日本脳炎 / 狂い咲きサタデーナイト

k_turner2005-01-05



 元々は東京のハードコア・シーンで知られたバンドのメンバー達が集まって結成。音楽にのめり込む切っ掛けとなった70〜80年代の日本のロックを、自らの手で蘇生させることをコンセプトとしてスタートしたプロジェクトだったが、好評につきリリースしてしまったファースト・アルバムがこれ。
 ロックと言えば不良の音楽であり、歯の浮くような台詞や、現実感の無いシチュエーションが平気で歌われたあの時代。それは現在の成熟した日本のロックが時代と共に忘れてしまった美意識とも解釈できる。日本脳炎は、あの時代特有の様式美を極めてまじめに、そして粗雑に、現代に蘇らせることに成功している。
 ハードコアの血筋を感じさせるパンクなビート感こそ古のロックとは異質だが、歌謡曲ばりにキャッチーなメロディーや、例えば「少しはオイラの気持ちも考えておくれ」と炸裂する字余り気味のシャウトは、往年の日本のロックを知る者には郷愁と気恥ずかしさが呼び覚まされる。ヴォーカルの歌い方は初期の氷室狂介風であり、ジャケットは表が横浜銀蝿、裏と中がルースターズのパロディになっているという凝りよう。音楽的には異なるものの、オマージュとパクリの境界線上で成立しているという点で、日本のロックパイルと言える。元ネタが分かればニヤリとさせられるし、分からなくても充分に新鮮さは感じられるだろう。山口冨士夫のカヴァー「からかわないで」(秀逸)を除いて全曲がオリジナルだが、初めて聴いた時からどこかで聴いたことがあるような錯覚を覚える。無論これは褒め言葉である。
 実はこのアルバム、2月に発売される「THE DIG YEAR BOOK(仮題)」に掲載の2004年ベストアルバムに入れようかと思っていたのだが、惜しくもギリギリのところで選外になってしまったのでここで取り上げた。