◆ボクが考えたプロ野球復興策
よく野球は筋書きの無いドラマだなんてぇことを申しますが、本当に実力のある選手はアメリカへ渡ってしまう昨今、類まれなる運動能力のぶつかり合いをプロ野球に期待するのはナンセンスです。こうなったら完全に筋書き通りに試合が展開するショウアップされた野球で観客を虜にしましょう。エンターテイメントに徹したエ・リーグを設立するのです。分かりやすい出し物としてクリーンなイメージの正義の球団と、ダーティーな悪役球団を対決させます。悪役球団は様々な反則技を繰り出し、卑怯な手口で正義球団の選手を陥れようとします。飛ばないボールを仕込む、タッチするふりをして隠し持っていた栓抜きで殴るなど。また悪役球団には謎の覆面選手がいたり、打席に入る時には雷鳴が鳴り響きヘヴィメタル調のテーマ曲が流れるなど、とにかく悪のイメージを訴えます。基本的には勧善懲悪ものなので、そうした悪役球団の謀略にめげず、正義球団は最終的に正攻法で打ち勝ち、観客の期待に応えます。正義は勝たねばなりませんが、現在のプロ野球は勝って欲しい球団がファンの期待を裏切りグダグダな試合を垂れ流しています。これではいけません。観客にカタルシスを与えるために、ドラマチックなシナリオが必要なのです。
また往年の名選手のプロト選手が活躍するノスタルジック・リーグ、通称ノ・リーグも設立しましょう。王、長嶋はもちろんのこと、球史に残る往年の名選手たちを現役の選手が演じるのです。目玉は当時のスコアブックを元に名勝負を忠実に再現するコピー試合です。「天覧試合」、「稲尾の4連投」、「江夏の21球」など、よく知られる場面が目の前で再現されることで、プロ野球の黄金時代を知る40〜60代の需要を再喚起します。試合前には「本日の試合は昭和○年○月○日、甲子園球場での巨人×阪神○回戦をお送りします。先発は巨人金田、阪神村山、ただし終演時間の関係でリリーフ宮田は7時50分ごろの登板になります」などと書かれたプログラムが配られます。ラーメン博物館がさきがけとなって、今や全国各地に昭和時代の風景を再現したテーマパークが開かれています。同じ物をプロ野球でも作りましょう。ジャイアンツ栄光のV9などは9試合パックのツアーを組めば大きな話題になるでしょう。毎試合ごとに川上監督の胴上げを見なければならないのは興ざめかもしれませんが、往時を知るファン、または伝説としてしか知らないファンには夢のような経験になることでしょう。またスタルヒンが投げ、松井秀喜が打つといった「ありえないオールスターゲーム」の企画も良いでしょう。
コピーと言ってもある程度のリアリティーは求められるので、単なるそっくりさんでは役不足です。また決められたカウントから決められた球種をホームランにしなければならなかったりするのですから、高度な技術が求められます。こうした試合を披露することで「さすがプロ」という従来見られなかった角度からの評価を得る可能性があります。ディティールにこだわることでマニアックなファンの掘り起こしもでき、毎試合巡業先に着いて回るノ・リーグ・ヘッズも現れるかもしれません。彼らには入場料を少し上乗せしたテーパー席を開放し、試合の録画を認めましょう。録画素材のトレードがネット上で横行し、「20XX年7月11日鳥取市民球場で行われた長嶋引退試合mpeg動画」がWinnyで流れて話題になったりします。
エ・リーグにしろ、ノ・リーグにしろ、地方巡業中心に興行を打ちます。東京ドームに5万人を集めて、テレビ中継は視聴率が20%を越えるなんて時代は終わりました。これからは地方の市民グラウンドに3000人を集める規模で存続を図りましょう。年に1回程度、おらが町にプロ野球が来るとなれば足を運ぶ人は少なくないはずです。しかもプロ野球の黄金時代を知る人は団塊世代を中心にしたベビーブーマーがほとんどです。層が厚い上、子育ても終わり余暇時間、可処分所得にもある程度余裕があります。年金はあまり期待できないとはいえ、Jリーグ世代に比べればまだましです。この世代をターゲットにしない手はありません。ベンチャーズが今尚毎年全国ツアーを行える理由を考えてみてください。ナベツネさん、すぐ実行しましょう。