ニッポンのロックンロール〜DR.FEELGOOD TRIBUTE〜発売記念LIVE@新宿Club Doctor



 出演はMAMORU & The DAViES / 赤羽ブリロー(vo.ハル、g.アビ fromピーズ) / The PRIVATES / 夜のストレンジャーズ / VIOLETS / Mooney Session / 3CHORDS / 石橋勲BAND / マボロシハンターズ / ダンス天国 / ミステルズ / テリー島村グループ / DJ:KAWATO
 私にとってロックンロールとは、VIOLENT LOVEです。
 詳細後報


【12/23追記】
 記憶力の限界に挑戦しながら、今さらの感想文。
 先日発売されたドクター・フィールグッドのトリビュート・アルバム『ニッポンのロックンロール』のレコ発ライヴ。こうしたアルバムが出たことはもちろん、毎年リー・ブリローの命日にShelterで開かれているメモリアル・イベントや、今回のこのイベントが21世紀の日本で実現していることは、世界に誇って良いと私は思うわけ。世界中探してもパブ・ロックの佇まいをこれほど感じさせるバンドがうじゃうじゃいるのは日本だけで、それらのバンドが一堂に会するのは事件と言ってもいいぐらいだ。ウッドストックばりに40万人ぐらい動員する大イベントというわけにはいかないが、この夜集結した200人ぐらいにとってはウッドストックに匹敵する歴史的イベントだったはずだ。
 出演バンドが非常に多かったので手短になってしまうが、感想を以下出演順に。

  • テリー島村グループ


 数年ぶりに見たテリー島村グループ。トワンギン・ギターが冴えるカントリー・テイストのロックンロールだ。日本でここまでいなたくて湿度の低い音を出すバンドは貴重。チリ・ウィリ&レッド・ホット・ペッパーズあたりを連想させる。意外に音の太いベースも気持ちがいい。しかしこんなに歌もの中心だったっけ?

  • 石橋勲BAND


 イベントの開催数日前、撮影許可を貰うために連絡先を調べようとオフィシャルサイトを覗いてみたら、内田裕也の「ニューイヤー・ロック・フェスティバル」に出演していることが分かり、ちょっとびびった(笑)。しかし依頼には快諾してくださり、しかもとても丁寧な人柄をにじませるメールが返ってきた。これで確信したけれど、実際に見たライヴはやはり実直で硬派なものだった。ロックは元々不良の音楽と形容されていたことを思い出したなあ。相容れない世の中に反発するための合言葉としてのロックンロール。ドキドキする危険な感覚がこのバンドからは発せられていた。しかしそれはユーモアの一種でもあるのだよな。

  • ザ・ダンス天国


 今回のイベントで唯一未知のバンドだった。しかしこれが大収穫。混じり気無しの本格派。どが付くブルース。最高にして最強のロックンロール・バンドだった。いつの時代にあっても、こういうバンドは不滅。おしょうさんの猥雑なギターと攻撃的なヴォーカルにはメロメロ。後から分かったけど、ベースの岡本さんって元アンジーのあの方なのね。通りで黒いはずだ。めんたいロックの出自は隠せない。いや、隠してないか。


 何年も前から知っていたけど、ライヴを見たのは初めて。噂通りパイレーツ直系のバンドで、思わずウハハと笑いがこみ上げてくる。音だけでなくて、ステージで3人が並んだ時の出で立ちまでパイレーツなんだもん。奈良のミック・グリーンと異名を取るツータンのギターは、弦をぶっ叩くようなゴリゴリの音で看板に偽り無し。ミュートしながらカッティングした時のあのガガガガガがたまらん。ピックガードに書かれていたウィルコ・ジョンソンのサインがまた泣かせる。・゚・(ノД`)・゚・。

  • VIOLETS


 元ギョガンレンズのパッチが率いる4人組。パッチはレディオ・キャロラインと平行して頑張るねえ。多分私より年上だと思う。見習いたいものだ。元ドメニコ、現チョコレイツの楠本氏もメンバーで、R&B色の強いガレージ・ロッキンのスーパーバンドである。音がソリッドなのに加え、メンバー(特にクスモッツ)がステージ狭しと暴れ回って観客を煽る煽る。制御不能な感じが良い。パブ・ロックと言うよりはパンク寄りではあるものの、グレートなロックンロールであるからして私は文句なしに大好きだ。


つづく。。。。。
【12/29追記】


 この日は全12バンドが出演と、非常に出演者が多かったため、ほとんどのバンドは持ち時間が20分程度。フィールグッド・ナンバーばかりというわけではなく、普段から演奏している各々の持ちネタプラス『ニッポンのロックンロール』の収録曲という構成だった。普段のライヴではオリジナル曲ばかりで、カヴァーを演奏することがほとんどない夜ストだけに、この日のセットは貴重だった。中盤にて「ROXETTE」と「I DON'T MIND」を演奏したのだが、「脳みそツルツルで歌詞が覚えられない」という三浦さんは、譜面台に置いた歌詞を見ながら歌った。それでもところどころ怪しかった。こんなのはもう見られないだろう。その他はPRIVATESとの共演がきっかけで出来たという「プライベートな話をしよう」など、大変気合の入った演奏で素晴らしかったです。


