夜のストレンジャーズ〜”トラブルボーイズ”発売記念ワンマン2デイズ「祝・呑みっぱなし2DAYS」@新宿紅布


 いつもの店 同じバンド 知らない曲など演らない
                         〜Big Fat Saturday Night〜

 先月発売になったニュー・アルバム『トラブルボーイズ』のレコ発ワンマン2デイズの初日。夜ストのワンマンは昨年のミウストレンジャー生誕40年記念ライヴ以来だ。夜ストそのものも、今年は1月ぐらいに見た切りじゃないかな。
 というわけで思わず2デイズの通しチケットを予約して、ザ・フーの余韻も冷めやらぬ中だが、フーに劣らない程の期待でパンパンになりながらRed Clothへ向かったのだった。もちろんカメラを抱えてだ。

 毎度のことながら夜ストのライヴは分析とか考察とかを受け付けない、夢のような時間と空間のカオス。「楽しかった」と100回書いて終わらせてもいいくらいだ。

 久しぶりに見たライヴだということもあり、演奏力が益々向上していてびっくり。オーガニックなグルーヴを醸し出す完璧なアンサンブル、って書いていて自分の語彙の貧困さにクラクラするが、とにかく世界レベルで見てもこれだけの演奏ができるトリオはそれほどいないのではないかと思える素晴らしさだった。ミウラさんのフィンガーピッキングによるギブソンの鳴り具合は絶妙だし、ヨーホー氏の左手はフレットを上下に滑り、ウッドベースのような太くて厚みのある音を紡ぎだし、テツオさんの的確すぎるスティックさばきは色彩感のあるリズムを刻む。あのシンバルの使い方は憎らしいぐらいだ。3人の音が渾然一体となって響くと、Red Clothはヨタ者どものパラダイスと化した。満員の観客がビールを片手に歌ったり、踊ったり、めいめいに楽しんでいる。この光景が永遠に続けばいいのに。

 レコ発ということで、『トラブルボーイズ』の収録曲は全曲を演奏。私は発売日に購入し何度も聴いていたが、それでもライヴで聴くと改めて良い曲だなあと思った。「連れていってよ」の詞に揺さぶられ、「Twist For Drop Out」ではカメラを持っていることも忘れてモッシュの輪に加わってしまった。「泥の川」も「おやすみ恋人よ」も「水晶の夜」も、どれもこれもが素晴らしい。
 もちろん過去のアルバムからも多くの曲が演奏され、2時間を超えるライヴで40曲以上が披露されたはず。後半に新曲コーナーがあり、「夏の恋人」「最終バス」「Young & Hippie(Hippies?)」という3曲が聴けた。この3曲がいずれも大変な名曲だった。

 「夏の恋人」は夜ストには珍しくフォーク・ロック調の曲で、情景描写が気だるい夏の午後の映像を喚起させるものだった。安直な発想だが、来年の夏あたりにデパートか何かのテレビCMで使われるといいのにと思った。テレビから夜ストの曲が流れてきたら最高だよな。広告代理店の方、いかがでしょう。
 「最終バス」は詞がまたスゴイ曲で、思わず涙腺が緩んだ。若さ故直面する絶望と、絶望し切ってしまうことへの拒絶反応を、ここまでリアルに描いた曲を私は知らない。安っぽい希望を歌う曲は世に溢れているけれど、そうした曲が薄っぺらに聴こえるのは、背景に絶望が見えないからだ。しかるに夜ストというかミウラ氏は「諦めてた」という1行をもって、凡百の応援歌を蹴散らしてしまった。本当にスゴイ曲だ。
 「Young & Hippie」はストレートなロックンロール。最近のライヴでは既にお馴染みだったようで、サビでシンガロングが起きるこれまた名曲だった。
 先月新作が出たばかりだと言うのに、既にこんな曲が出来ている夜ストというバンドに底知れぬものを感じた。早く次のアルバムを出してくれ。

 予定外の2度目のアンコールまでやってくれて、初日は大満足。明日ももう一度見られるのかと思うと、自然に笑いが込み上げてくる。撮影があったのでさすがに開演中は飲めなかったが、終演とともにバーカウンターで立て続けにビールを2杯いただく。至福のひと時だった。

【12/4写真追加】