UA@渋谷公会堂



アルバム『SUN』の全国ツアーも後半戦に入り、東京公演は先月に続き3回目。前2回の感想はここここにあるので、できることなら一度読み返していただきたい。何故なら今日のライヴは印象がぜ〜んぜん違ったのだ。
先月観た2回の公演は、簡素なバックを従えたUAが丁寧に歌い上げ…という感想を抱かせるもので、今日の今日まで今回のツアーの趣旨はそこにあるものだとばかり思っていた。ところが今日のライヴでは、UAの歌い方がフェイクをこれでもかと言うほど多用したものに変わっており、歌唱としての正確さを多少犠牲にしてでもファンキーで官能的なヴォーカルを聴かせる内容だった。加えてシンガーとそのバックバンドという位置づけであったはずの各メンバーとの距離が、今日はぐっと縮まっていたのも驚いた。演奏がよりワイルドになり、ビートが強調されたためにUAの歌をかき消してしまいそうな瞬間すらあった。インプロのパートがやや増えた上に演奏全体に躍動感が漲っており、各メンバーがソロを取る間もUAスキャットでコラボレートしたりして、バンドとのスリリングな一体感が伝わってきた。先月はまだツアーも序盤だったので、緊張していたのだろうか。UAの表情は今日の方が圧倒的に穏やかで、足取りも軽やかにステージ上をピョンピョンと飛び跳ねていたのだ。ツアースケジュールを見てもらうとお分かりのように、先月の渋公2公演の後、1ヶ月余りのうちに6回の公演を消化している。この間にUAとバンドにとって劇的な変化があったとしか思えない。
それにしても驚いた。「ライヴは生もの」なんて使い古されたフレーズしか出てこないボキャブラリーの無さが恨めしいが、1曲差し替えられた以外はセットリストも同じだったのに、こんなにイメージが変わるなんて。ため息をつきながらけだるく歌われた「ミルクティー」なんて座席から滑り落ちそうになった。先月の歌い方が10代の可憐な少女によるものだったとしたら、今日は疲れ気味の30女のそれぐらい違っていた。今日みたいに「♪迷わないで 抱きしめてえ」なんて歌われたら過ちのひとつも犯してしまいそうだ。「ベランダの ミルクティー」はきっとブランデー入りなんだろうな。ところで今日のUAの衣装は黄色のドレスで、露出度高め、背中は丸見えだった。セクシーというよりエロ、猥褻を感じさせるものだったことを付け加えておこう。
先月の落ち着いて聴かせるスクエアなステージの魅力も捨てがたく、ファンとしてはどちらも甲乙付けがたい。もう一度あのスタイルに戻ることはもはや不可能であって、そういう意味では複数回観ておいて良かったと思う。

6月30日 UA@渋谷公会堂

01. そんな空には踊る馬

02. 忘我

03. 情熱

04. ドア

05. 世界

06. ファティマとセミ

07. ブエノスアイレス

08. スカートの砂

09. ミルクティー

10. TORO

11. ロマンス

12. 踊る鳥と金の雨

13. LIGHTNING

(アンコール)

14. UA UA RAI RAI

15. 太陽ぬ落てぃまぐれ節

16. 雲がちぎれるとき

※先月4曲目だった「閃光」が消え、代わりに「ドア」が歌われた。「ブエノスアイレス」の時の背景スライドも一部変えられていたように思う。