今日参議院での文教科学委員会が開かれるという話は以前にも書いた通り。帰宅して審議中継のビデオライブラリのページを開くと、収録時間が4時間半もあった。『ベン・ハー』より長い…。さすがにこの長さでは全編のチェックはできないので、とりあえず阿南一成(自民)、中島章夫(民主)、鈴木寛(民主)による質問部分をざっと視聴。やはり自民党代議士だけあって、阿南の質問は予定調和に終始して面白くない。質問側もそれに答える文化庁副大臣文化庁担当者らも予定稿を読み上げているだけだ。一方民主党両議員からは、あくまでそれに比べればだが、多少歯ごたえのある質問があった。特に鈴木寛は質問時間のほとんどを輸入権創設に関する部分に絞っており、質問中も「今議論が沸騰している」などの発言があり、音楽リスナーが法案通過後の事態を危惧していることを意識している様子が伺えて好印象。今回の著作権法改正案の113条5項の該当する範囲に関しても、しつこく食い下がっていた。特に「情を知つて」という曖昧な条文の意味する範囲として、文化庁須川(?)次長より欧米からの輸入盤に対する輸入権行使ができる要件として、日本での販売を禁止する旨の表示があることが実質的な要件であるとの言質を取ったことは評価して良いだろう。またひとつの提案に過ぎないとはいえ、輸入を禁止できるタイトルをレコード会社がリストアップして税関に周知し、リストにあるタイトルだけ輸入の差し止めをさせるという方法を挙げたことは、国内レコード会社が権利の範囲が不透明なままなし崩し的に行使することを抑止させる上での具体策になり得るという点で意義あるものだと思った。鈴木寛が欧米からの輸入盤まで規制されることを懸念し、先週の委員会での依田参考人の証言には不信感を抱いたままである、或いは抱いたままだと国民に印象を与えようとしていることは伝わってきた。須川(?)次長の後ろに座っていた若手は、恐らく法案作成に関与した文化庁担当者だと思うが、鈴木寛の質問中何度も慌てた様子が伺えてこれを見ているのが面白かった。
ただし鈴木寛が追求した点はあくまで欧米レコード会社が権利行使をせず、日本に対して従来通り輸入盤を卸すというコンセンサスが得られていることが前提である。その点は相変わらず業界内での意識合わせに過ぎないもので、現時点では「そのようなことはないはずだ」と繰り返し答弁があったが、法案通過後180度方針が変更される可能性は充分あるのである。また変更した方が所謂ファイブ・メジャーにとっては旨みのあることは今更繰り返すまでもない。アジアからの還流防止を目的と見せかけながら、商業的な効果はより大きい輸入盤の全面販売禁止が可能な法律が成立しようとしていることには変わりが無いのだ。
中継を最後まで見届けた訳ではないので、私は実際に見てはいないが、2ちゃんねるの実況スレッドによれば全会一致で採決されたようだ。案の定という感じではあるが。明日以降参議院本会議で採択されて、5月には衆議院に送られるだろう。
以前にも書いたことがあるが、今回の改正法案に関してはすっかりお膳立ては整っているので、可決成立はほぼ間違いない。来年1月からは施行されるだろう。最悪の事態を迎えないようにするには、世論を盛り上げることだ。前回、今回の委員会を見ても分かるように、ネット上で活発な議論を行ったり、関係団体、関係議員などにメールやFAXで意見を送ったりすることは、全くの無駄とは言えないのだ。逆に言えば今何も言わないでいればまさしく日本レコード協会文化庁の思う壺。こんな悪法が通ったとしても、消費者が監視の目を光らせていればある程度の抑止効果はあると思う。あー、何だかブルー・ハーツの「爆弾が落っこちる時」が聴きたくなってきたな。