ツータン逝く

R.I.P.



 マボロシハンターズのギタリストで、ヴォーカリストのツータンこと、福本強さんが亡くなった。今日の午後、Totちゃんから電話があり、知らされた。以前から心臓が弱かったそうで、ジョギングをしていて体調を崩し、そのまま帰らぬ人となってしまったとのこと。まだ40歳の若さであり、今も信じられない。
 マボロシハンターズを知ったのは10年ぐらい前だったか。その頃東京でウィルコ・ジョンソンそのままのギターを弾くエンディーが率いるランブルというバンドが活動しており、私は彼らのライヴをよく見に行っていた。そのエンディーから「奈良にミック・グリーンそっくりのギタリストがいる」と聞かされ、へーと思ったのを覚えている。その直後だったと思うが、エンディーが主宰するレーベルから『THE JAPAN R&B SESSIONS』というパブ・ロック系のバンドを集めたオムニバス・アルバム(写真)が発売され、その中にマボロシハンターズも収録されていたのだった。それが直接の出会い。

現在は廃盤。マボハンは「テレフォン」「どうってことない」の2曲収録。
 ツータンはずっと奈良在住で、マボロシハンターズも京都、大阪、奈良を中心に活動していたため、なかなかライヴを見る機会に恵まれず、初めてライヴを見たのは昨年12月に新宿Club Doctorで行われた『ニッポンのロックンロール〜Dr.FEELGOOD TRIBUTE アルバム』の発売記念イベントでのことだった。硬いカッティングでテレキャスターをガシガシと鳴らす様はまさにミック・グリーン直系で、トリオによるアンサンブルの確かさもパイレーツ譲りであり、思わずにんまりしてしまった。それと同時にもっと早く見ておけば良かったと思ったものだ。
 ツータンとは直接の面識は無い。ライヴを見たのがその時一度きりだったし、あの日は出演バンドが多く、観客も多数詰め掛けていたため会場はごった返しており、挨拶する余裕も無かった。私は開演中ずっとステージ真下で写真を撮っていたし。イベントの開催前と、開催後、ライヴの写真のことで4〜5回ほどメールのやりとりをしたのが唯一のツータンとのコンタクトだった。
 マボロシハンターズ以外での彼の一面として私が知っているのは、大変熱心な音楽ファンであるということ。mixiにはmixiミュージックという機能があり、mixiメンバーがパソコンで聴いた音楽の情報が集計されている。誰が何の曲を聴いたかが分かるし、アーティスト別に聴いた回数が多い上位50人もリストされていたりする。その中でキンクスを聴いた回数のトップが常にツータンだったのだ。私もキンクスは好きなので、今までのべ400曲以上キンクスを聴いたデータがmixiミュージックに登録されているのだが、400曲程度では上位50人にかすりもしない。mixiミュージック登録者の内、キンクスを再生している人は2000人強。その中で最もキンクスを聴いているのである。想像するに、数千回は再生しないとトップにランクされることはないのではないだろうか。驚くのはまだ早い。ツータンはキンクスの何倍もストーンズを聴いているのだ。mixiミュージック内のストーンズ・リスナー人口は7000人強で、ここでもツータンは5位以内である。これはもう万単位でストーンズを聴いていないとこれだけの記録にはならないだろう。恐らくストーンズのメンバーより聴いてるのだと思う。聴いた回数が多いと偉いということはないが、熱の入れようはよく分かる。このことに密かに気付いていた私は、今度会う機会があったら、ツータンにキンクスストーンズのことを聞こうと思っていたのに。
 私が好きなタイプの音楽をやっている人であり、好きなタイプの音楽を聴いている人だったことは間違いない。年齢が近いこともあり、一方的に親近感を抱いていた。まだやりたいことは沢山あっただろうに。彼の無念さを何百分の一でも晴らせるように精進したいと思う。ツータン、安らかに。ご冥福をお祈りします。

 これは昨年京都の磔磔で行われたマボロシハンターズのワンマン・ライヴで収録されたもの。
「マボウェブ」(マボロシハンターズのオフィシャルサイト)
マボロシハンターズMySpace(音出ます)