60〜70年代ロック復権!ムックが次々発売

このところ、ビートルズやクイーンなど60−70年代のロック最盛期のバンドに焦点を当てた雑誌が続々と発刊され、複数のアーティストの曲を集めたコンピアルバムも人気だ。今年は、ロックのルーツとされるビル・ヘイリーの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」リリースから50年の節目。なぜ今ロックが、これほど熱いのか…。
 昨年10月、同時期に来日したイーグルスを中心に、中高年に人気のロックバンドを特集した雑誌「大人のロック!」(日経BP出版センター、)が出た。特別号の予定が、予想以上の人気で、今月1日に第2号が出て、6月には第3号発行も決まった。
 2月25日には、クイーンやレッド・ツェッペリンを特集した「アエラ・イン・ロック」(朝日新聞社)が臨時増刊としては異例の10万冊に迫る売れ行き。また、今月1日には、30巻シリーズの「Rock In Golden Age」(講談社)も創刊号でビートルズを特集してスタート。
 CDでも、黄金期のロック、ロックンロールアーティストの作品を集めたコンピアルバム「ロックヒッツ」、「グッデイズ〜ロックンロール50」(ともにユニバーサル)がリリース。「コンピは3万枚売れればヒットだが、それぞれ10万枚、8万枚と大ヒット」(制作担当者)という具合だ。
 こうした現象について関係者は、「90年代のロック低迷期が過ぎ、4年前くらいに車のCMでエリック・クラプトンの曲が起用されてきたころから再び脚光を浴びている」(大人のロック担当者)。「昨年のビートルズとクイーンのアルバムのヒットが再ブームに火をつけた」(Rock In−担当者)と分析。
 また、アエラ・イン・ロックの編集者は、「中高年は若い人に比べ、マニアが多い。コレクター心をくすぐる記念雑誌を待ち望んでいた」と企画のねらいを話す。
 昨年、英国ではクイーンの再来と言われるNY出身5人組ロックバンド「シザー・シスターズ」のデビューアルバムが200万枚と同年の最大セールスを記録。本家クイーンやエリック・クラプトンが参加するクリームも再結成されるなど、ロックの人気再燃は世界的現象なのだ。

 こういう記事を読むとロックって本当に終わったんだなあと寂しい気持ちになる。多分私の考え方の方が古いのだろうが、ロックとはうるさくって、反社会的で、良識ある大人なら毛嫌いする音楽でなければならないのだ。そうでないものはロックと呼んではいけないとすら、未だに考えている。
 世代的に60〜70年代のロックをリアルタイムで聴いていたということはないものの、10代を過ごした80年代にはビートルズツェッペリンもクイーンも空気のように朝から晩まで聴いていた。近所から苦情が出るほどの大音量で鳴らすので、親から叱られるのもしばしばだった。それは親へのあて付けの意味もあってそうしていた。ロックは反発心、反抗心を表現するのに相応しい音楽だったのだ。
 それが今では親子でクイーンを聴いていたりするらしい。自分の過去を振り返っても、高校生ぐらいの時に親といっしょに音楽を聴くなんて考えただけでゾッとするが、むしろ今の40〜50代のロック・リアルタイマー世代にとっては息子や娘が「ビートルズが聴きたい」なんて言い出したら目尻を下げて喜んじゃうんだろうな。うちの親はロックなんてものは全く解さない人種で良かった。今では両親に感謝したい気持ちでいっぱいだ(笑)。
 だいたいこどももこどもだ。10代の頃に親と仲良くするんじゃねーよ。今のガキが皆そうではないのだろうけど、親の理解を超えたキレやすい今時のこどもたちはどんな音楽を聴いているのだろう。オレンジレンジとかかな(笑)。
 「アエラ・イン・ロック」は10万部も売れたのか。私は店頭で少し読んだだけだが、かつてロッキンオンを読んでいた40代向けだと思っていたら、この数字を見る限りそれ以上の範囲で支持されたことになる。一体誰が買ったのだろう。この記事にあるように「コレクター心をくすぐる」ような内容にはとても見えなかったけどなあ。目新しい発見や批評軸なんて皆無だったし。あれでくすぐられるようなレベルでコレクターとかマニアとか呼ぶのは片腹痛いわい。コレクター心の持ち主ならbeatlegとかTHE DIGとか読まんかい。
 「Rock In Golden Age」に至っては歴史の教科書だもん。ロックをお勉強しましょうねというノリ。ロックってのはなあ、人に教えてもらうもんじゃないんだよ。シェケナベイベエー。ベスト盤やコンピレーションでルー・リードニール・ヤングを聴いて分かったような気持ちになってもらっては困るんだよ。
 これではただの愚痴か。少し分析的な物言いをすると、ジョン・レノンは「ロックもだんだんジャズみたいになってきた」と1970年の時点で発言していて、確かにそうなった。評価の固まった権威的な存在にのみ注目が集まっているし、この記事にあるようなオヤジ向けムックや雑誌はそうした存在しか取り上げない。10代のころそれらを浴びるように聴いていたのは、それを知らなかったからで、それが必要だったからだ。今となってはもうビートルズもゼップもあまり聴く機会はない。それよりは「見たこともないようなマイクロフォンの握り方で、聴いたこともないような歌い方をする」音楽を日々探していて、それなりに成果はあるから満足している。