 音だけでなく、メンタリティまでパブ・ロックな大阪のバンド。演奏前のセッティング中にキーボードの上に紙パックの牛乳を並べているのを見て、もう分かった、皆まで言うなと言いたかった。案の定、オープニングは『ニッポンのロックンロール』にも収録されていた「MILK & ALCOHOL」(笑)。しかしこれが日本語詞に変えられており、緩いグルーヴを持つ彼らには非常に似合っていた。このヴァージョンでレコーディングすれば良かったのに。他の曲もルーズでユーモラスで、最高。このセンスはルーモアに通じるなと思った。最後に演奏した「酔っぱらってる、いつも」はつくづく名曲だ。以前7インチを見たことがあったので、ライヴ後に買おうと思ったら、既に完売しているとのことで残念。あの時買っておけば良かった。

  • Mooney Session


 Mooneyこと橋詰宣明氏率いるオールドタイミーなロックンロール・バンド。全編アコースティック、かつドラムレスでこれだけビートの効いた音を出されると、ちょっと価値観が変わる。「ROUTE66」はストーンズ以前のリズムが跳ねるスタンダード仕様のアレンジで演奏されたのだが、実に躍動感のある生き生きとした演奏で、ストーンズのヴァージョンもフィールグッドのヴァージョンも霞んでしまった。完敗です。降参です。恐れ入りました。

  • 赤羽ブリロー


 主宰のワタナベマモルと並び、Shelterのリー・ブリロー・メモリアルには毎年出演しているピーズの変名ユニット。ピーズが活動休止中も、リー・ブリロー・メモリアルには出演していたほどで、本懐はこちらにあるのではないかと。その割にはハルは歌詞を覚える気がないようで、今回もカンペを見ながらの熱唱。自前のアンプを2台も持ち込んだアビさんのストラトは迫力のあるさすがの音。こちらはフィールグッズのトリビュート・バンドなので、当然のことフィールグッド・ナンバーばかりで、無条件に楽しい。もう少し長くやって欲しかったな。

  • MAMORU&THE DAViES


 そして首謀者のMAMORU & THE DAViES。Shelterのメモリアル・イベントの時はフィールグッズを中心にカヴァーばかり披露するが、この日は『ニッポンのロックンロール』収録の2曲のみカヴァーで、後はオリジナルだった。しかしこの人ののほほんとした風情はひとつの芸だな。シリアスさを全く感じさせないと言うとまるでバカみたいだが、考えすぎることなく、飄々と、しかしやっていることは紛れも無くロックンロール。これはやろうとしてもなかなかできることではない。少なくとも日本にはあまり存在しない才能だ。途中アンプにトラブルが起きてギターの音が出なくなるアクシデントにも、顔色ひとつ変えずに淡々と対処。これが40過ぎのしたたかさか。或いは「君はブルースを信じるか」なんて歌えてしまう肝の太さがあるからか。

  • 3 CHORDS


 続いてClub Doctorのオーナー自らがステージに。フィールグッズ好きが高じてこの名前を付けてしまったことからも分かるように、オオツカさんは完全にリー・ブリローになりきり、「hahaha〜、Hello, Tokyo!」とオープニングからかます。ヴォーカルもアクションもブリローそのもの。これで盛り上がらなければ、何しに来たのか分からない。当然のこと全編がフィールグッズ関連の曲で、「Homework」なんて例のサビで観客も合唱。ナイン・ビロウ・ゼロのライヴ盤のようだった。

  • THE PRIVATES


 80年代から活動を続ける彼らは、日本のロックの生き証人でもあり、ロックンロールの普及促進の貢献者でもある。この日はファンクラブ向けのイベントを終えて駆けつけたそうで、漢気ある姿勢を垣間見せた。音はさすがに貫禄があり、ほんの短い時間ながらグルーヴィな演奏で会場を最高の状態まで引っ張っていく手腕に脱帽。彼らにとってはお手の物なのだろう。メンバーの平均年齢は40代半ばぐらいのはずだが、まるで老け込んだ印象を与えないのは立派。経験を積んだ分、余裕は出ているのだろうけれど、20年近く前に初めて見た時からPRIVATESはこういうバンドだった。転石苔むさずとはこのことだ。こういうバンドが日本に存在するのは心強い。

  • TRIBUTE SESSION


 最後はアルバムと同様、出演者総出による「Violent Love」のセッション。と言っても楽器を持ってきたのはMAMORU & THE DAViESの面々のみで、リード・ヴォーカルのみマモル氏、ウガンダ、オオツカさん、ハルらが分け合った。これだけの面子がステージに揃うと壮観。みなさん既にオフ・ステージの衣装で手にはグラス、またタバコをふかしながらとリラックスした様子で、長丁場に及んだイベントの幕切れを惜しんでいるようだった。出演者それぞれが優れたロックンローラーであり、ロックンロールの大ファンでもあるのだから当然のこと。Hope & Anchorにも劣らない至福の空間が2007年の東京に出現したことは、感無量であった。
 私は一観客だったのに、何故かリハの段階から呼び出されてしまった。結局この日Doctorには8時間以上詰めることになったので、最終的には疲労困憊だったが、こういうことで疲れるのならいつでもOKよ。


【1/7写真追加】