Graham Parker / Your Country

Your Country
日本に住んでいるとその実感が全く湧かないのだが、こうして毎年コンスタントに新作がリリースできるということは、それなりに人気と評価が確立されているのだろう。パブ・ロック界を代表するシンガーソングライターの最新作。
順調な活動を続けていると言っても、ヒットチャートとは無縁の状態になって久しく、本作もマイペースで、実にこの人らしい内容。アコースティックギターを中心にしたコンボをバックに歌われる曲の数々は、陳腐な表現だが、時々届く彼からの便りのよう。淡々とした中にも辛らつさやユーモアは込められており、派手さは無いものの創作活動が充実していることはよく分かる。あー、元気でやってんだなとファンなら安心して楽しむことが出来る。言い換えれば、新たなファン獲得への訴求力には乏しいことになるが、今さら本人もそれを望んではいるとは思えない。これでいいのだ。
グレイトフル・デッドのカヴァー1曲を除いて、全て自作曲で、プロデュースも(エンジニアのジョン・ウッドと)本人が手がけている。ゲストヴォーカルにルシンダ・ウィリアムスが参加し、1曲デュエットしているのは、本作における数少ない華やかな話題だ。古くからのファンにとって嬉しいのは、ロックパイルが取り上げていた「Crawling From The Wreckage」がリメイクされていること。カントリー調の穏やかなヴァージョンだが、これが味わい深くて良い。