行く年来る年ダイジェスト版<前編>



思い出せる限りだーーっと行きましょう。


12月23日
下北シェルターでMAD3の今年最後のライヴ。ゲストはTHE 5・6・7・8'Sという豪華組み合わせ。9月のワンマン以来に見たMAD3は、エディ閣下の足も完治したようで最初から最後までフル・スロットル。最前列で押しつぶされながらも「これだー」と心の中で何度も叫ぶ。「MAD3のライヴはいつでも同じ、何も変わらない」なんて言っているうちは甘いな。彼らは一定のクオリティーを維持しながら、その時々によって色々な表情を見せる貴重な生き物だ。だからこそ1回でも多くMAD3のライヴが見たい。私は多分40回以上彼らのライヴを見ているが、毎回同じだったらこんなに足を運ばないよ。この日も、この時この場所でしか見られないものを沢山見た気がする。おまけに来場者には200枚限定のクリスマスシングルが配られた。太っ腹!!
ゴロッパチ姉さんたちは今やハリウッド・スターの仲間入りを果たしたというのに、基本スタイルに変更無し。あたりまえか。しかし、去年(02年)の『TEENAGE MOJO WORKOUT』はやはり姉さんたちにとってもエポックの1枚だったようだ。そこからのナンバーは演奏がタイトに締まるだけでなく、ステージ進行上も重要な位置づけになっている。
汗だくになったけど、爽快な気分で帰宅途中、ふとしたきっかけで精神的にふわーっと軽くなる。あれっ!? この何ヶ月か悔やんでいたことは何だったんだ?ガラっと変わった精神状態のため、帰宅後も興奮して寝つかれない。


12月24日
仕事を定時で切り上げて、ダッシュで帰宅。消防士並みの素早さで着替えて、下北へ出動。今日は251でニーネ。気分が軽いと苦もなくこんなことも出来てしまう。
入口で代金を払い予約をお願いしておいたチケットを受け取ると、同時にCDをくれた。最近ニーネが密かに録りためていたカヴァー曲集らしい。曲目を見るとザ・フーイギー・ポップレッド・ツェッペリンから松山千春柏原芳恵、まである。さすが極上のカヴァーセンスを持つニーネだ。
ニーネを見るのは約1年ぶりで、ベースが変わってからは初めて。そのベースの指向が反映されているのだろうか、曲調はファンキーなものが増えていた。新曲もどんどん出来ているらしく、半分以上は初めて聴く曲だった。創作意欲が旺盛なのは良いことだ。ただ今はバンドとして過渡期にあるのかなと、その新曲を聴いて思った。悪い曲ではないが、詞にしろ曲にしろ、以前ほど鮮烈な印象が残らない。もう一歩突き抜けて欲しいもどかしさが残った。大塚(vo.,g.)には才能のほとばしりを感じているので、期待には応えてくれると思っているが。終盤に演奏された名曲「タイ料理」のキュートなこと!!やっぱりこれくらいの曲がズラッと並んだら物凄いライヴになると思う。終演後、期待を込めて会場限定発売のライヴCDを2枚購入。
対バンで出たのはみみずくず。ライヴを見たのはこれが初めてだったが、正直なところがっかり。褒められる点が見つからなかったのでノーコメント。


12月26日
仕事納め。例年なら定時で終わった後、納会という名の飲み会に付き合わされるのだが、今年はちょうど通院の日に当たっていたので午後早退。金曜が受持ちの主治医に感謝だ。
診察を済ませて帰宅後、昨夜ビデオに録っていた「ELVIS」のロンドン・パンク特集を見る。内容はある程度予想していた通り。半分ほどはパンク好きのためのロンドン観光ガイドという趣向で、いかにもファッション・パンクスという出で立ちの司会進行の女の子がビビアン・ウエストウッドのブティックとかクラッシュがリハーサルに使っていた倉庫とかラフ・トレード・ショップとかを訪ね歩く。パンクも既に四半世紀以上前の出来事だから、こういう扱いを受けるのもやむなしだろう。しかし見どころもちゃんとあった。ピストルズがリハーサルに使っていたスタジオ前で実現したグレン・マトロックとミック・ジョーンズの2ショット!!パンク・ムーヴメント以降もお互い交流はあるみたいで、仲も良さそうだったのにはびっくり。ミックの「ジョー(・ストラマー)は生まれつき心臓が悪くて、いつ死んでもおかしくなかった」という発言には思わず涙する。それにしてもグレンに「シド・ヴィシャスはどういう人でした?」と聞く司会進行のねーちゃんは根性があるのか、バカなのか…。
後半出てきたドン・レッツにも驚いた。「ロンドン・コーリング」のビデオを撮影した現場でのインタビューで、「彼ら(クラッシュ)はいるだけで絵になった。フォーカスさえ合わせれば、後はどう撮っても良かった」との言葉に大納得。あんなフォトジェニックなバンドは歴史上そうたくさんはいないね。


