Rickie Lee Jones / Duchess Of Coolsville : An Anthology

Duchess of Coolsville: An Anthology (Dig) (Mcup)


 リッキー・リー・ジョーンズの初めてのコンピレーション・アルバムは3枚組のアンソロジー。タイトルを強引に訳すと「真珠夫人」みたいな意味か。今は昼メロのイメージが強いのであまり良い訳ではないが、原題はこの人の気高い音楽性を良く言い表していると思う。
 全3枚の内、DISC1と2にはデビュー作『Rickie Lee Jones』から、03年の傑作『The Evening Of My Best Day』までの各アルバムからのベスト・トラックが収録されている。ユニークなのが、曲の並びが発表順ではなく、タイトルのアルファべット順になっていることだ。20年以上に及ぶキャリアの中からのピック・アップともなれば、その変遷を意識して通常は時系列に並べたくなるもの。しかし彼女の場合は、半ばふざけたような曲順で聴いても違和感が無いどころか、あらかじめこうなるべく作られていたのではないかと思えるほど、流れが自然だ。つまりデビューから一貫して音楽性にブレが無いのである。
 ジャズとフォークを絶妙の割合でブレンドさせたメロディーと、シンフォニックに響く広がりあるサウンド、そこに時に繊細で、時にダイナミックに、情感溢れるヴォーカルが融合して、リッキー・リー・ジョーンズの音楽が形成される。星の数ほどいるシンガーソングライターの中でも、彼女ほどオリジナリティを強く感じさせる音楽を作っている人もいない。私が初めて聴いたのは18か19の時で、以来ずっとファンなのだが、この人(とトム・ウェイツ)の音楽に出会っていなければ、ジャズの面白さは理解できなかったかもしれない。
 DISC3はオリジナル・アルバム未収録曲や、ライヴ、デモ・トラックなどのレア曲集。『Party Of Five』という映画のサントラ盤に提供されていた「Sunshine Superman」のカヴァーは初めて聴いたが、これが実に素晴らしい。サイケ時代ならではのあの有名なリフをキーボードや古びたフィドルの音で再現し、あの声で気だるく歌われると、完全に彼女のオリジナルになる。リッキー・リーはカヴァーのアルバムを2枚も出しているほどで、選曲やアレンジのセンスにも定評がある。オリジナルだけでなくカヴァーも得意である点は個人的に魅かれる要素でもある。
 これだけ堪能できて、アマゾンなら今2,791円で買えるのも嬉しい。我が家では一昨日からヘヴィ・ローテーション中だ。