Edward O'Connel『Our Little Secret』



 ネット上を徘徊していて偶然知ったアーティスト。予備知識は全く無かったが、このジャケットを見て、ハートをズッキュンと打ち抜かれた。





 元ネタが分からない人がいるかもしれないので、念のため種明かしをしておくと、これはニック・ロウの往年の名作、『Jesus of Cool』のパロディなのだ。





 こんなバカなことをする人は絶対に面白いに違いないと、即座にCDを注文。しばらくして届いたCDの裏ジャケットを見て、再度吹いた。裏側はトム・ペティの『Damn The Torpedoes』のパロディになっていたのだ。





 これでもう、掴みは充分過ぎるほどOK。ジャケットからして往年のギター・ポップ、パワー・ポップのパロディ的な楽曲が並ぶのかと思いきや、さにあらず、共作を含む全13曲はいずれもEdward O'Connel氏のオリジナルで、聴き応えのある佳曲が多数。ギターを中心としたメロディアスな楽曲とポップなアレンジ。この世界が好きな者には堪らないサウンドだ。こんなに素晴らしい曲があるのなら、笑いに走るのはジャケットだけで充分だ。
 露骨なパロディこそ無いものの、音のテイストはジェフ・リンと組んでいた頃のトム・ペティを髣髴とさせるものがあり、何曲かでリードを弾いているBuddy Speirというギタリストの音がジョージ・ハリスンのそれに似ていたりして、終始ニヤニヤが止まらない。
 全曲がバンドで録音されているところも、好感を持った。宅録が盛んな昨今はひとり多重録音で作られるパワー・ポップも珍しくないが、こういうサウンドにはバンド編成ならではのグルーヴ感が不可欠だと私は思っている。ジャケットに写るEdward O'Connelは、見たところ50歳ぐらいに思えるのだが、彼の年代ならば私と同意見だったためにこうした音になったのではないかと想像する。
 Edward O'ConnelはワシントンD.C.在住のミュージシャンで、ソロ・アルバムはこれが初めてだそうだ。本職は法律関係の仕事をしているようだが、ワシントンのローカル・シーンでは30年ほどバンドを続けていたキャリアがあるそう。こういう趣味性の高い音楽では、現在の音楽業界に衝撃を与えることは難しいと思われるけれど、今後も時々オリジナル作品を世に問うて欲しいものだ。
 アルバムの最後を締めくくる「All My Dreams」という曲は唯一彼が弾くピアノをフィーチャーした美しいバラードで、曲の出来もさることながら、鍵盤さばきもなかなかのもの。もし次作があるならば、ピアノをメインとした作品も面白そうだ。
Edward O'Connelオフィシャル・サイト


Our Little Secret

Our Little Secret

 限りなく自主制作に近いアルバムながら、日本のAmazonでも取り扱いがあった。ただし11月9日現在、品切れ中。再入荷はあるのだろうか。注文が多ければAmazonも動くだろうが。
Our Little Secret

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 しかしAmazonのMP3ダウンロード・ストアでも扱っていたので、音は聴ける。つーか、いつの間にMP3ストアが始まっていたのだろう。Amazon本店などではとっくに始まっていて、「いつになったら日本は…」と苦々しく思っていたのだ。
 これで在庫切れや、配送遅れの心配も無くなったし、何より試聴用として強力に活用できるのが嬉しい。



【追記】
 Amazon JPでのMP3ダウンロード・ストアが始まったのは今日からだった。ダウンロードの手順や注意点をまとめたブログがあったので、リンクしておく。
Amazon MP3 ストアを使ってみたよ!(長文ごめん)