ニッポンのロックンロール Vol.8@新宿Red Cloth



 会場に向かう途中で聞いた留守電の内容は、この冬一番の冷え込みを一層骨身に染みさせるものだった。気落ちしつつ紅布の重い扉を開けると、ステージではトップバッターのアナログ時代が演奏中だった。

 中期のビートルズが好きなんだろうなということがよく分かるバンド。サイケでポップなビート・ナンバーが多く、演奏力もあるのでなかなか聴かせる。ただ予想の範囲を超えていなかったのは事実で、内輪ウケで満足しているようなこじんまりした感じが見えたのは残念。メンバーはまだ若いようなので、もっと野心的であって良いのでは。
 続いてUnlimited Broadcast。正直なところ音の印象が全く残っていない。よってノー・コメント。すまん。

 3番目が太陽民芸。初めて見るバンドだが、事前にMy Spaceで音はチェックしており、密かに期待していた。RCサクセションの「ロックンロール・ショー」をBGMに登場した時点で、私の中の好感度アップ。掴みはOKという感じ。ギター×2、ベース、ドラムのシンプルな4人編成で、鳴らす音も何の変哲も無いロックンロール。やや叙情的なストーンズといったところだが、私の中に何かがグサグサと刺さるのを感じた。どうして私はこういう愚直で貧乏臭い音に惹かれるのだろう。私が愚直で貧乏だから同類を哀れむ心情がそうさせるのだろうか。理由の分析はともかく、自分の感性には正直でありたい。太陽民芸は最高である。

 My Spaceでも聴ける「眠る男」という曲は紛れも無く名曲。一度聴いたら忘れられないキャッチーなメロディが素晴らしい。他の曲もMy Spaceにアップされている音源よりライヴで聴く方がずっと良いと思った。私の知らないところにまだまだ才能は眠っているのだなあ。しかしヴォーカルの岩川健次郎のキャラクターは、サンボマスターの山口と被っている部分があるのは可哀想だ。どうしても比較されてしまうだろうし、心無い者はパクリだと言うかもしれない。実際はそんなことはないのだろうけど。

 トリはこのイベントの企画者であるMAMORU & The DAViES。根っからのミュージシャン達であるから、このバンドの音はいつも安心して聴けるのだが、この日は特に充実していたように思う。今年見たDAViESの演奏では1、2を争う出来。リンク・レイのカヴァーでスタートして、「キャデラック2号」「ふたりで歩いた」「百戦錬磨の男」「炎のパブロッカー」「恋は何色?」「ヒコーキもしくは青春時代」などなど。新曲もちらほら。最新作『ヒコーキもしくは青春時代』の収録曲になるとイントロから歓声が上がったのが印象的だった。ヒットしているではないか。


 フールズのカヴァー「カム・オン・ブギ」で本編を終了し、アンコールでは「とりあえずメリークリスマス」が聴けた。この時期しか演奏しない曲であり、「気をつけろ外反母趾」という歌詞が登場する世にも珍しいクリスマス・ソング。選曲も文句なしで、満足できるライヴだった。全く新しくない、ただのシンプルなロックンロールなのに、これだけ楽しめる不思議。3コードのマジックとしか言いようが無いが、そのマジックのタネや仕掛けを知っているバンドはそう多くない。MAMORU & The DAViESはそれを知り尽くしている数少ないバンドのひとつだ。




【追記】
 DAViESのステージ中のMCで、岡本さんがニック・ロウが使っていたのと同じベースを買ったとマモさんが話していた。自分で中野の楽器屋へ行って買ったのだが、岡本さんは「昨日サンタさんが届けてくれた」と言い張っているというのが最高だったな。
 そのベースというのが以下の写真に写っているもの。見難いと思うが、テレキャスター・タイプの珍しいベース。ペイントも同じかどうかは聞かなかった。値段は…、聞くまでもなく高いのだろう。



【1/7写真追加】
 Unlimited Broadcastの写真はありませんので悪しからず。太陽民芸が思いの外かっこよく写っていて驚いた。実際はもう少し小汚いです。マモさんの永ちゃんのマネとロジャー・ダルトリーのマネの証拠が残せたので、個人的には満足です。