12月27日
今日から9連休。やることはいろいろあるけれど、今日一日は何にもしねーぞと決めての〜〜んびり過ごす。キース・リチャーズ・ファイルとbeatleg最新号の見本がそれぞれ届いたので、それを読んでいるうちに半日は潰れる。こんなにのんびりできる日は年に何日も無いので、たまにはこういう時間の使い方もいいだろう。年の瀬の中の贅沢。


12月28日
大掃除の手前の軽い掃除など。夕方から2駅ほど離れたパソコン・ショップへ。騙し騙し騙し騙し騙し…と騙しに騙し続けて7年半使ったパソコンもいい加減限界に達しているので、買い換えねばと常々思っていたのだが諸般の事情でそのタイミングが見つからず、現在に至っていた。買い換えるならこの正月休みしかないだろうなと思ったので、今日はその下見。う〜〜む、メーカー品はしっかり作ってあるんだろうが、余分なソフトなどが多い分高くて予算と折り合いが付かない。いくら安くても中古品には手を出すほどの魅力を感じない。やはりBTOのダイレクト販売か。BTOと言ってもバックマン・ターナー・オーヴァードライヴではない。
その帰り道ふらりと立ち寄った本屋で、衝動的に手塚治虫作品を買ってしまう。何故だ。他にもやることはいろいろあるし、経済的に余裕があるわけでもないのに。


12月29日
手塚治虫ブームキターーー。何で私はこの暮れも押し迫った時期にマンガを読み耽っているんだろう。手塚マンガは小学生時分から何十冊も読んだが、改めて読んでみると昔は気付かなかった意味やテーマが分かって、おもしれーのなんの。昨日買った短編集「空気の底」と「時計仕掛けのりんご」を一気に読み、他にも手元にあった数冊を読む。
ああ、何で「どついたれ」は途中で終わってるんだろう。続きが気になるぜ。そういえば実家には「フィルムは生きている」もあるはずだな。あれも傑作だった。帰省したら読もうっと。新鮮な衝撃と懐かしい名場面の数々が交錯して興奮してくる。やるつもりだった大掃除は超ショート・ヴァージョンにて終了。


12月30日
手塚ブーム収まらず。が、他にもやること色々。Amazon USとAmazon UKにオーダーしていたDVDが相次いで届いたのでとりあえず見たのがビートルズエドサリヴァン・ショウ完全版とOLD GREY WHISTLE TEST 1のディスク1。
エドサリヴァンは事前情報通り、ビートルズが出演したうち4回分をノーカットで収録。CMまでそのまま入っている。ビートルズの出演シーンは一部を除いて見たことあるものばかりだったけど、番組全編を通して見ると当時いかにセンセーショナルなことだったのかがよく分かって新鮮。ビートルズ以外の出演者の髪形と比較すれば、マッシュルーム・カットだって充分長髪に見える。古き良きアメリカの健全な家庭に入り込むには騒々しい音楽だったことも納得できる。当時を知っている人は懐かしく見ることができるのだろうが、まだ生まれてもいなかった世代の私には歴史を伝える資料として興味深く見ることができた。同時に40年ほど前のアメリカのテレビが娯楽をどう考えていたかも如実に見えてきた。ビートルズの出演シーンひとつ取っても、正面からと斜めからのアングルを計算に入れた立ち位置(ジョンのヴォーカルマイクがやや前に出ている理由はそこにある)が決められていて、それに従って演奏していたことに気付く。他にも演出効果に関する工夫は随所に散りばめられていて、テレビとはこういうものだというお手本のような番組だったのだ。そういえば20年ほど前まで、日本のテレビもエドサリヴァン・ショウを流用したような番組が沢山あったよなあ。
ところで家に届いた米版のエドサリヴァンDVDはリージョン・フリーだった。ということは普通に日本で売られているプレーヤーでも視聴可能のはずだ。価格は日本版の半値程度。それなのに国内のショップでは米版が入荷していないのは何故だろう。国内メーカーによる輸入権が発動されたか ? ただし米版には字幕は入っていないので、念のため。日本語はもちろん、英語の字幕もありません。お蔭で漫談のコーナーなど何を話しているのか私には半分も理解できなかった。
OGWTはエドサリヴァンとは打って変わって出演者の演奏そのものが楽しめた。デビュー間もないドクター・フィールグッドの雄姿にきゃーきゃー言って喜び、若き日のトム・ウェイツのドスの効いた歌声に涙する。よくぞこれだけのものを残しておいてくれたと番組スタッフに感謝。