Drunk or Die Vol.6@下北沢Club Que

k_turner2009-01-31



 夜のストレンジャーズ企画による2マンイベント『Drunk or Die』の第6回。今回の対バンはハッチ・ハッチェル・バンドだ。ちょうど休日に当たっていたこともあって、何週間も前から楽しみにしていたのだが、数日前になって野暮用が立て込んでしまったのに加え、急な出費が重なってしまい、時間的にも経済的にもあららら…。
 野暮用は当日朝に何とか片付けた。あとはお金か。。しばし沈思黙考し、出した答えはCDの処分だった。20枚ほどのCDをユニオンに叩き売り、チケット代プラスアルファの現金をゲット。デヴィッド・ボウイレッド・ツェッペリンもさようなら。君たちのCDはいつでも買い直しがきくけれど、ライヴは一期一会。同じものは二度と見られないのだよ。
 これでビール片手に最高の演奏が聴けると、意気揚々とQueへ。入り口で夜ストのミウラさんとマネージャーのミツヤマさんにばったり。先日のチッタでの泥酔ぶりをミウラさんに指摘すると、あれ以来反省して節酒しているとのたまう。さすがに傍目で見ていて引くほどだったからね。しかし反省もほどほどにしてもらいたいものだ。呑んだくれてこそ夜のストレンジャーズだろう。「酒が人間をダメにするんじゃない。人間はダメなものだということを証明するために酒が存在する」とは立川談志家元の名言。もしミウラさんが君子だったらあんな曲は書けないだろうし、同様に君子などではない私の心を揺さぶることもないだろう。聖者になんてなれないよ、だけど生きてる方がいいと言うではないか。
 あーー、相変わらず前置きが長いな、おい。この日はユニオンにCDを持っていかねばならなかったので、重いカメラバッグまでは担げなかった。よって撮影せずにのんびり楽しむ。
 最初はハッチ・ハッチェル・バンド。デキシード・ザ・エモンズはもちろん、ヤング・スキンズなどハチマさんのバンドは今までいろいろ見てきたけれど、これが一番のびのびと楽しそうにやっているように見える。20〜40年代のジャズを中心に、カンツォーネ、リートなどのヨーロッパの歌謡曲や民謡、おまけに演歌や昭和歌謡の要素もぶち込み、ヴォードヴィル調やミュージック・ホール仕立てにしてコミカルに聴かせる。レトロだけれど、スノッブ臭は無い。伊達でいなせなのだ。
 外来文化を取り入れることに長けた日本人的ミクスチャーな発想とも言えるが、実際世界でこのバンドにしかない形態を作ってしまっているのだから文句はないだろう。「音を楽しむと書いて音楽」なんて詭弁でしかないと思うけれど、底抜けに楽しいハッチ・ハッチェル・バンドに限ってはそう解釈してもいいかな、なんて考えてしまう。楽しんだ者勝ちなのだ。
 メロディーは案外マイナーだったりするし、歌詞も悲しいものが少なくないのに、演奏する側もそれを聴く観客も何故か笑顔になってしまう不思議。「パン屋のうた」も「酒のめなくなりてえな」も、どれもこれもが素晴らしい。これぞ悲喜こもごも。多分深刻ぶっていないところが良いのだ。
 MCでハチマさんが「スウィングしてるのに意味が無い」と言っていた。ハッチ・ハッチェル・バンドはこの一言に集約されるのかもしれない。100年前の人も100年後の人も等しく楽しめるような普遍性が感じられるのが魅力だ。これってすごいことだぞ。
 1時間に及ぶハッチ・ハッチェル・バンドの演奏が終わって、続いて夜スト。珍しく出囃子付きでの登場だった。Queのステージは横に長くて、ベースのY田さんのほぼ正面に陣取っていた私には、ミウラさんのヴォーカルとギターがやや聴き取りにくかった。その分、ブイブイと唸るベースはよく聴こえ、運指もよく見えた。また角度とステージの高さの都合で、普段あまり見えないテツオさんの表情もはっきりと確認できた。たまにはこういうのも良い。Y田さんのベース・プレイはとてもセクシーだし、テツオさんも意外に表情が豊かなのは発見だった。ただ目の前でこれを見せられると、撮影したい欲求を抑えるのに苦労した。Queは照明が明るいしね。
 夜ストもほぼ1時間の持ち時間で、現在のバンドの力量を遺憾なく発揮。オープニングは攻撃的なナンバーをぶつけ、途中バラードを挟みつつ、昨年発売された目下の最新作『トラブルボーイズ』からの曲を並べ、後半はまたアップ・テンポ中心に畳み掛ける。計算が行き届いた理想的なセットリストだった。観客はそれに応えて歌い、踊り、飛び跳ねてと忙しく、至福の時を堪能した。
 「Boogaloo Joe」や「ブギ大臣 Part2」でのミウラさんのヴォーカルは叫ぶと言うよりは吠えており、迫力があった。総じてこの日は迫力のある歌いっぷりで、力が入り過ぎたのか途中で少々声を出し辛そうにしていた部分もあったりしたが、1時間ぶっ通しでこれだけ歌ってもらえれば満足。リズム隊との絡みも申し分なく、バンドの好調ぶりを感じさせた。
 この日の新曲は「最終バス」「ファクトリー・ガール」「Young & Hippie」の3曲で、いずれも既に重要なポジションを占めるレパートリーと化しているもの。「最終バス」はつくづく名曲だ。短い曲の中で巧みな情景描写が織り込まれていると同時に、登場人物の心情が透かし絵のように浮かび上がる。どうしようもなくビジュアル・イメージが喚起され、映画を見ているような気さえする。恐らく3分あるかないかのこの短編の上映中、私は涙で何度もスクリーンが見えなくなってしまう。ソウル・ナンバーの「ファクトリー・ガール」とキラーなロックンロール「Young & Hippie」も本当に素晴らしい。これら3曲を聴くには今のところライヴに足を運ぶしかないのだ。
 セットリストをいただいたので、たまには転載しておきますかね。

1.(I Set My) Soul On Fire
2.Boogaloo Joe
3.ブギ大臣 Part2
4.水晶の夜
5.WALKIN' BY MYSELF
6.Lady Bird
7.道化の華
8.連れていってよ
9.泥の川
10.TWIST FOR DROP OUT
11.バスタブブルース
12.最終バス
13.ファクトリーガール
14.I Woke Up Crying
15.Gimme Gimme
16.プライベートな話をしよう
17.Young & Hippie
18.トラブルボーイズ
 〜Encore〜
1.Drunk Or Die
2.Big Fat Saturday Night

 ワンマンのライヴも何度か見たことのある夜ストなので、1時間ほどで完結してしまうこのイベントはいくらか物足りなさが残る。聴きたい曲はまだまだ沢山あるのだから。ライヴに通いたくなってしまうという意味では2マンイベントは良い戦略なのかもしれない。この『Drunk or Die』という企画はまだまだ続くようだ。2月はOi SKALL MATESと、4月はTHE 5.6.7.8'sとで行われることが発表されている。7月や8月も既に決まっているそうだが、情報解禁日の関係でまだ詳細は言えないとのことなので、相当なビッグ・ネームとの対バンになるのではないか。楽しみなり。
 とは言いつつ2月のOi SKALL MATESとやる日は都合が付きそうに無い。となると次に夜ストが見られるのは3/14のMAMORU & The DAViES企画のイベントかな。この日はムーニーさんも出るので、一昨年12月のあのイベントのプチ再現でもある。