大型連働(連休にあらず)終了記念



GWはいかがでしたでしょうか。私はほとんど外出することも無く、家で原稿三昧の日々でした。でもまだ終わったわけではありません。来週末までに終わらせなければならない量の3分の1ぐらいがやっと終わったという感じ。
ということで連休中予定していた数少ないライヴだった、3日に恵比寿であった「Down Beat Ruler」と4日にロフトプラスワンであった「著作権法改正でCDの輸入が規制される?実態を知るためのシンポジウム」は泣く泣くお見送り。1日は24時間しかないのだから仕方がない。
「Down Beat Ruler」の方はともかく、シンポジウムはありがたいことに音声ファイルが公開されているので今日聞いてみた。またシンポジウムのメモもまとめられているので、手っ取り早く内容を知りたい向きはそちらもどうぞ。全体としてはさすがに既知の部分が多かったという印象は拭えなかったものの、新たに知った事実、およびこのページではまだ触れていなかった部分を中心に私の感想を含めて以下へ。
RIAA(全米レコード協会)のパブリックコメントの存在
ここを読んでなおかつ私の掲示板もつぶさに読んでいるような意識の高いナイスバディな方なら、今回の著作権法改正案を提出する前の昨年12月、文化庁意見募集を行ったのを覚えておいでであろう。その際RIAA文化庁に送った公式コメントが明るみに出たのである。これについては既にThe Trembling of a Leafさんのページなどで取り沙汰されていたことでもあるので、繰り返しになってしまうが、要するにRIAA(当然5大メジャーも加盟している)は日本で輸入権が創設されることは大歓迎であるばかりか、平行輸入などもっての外であり、日本人アーティストに限った還流防止なんて甘っちょろいこと言ってないでガンガン規制しろと公式に言ってきていたのだ。その原文はここ。原文は非常に長く、かつ英語としても平易なものではないので、要旨を抜粋した上で翻訳した簡易版も掲載しておく。
これが意味するところは何かというと、先日の参議院での委員会にて行われた参考人質疑での日本レコード協会依田会長が述べていた「輸入盤の販売をやめるようなことはしないと5大メジャーから確認を取っている」というのはあくまで直輸入盤を指すのであって、並行輸入は規制すべきだと業界の総意があるということだ。輸入盤の中でも価格競争というものは存在していて、同じタイトルでもタワレコHMVレコファン、アマゾン、それぞれが違う値段で販売している。シンポジウムの中でも指摘があったが、レコファンやアマゾンは大抵その他の販売店に比べて安い値段で販売しているが、それができるのはメーカー卸しとは別の安いルートで仕入れているからである。しかしそうした存在があるから輸入盤は一般的に国内盤より安い価格で推移する競争が起きている。これがもし並行輸入がストップして直輸入(キャピトル盤なら東芝EMIの卸し部門からし仕入れられないとか)でしか日本には入ってこないとなると、その先はもうお分かりですね。価格の完全コントロールが可能であるため輸入盤を安い価格で売る必要はなく、日本国内においては国内盤と同等か、下手するとそれより高い価格で売られることが考えられるのだ。
そう言われてみれば日本レコード協会が公開した確認書理事会議事録も、全て「直輸入」に限定して「日本での販売禁止を行う意思はない」ことになっている。並行輸入さえ止められれば輸入盤と言えども高価格で販売できるのだから、争点となるのは最初からそこだけだったのだ。
さらに問題なのは、こうしたパブリックコメントが出ていることを文化庁が公にしていなかったことである。シンポジウムで川内議員がコメントしていた内容によれば、文化庁の担当者は故意に隠して法案説明を行っていたということである。
◆次世代CCCD、次世代MP3の展開
シンポジウム中パネラーではないレコーディングエンジニアの方からあった発言で明らかになったことで、次世代のCCCDにはDVDのリージョンコードのようなものが埋め込まれることになっており、エンジニアの現場ではその対応ができるよう研究が進められている。またMP3も次世代企画で配布した元をたどれるようになる。ウィンドウズの次世代ヴァージョンもそれに対応しているという話。私は違法コピー自体は取り締まるべきだと考えているから、こうした規格が出てくることは特に反対しない。ただし特にCCCDの場合は再生保証がされていない上、音質が低レベルであることに激しい憤りを感じている。確認の意味で質問をした人がいた通り、現行ハードメーカーはCCCDを再生保証するプレイヤーは開発していない。CCCDなんてものを導入するならまずそっちの問題を片付けてからにしてもらいたい。
話は問題とズレるが、この点に関連してピーターバラカン氏が「ブートレッグは海賊盤ではない」と言っていたのは全く同意。正規盤をコピーしたパイレート盤はどんどん取り締まってもらって結構だが、隠密音源を収録したブートレッグは正規盤を全て聴いてそれでも満足できない者なら聴く自由がある。それが知る権利なのだ。実はこうしている間も私のパソコンはブート音源のダウンロードとアップロードを続けている。ファイル交換によって落としているのは専らその手のものである。正規に販売されている音源は落としたことはない。


上記のように新たに分かったこと、考える切っ掛けになったことはいくつかあり、やっぱりできれば参加したかったというのが本音。音声だけではその場の状況が把握できずニュアンスが伝わらない部分もあるだろうし。テレビなど各種メディアも取材に来ていたようなので、この問題が広く取り上げられることを期待したい。
残念だった点も無いわけではなく、ピーターバラカン氏、高橋健太郎氏から報告されていた通り、レコード協会、レコード会社、販売小売店の立場の出席者も呼び掛けはしたものの、結局皆無だったのはシンポジウムの趣旨を考えると消化不良の印象は否めない。結果として反対の立場の人ばかりのシンポジウムになってしまい、「知るための」という目的が全て達成できたとは言い難い。賛成派、推進派が壇上に登らなかったのは出て来れない事情があるからではないかと勘ぐりたくなるのは当然で、いくつかの疑惑を含めて明快な説明が出来るなら衆議院の決議の前に公の場に出てきてもらいたいものだ。
因みに以前タワーレコードに問い合わせた際の回答は以下に引用しておく。これは先月12日に問い合わせたメールに対し、13日に受け取ったものである。別に何度掲載しようが問題はないはずだ。

棚橋 憲治 様

平素、格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。

 さて、お問合せ頂きました輸入権に件についてはその成立の可否
含め、未だその詳細が不確定でありますので、コメントできる状況
にないと存じます。また、この件に関しましては、日本レコード協会
等にお問い合わせいただいた方が適切かと存じます。

今後ともご愛顧賜りますようお願い申し上げます。

タワーレコード株式会社
カスタマーサポート
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◇追記
シンポジウムの画像入りレポートを発見。こちらの方が雰囲気などは伝わりやすいです。あそこに350人も入れたのか〜。