ネタが無いので今日聴いたCDの感想。
佐野元春『ヴィジターズ』(20thアニヴァーサリー・エディション)
ちゃんとスピーカーと向き合って聴こうと思っていたら、購入から半月も経ってしまった。20年前に先端を行っていたアルバムだけに、今聴くのはどうかなと少々不安を抱きながらCDプレイヤーにセット。ところが1曲目の「コンプリケイション・シェイクダウン」が流れてきた瞬間に「買ってよかったー」と思った。リマスターの効果は絶大で、音像のきらびやかさはとても20年前の作品とは思えない。シンセや録音機材のスペック不足から来る80年代特有の安っぽいけばけばしさはほとんど感じられず、あの当時佐野元春がニューヨークで吸収したものは何であったのか、その風化しないコアな部分がしっかり伝わってくる。
個人的にはいろいろ思い出すことも多く、1回目はあっという間に聴き終えてしまったので続けざまにもう1回聴いてしまった。こんな聴き方をするのは珍しい。思えば20年前、当時NHK-FMで佐野が放送していた「サウンドストリート」で「新曲です」と言って流した「トゥナイト」にはずい分驚いたものだ。それはうれしい驚きではなく「こんな風になっちゃったの??」という失望に近い感覚だった。「トゥナイト」はそれ以前の3枚のアルバムの路線を比較的継承した曲調ではあったが、それでも当時の感覚としてはとんでもなく変わってしまった印象があった。その後『ヴィジターズ』が発売されて佐野が約1年間ニューヨークに移り住んで得た成果の全貌が明らかになった時には、彼が完全に別の世界に行ってしまったことを認めなければならず、しばらくは困惑するばかりだった。ただしそれは当時田舎に住んでいた高校生の感覚からすれば無理もないことだった。ヒップホップが徐々にオーヴァーグラウンドなカルチャーとして脚光を浴びるようになって、またはジェイムズ・チャンスやキッド・クレオールなどニューヨークを根城としたファンクを知るようになって、ようやく『ヴィジターズ』で描かれた音楽の正体を理解できるようになったのだ。私がこのアルバムを「良い」と感じるようになるまで多分1年近くはかかったのではないか。もちろん当時こんなことをやってのけた日本人は佐野だけだった。
15〜6年ぶりに聴いて思ったのは同時期のプリンス、アルバムで言うと『1999』までのプリンスとの類似性だ。あの当時この二人が目指していたのはかなり近い場所だったのだと思う。ただ『ヴィジターズ』がリマスターされた今、比較するとプリンスの方が圧倒的に古臭い。ワーナー時代の音源のリマスターって実現しないのかな。


◆V.A.『WORK YOUR SOUL』
昨年トロージャンが発売したコンピレーションで、”JAMAICAN 60'S & NORTHERN 1966-74”とサブタイトルが付けられている通り、ジャマイカン・アーティストがスカ、ロックステディーから離れて取り組んだソウル・ナンバーを集めたアルバム。ジミー・クリフやデズモンド・デッカーといった大御所の名前もあり、「こんなこともやってたんだ」とへぇ度の高い内容である。アメリカのソウル・ミュージックがジャマイカンに与えた影響の大きさも透けて見えてきて面白い。目隠しプレイで聴かされたらこれがジャマイカ産とは思えない曲もたくさんある。幻のノーザン・コンプと言われたら信じるなあ。


今日のハマリもの
偶然見つけたオセロゲーム。思わず1時間ほどつぶしてしまった。それでもbaby以外にはまだ勝てないのが悲しい。