MAMORU & THE DAViES vs The ピーズ@新宿Club Doctor



 前日の夜ストに続き、おじさんロックンロールバンドのライヴに出かけるわし。この世代が元気にロックしてロールしてくれている間は、私も頑張らねばと思えるのだから彼らの責任は重大である。

 開演の数時間前に有馬記念を外したハル(45)の愚痴と八つ当たりで幕を開けた、殉職ヴァージョン。ピーズのライヴでは競馬に関するMCはよく聞くけど、勝ったという話は聞いたことがないな。「申し訳ねえ」と謝りつつも、普段以上に気合の入らないグダグダのハルをよそに、アビさんとシンイチロウ先輩のタイトな演奏が決まる。この構図がピーズだ(笑)。
 ハルとて決してやる気が無い訳ではないのだが、有馬のショックから立ち直れない様を隠そうとしないところが彼らしいし、他の2人もその分を挽回しようと頑張っているのではなく、「いつものこと」と大して気にも留めずに演奏に集中しているだけだ。この気取らなさがピーズの音楽の魅力に直結している。
 手の届く範囲のことしか興味がない。身の丈に合わないことを望まない。普段考えているようなことを、普段話しているような言葉で、ロックンロールに乗せる。その姿勢に無理が無いし、自然に思えるから、ピーズの音楽にはえも言われぬリアリズムやシンパシーが感じられるのだ。それでも演奏が下手なら苦笑が伴うが、上手いもんなあ。ハル=ボケ、アビさん=突っ込みの漫才パターンのMCももう堂に入った感じで、自然体がエンターテイメントにまでなっているし。
 セットリストは新旧取り混ぜて全15曲(詳しくはオフィシャルブログで)。「いちゃつく2人」「ブリーチ」「とりあえずここはいい気持ち」と、『GREATEST HITS vol.1』から3曲も演奏したのが、当時を知る者には嬉しかった。あれから21年も経ったのは事実だが、そこにあるのはノスタルジーだけではない。あの頃の曲が、最近の曲と並べられても違和感がないことにこのバンドの本性を見る思いだ。

  • MAMORU & THE DAViES

 さて一方のMAMORU & THE DAViESも、普段着感覚のロックンロールにかけてはピーズに負けていない。ロックンロールを信じて疑わないワタナベマモルさん率いるこのバンドにかかると、「ロックンロールだから」で全てが片付いてしまう。この日のライヴも全部それで説明ができる。

 ステージに登場した時はエピフォンのセミアコを抱えていたマモさん。しかし1曲目の「ロックンローラー」の途中で気が変わって、ギターを置いてハンドマイクで歌いだした。単に持ち替えただけではない。この曲は後半でブレイクが入ってテンポが速くなるのだが、その辺りからはステージ上を飛び回って大暴れ。先ごろ47歳の誕生日を迎えたばかりなのに、ここ数年で最も激しいステージ・アクションを見た気がする。

 2曲目以降もギターはハラ君に任せ、マイクを片手に飛び跳ね、客を煽るマモさん。ピーズで満足したはずの観客もすっかり乗せられて、フロアは大いに盛り上がった。

 ここ数年は音楽一筋に打ち込んで、年に1枚のアルバムと、100本以上のライヴを続けているマモさんだ。そのペースは順調だし、曲のクオリティも高い。先日下北CCOで行われた弾き語りライヴでも、新曲が1週間で5曲できたと語っていた。創作活動が充実していることは明らか。そのテンションの高さを反映したライヴだったとしか思えない。

 またマモさんを支えるDAViESの面々も、職人的な上手さを持つミュージシャンであることが如実に。ハラ君などはマモさんがギターを手放した分、負担が大きかったはずだが、むしろいつも以上にアドリブが炸裂して演奏を牽引していた。

 その場のノリに応じてライヴを展開するのは、「ロックンロールだから」。きっとマモさんに尋ねてもそういう答えが返ってくるはずだ(過去には何度か同様の例あり)。ロックンロールに至上の価値を置き、それにすがるように生きているから、こんなライヴもできてしまう。

 セットリストは別掲の通り。10月に出た新作アルバムの曲を交え、ライヴでは定番の曲を並べた鉄壁とも言える選曲。去年もこの会場で、この組み合わせで2マンライヴが行われた時は、マモさんの曲を知らない観客も少なくなかったと記憶するが、この日はサビで合唱が起きるなど、曲を知っている観客が多かった印象。1年でファンが増えたか。
 アンコールでは新譜の特典としてCDRで配布された「ハードレイン」。それからキラーチューン、「今週週末来週世紀末」を披露。「今週週末〜」ではピーズの3人が再度ステージに現れ、コーラスで参加した。サビの「♪ワーイワーイワイ〜」は会場全体で唱和して忘年会的に盛り上がった。


 この2マンはやっぱり楽しい。終演後に飲んだビールが美味かった。ピーズにしても、MAMORU & THE DAViESにしても、今後商業的な大ブレイクを果たすとは思えない。少なくとも東京ドームでワンマンを行うなんてことはないだろう。そもそもそんなことは眼中に無いだろうし、興味も無いはずだ。しかしロックンロールをやることにかけては全くブレが無い。そのロックンロールで数百人規模の観客を楽しませることにかけては折り紙付き。こういうバンドが日本にいることは奇跡的だ。日本人はもっと誇っていい。

 MAMORU & THE DAViES 2010年12月26日 Club Doctorセットリスト
1.ロックンローラー
2.Hey, キャデラック
3.間がもたねえんだ
4.炎のパブロッカー
5.メンドクセー
6.不遇な犬
7.この胸のざわめきは何だ
8.キャデラック3号
9.2人で歩いた
10.天才きどり
11.マボロシ
12.オイラの部屋へおいでよ
13.ロックンロール賛歌
14.R&R ヒーロー
15.ヒコーキもしくは青春時代
   encore
16.ハードレイン
17.今週週末来週世紀末(w. Theピーズ



【1/22写真追加】
 遅ればせながら写真をアップ。諸般の事情によりピーズの単独セットの写真はありません。悪しからず。