昼から練馬へ。今年最初のライヴは立川一門会である。出演は志の吉、アンジャッシュ談春、中入り後文志、大トリが家元談志。アンジャッシュが出るとは知らなかったので、儲けた気分。開演は2時だったが、3時頃に高座に上がった中トリの談春が開口一番「みなさまとは長いお付き合いになりそうです」と挨拶。この時点で家元はまだ会場に到着しておらず、家で寝ていたらしい。何でも開演時間は7時ごろだと思っていたのだとか。その家元は4時過ぎに登場。しわがれた声で「寝てたら起こされたんだよ」ときた。反省の色など全く無いのは流石。最初の方は声のトーンも低く、やつれた印象さえ残した家元だったが、喋っているうちにだんだん調子を取り戻しいつもの毒舌が冴え渡る。
ヤワラちゃんなぁ、あんなのもらう奴がいるんだな。野球選手ってのはバカなのかね。あいつらカネ、カネ、カネ、って金のことばっかり考えてるからあんな風になっちまうんだな。天皇の家だって心配することねぇよ。あんなのだってもらう奴がいるんだから」
これだけの話でいったい何人の敵をつくるんだ(笑)。
いつも通りブラックなジョークを散りばめつつの長いマクラの後、「面白い噺と珍しい噺とどっちがいい?」と客に尋ねてから始めたこの日の演目は「羽団扇」。初夢を見たの見ないのと言い争う夫婦の仲裁に天狗が現れる。天狗の山にさらわれた旦那は、天狗の羽団扇を奪って逃げ出し、その先で七福神の乗った宝船に拾われる。七福神の宴会に合流してすっかりいい気分になったところで起こされ、今までの話は夢だったと気付くというストーリー。正月らしい内容だが、トリで演るには少々軽めの噺。先月調布での独演会で聞いた「紺屋高尾」は身を乗り出して聞き入り、クライマックスでは思わず涙してしまい、改めて談志の芸の凄さを実感したばかりだ。そういう濃厚な噺はもちろん良いが、たまにはこういう軽い噺も良い。珍しい噺というだけで満足。
落語会は5時半ごろに終わり、池袋へ出て散髪。レコ屋を軽くチェックしてから新宿で飯。それから大江戸線に乗って六本木へ。大江戸線に乗るのも久しぶりだ。六本木くんだりへ足を運んだ理由は、DJイベントの打合せのため。
数年前、日本で唯一である(ロサンジェルスの)Xのファンサイトを作っていたmieさんと組んでパンク系のDJイベントを何度か開いたことがあった。その後懇意にしていただいていたお店の方針が変わったり、その他諸々の事情があってこの3年ほどはそうしたイベントを開く機会に恵まれなかったのだが、最近また「イベントやりたいねえ」と話すことがあり、適当な店を探していたのだ。mieさんが見つけてきてくれたのは六本木ヒルズの裏手、テレ朝通り沿いで麻布税務署の対面にある「HEAVEN」というお店。店のマスターはmieさんの高校時代の先輩だそうで、この日はここでmieさんがクラス会を開いていて、9時にお開きになるから9時過ぎに店に来るように言われていた。さすがにクラス会の邪魔をするのは悪いと思ったので、少し遅めに9時半ごろ到着したら、まだ宴はたけなわであった(笑)。
店内はL字型に細長いちょっと変わったつくりで、座席は20程度。テーブルなどを片付ければ最大で30人は入りそう。想定しているイベントの規模からすれば大きすぎず小さすぎずで、手ごろなサイズだと思う。ロック・バーを謳っているのでDJブースもある。ただこの店は70年代のハード・ロックプログレがメインのバーであり、当然常連客はそれらを好む人たちが中心なのでそこがネックかと思われた。
クラス会の延長で盛り上がっているmieさんをよそに、マスターと店の専属DJで機材の管理もしているシンちゃんとそのあたりについて話す。基本的に店側としてはどんな内容のイベントでもウェルカムのようだ。過去にはトランス系のイベントを開いたこともあるらしい。ただし当然のことながら集客に役立たないと開く意味がないので、マスターが提示した条件はチャージが1ドリンク付きで2,000円、動員のボーダーが20人ということだった。条件としては妥当なところか。店の立地や傾向を考えるとフリーの客は見込めないので、こちらで20人以上の客をかき集めねばならない。
「たかが20人…」と言うなかれ。素人のDJイベントにそれだけの人数が集まるほど世の中は甘くないのである。以前企画したイベントはmieさんのサイトに出入りする人たちを中心としたもので、半ばオフ会に近いものだった。そのサイトが閉鎖されて久しい今となっては何もかもがゼロからのスタートなのである。イベントを開きたい希望はあるものの、立ちはだかる壁は大きい。mieさん自身、サイトを閉じたことは後悔しているようなので、とりあえず再開してもらうようお願いした。新サイトの反応を見つつ、また以前のような面子が揃えばイベントも復活させたい方向。準備や宣伝にかかる期間を考えて、どんなに早くても3月以降にはなるだろうな。
お店には現在No'Whereというバンドでドラムを叩いている藤井修さんがたまたま来ていて、彼が企画した「SUPER HARD ROCK NIGHT」というイベントについていろいろ話を聞かせてもらった。NoB(元Make-Up)、寺沢功一(元BLIZARD)、ルーク篁(元聖飢魔ll)らと組んだユニットで往年のハードロックの名曲をコピーするというのが主旨だそうで、「若い頃にいろんなバンドから影響を受けて、ミュージシャンで生活していくのが夢だった。それが叶ったから、今度は伝承する側に回りたい」と話す藤井さんは私よりかなり年上なのだが、年齢を全く感じさせないどころか、いたいけですらあった。マスターにしてもシンちゃんにしても、音楽好きの男というのはいくつになっても夢見る少年みたいな部分が残っていて、直接そういう人に触れるといかに自分が汚れているかを思い知らされる。そりゃあ皆いろいろあるんだろうけど、信念を曲げないのは単純に偉いし見習いたいものだと思う。