだ。客が歌いたくなる気持ちは痛いほど分かった。

 メンバーも客が歌いやすいように煽りながらの演奏で、そのステージングは堂に入ったものだった。この辺も去年より進歩が見られ、本数をこなしているだけのことはあるなと思わせた。MCではトリのSBGMに華を持たせるような発言もあって、結構いい人たちなのだなと。

  • STUPID BABIES GO MAD

 そしてこの日のメイン。このSBGMは初めて見た。それどころか実は当日まで何の予備知識も無く、全く未知のバンドだった。

 ハード・コアやファスト・コアのスタイルを取りながら、曲調はロックンロールの要素を感じさせる。例えるならバッド・ブレインズがダムドの曲を演奏している、或いはメルト・バナナがモーターヘッドと共演しているとでも言えば良いか。様式が目的化しているようなバンドは個人的には何の面白味も感じないが、根本にロックンロールの柔軟さが感じられる点に好感が持てた。

 さらにステージ上での見栄えの良さも好印象。長身のヴォーカリストはどことなくジョーイ・ラモーンを思わせる風貌で、単純にカッコイイ。演奏が盛り上がってくると、ヴォーカリストは何度もフロアにダイブを決めるので、ステージ前にいた私はその度に頭を蹴られたのだが、ロックンロールの世界では無礼講なので許す。
 演奏の上手さと曲にいくつものアイディアが盛られていたことから、きっとレコーディング作品も面白いはずだと勘が働いたので、終演後アルバムも購入。思いがけず良いバンドに巡り会えた。