リーブリロー追悼ライブ2007@下北沢Shelter

k_turner2007-04-07



 4月7日に亡くなった人と言えば、真っ先に出てくるのはカート・コバーンではなく、Lee Brilleaux。これはパブ・ロックのファンの間では全世界共通の常識だ。加えて日本のパブ・ロック・ファンならば、この日はShelterへ詣でねばならないことになっている。これも当然のこと。
 いつもの店、同じバンド、知らない曲などや〜らな〜い♪でお馴染みの、このイベントが今年も開かれた。念のために言っておくが、今年は夜ストは出なかったぞ。今年の出演バンドは、順に3CHORDS、赤羽ブリロー、MAMORU&The DAViES。
 3CHORDSは新宿のClub Doctorの経営者であるオオツカさんのバンド。Club DoctorがDr. Feelgoodから名前を拝借したハコであることは知っていたが、バンドまでやっていたとは知らなかった。そこまで入れ込むだけあって、オオツカさんはリー・ブリローそっくり。出で立ちから、歌い方、ステージ上でのアクションまで、まんまブリロー先生のコピーで、これには大笑い。当然演奏するのもフィールグッズ・ナンバーばかりで、本人が墓から出てきたとしか思えない光景を目の当たりにした。ここまでやられたら全曲を一緒に歌うしかないだろう。
 途中のMCで「この中にリー・ブリローがいた時のドクター・フィールグッドを見たことある人いますか?」とオオツカさん。ほぼ満員のShelterで「ヘーイ」と返事をしたのは、何と私だけだった。オオツカさんはそんな私に向かって一言、「40歳ぐらいの人?」。ハイハイ、今年で40になりますですよ。
 私とて辛うじてブリロー先生の雄姿を拝めたのは、91年の最後の来日の時だ。当時まだ23歳だったのに、今やブリロー先生の享年の一歩手前まで来てしまった。あれから16年も経ったのか…。あの日クラブ・チッタで燃え尽きた同志たちはどうしているのだろう。少なくともShelterへは来ていないようだが。
 と思っていたら、数少ない同志がステージに現れた。年に一度だけ結成されるピーズの変則ユニット、赤羽ブリローである。16年前にクラブ・チッタでフィールグッドを見た時、私の真後ろにいたのが、ハルとウガンダなのだ。アビさんは多分いなかった。16年前は同じ観客の立場だった彼らを、今は出演者として見ている私は何なのだろう。まあ、(゚ε゚)キニシナイ!!当時からピーズは好きなバンドだったから良いのだと思うことにする。
 昨年はかなり酔っ払っていたハルは、今年は一転、彼としては真面目に観客と向き合っていた。というのも、全編に亘ってギターを弾きながら歌っていたからだ。「King For A Day」(だったかな)に始まり、フィールグッド・ナンバーを連発するのは、例年通り。選曲も概ね同じだったように思う。「Milk And Alcohol」とか「Best in the World 」とか、ジッピー・メイヨ時代の曲が多いのも特徴。この辺はアビさんの好みなのだろうか。無論好きな曲ばかりなので、ここでもまた歌ったり、叫んだり、飛び跳ねたり。
 「スーダラ節」に乗って登場したMAMORU&The DAViESはもちろん今年もトリ。マモル氏はスーツではなく、普段のライヴと同じようなラフな出で立ちで、ハンチングも被っていた。こちらも毎度お馴染みとなっている曲ばかりで、すっかり手馴れたものである。フィールグッズ・ナンバーに関しては、去年とおおよそ同じ選曲。マモル氏のハープが素晴らしい。J.Geils Bandの「Ice Breaker」とか、随所で効果的に使われており、それがまたさり気ないのが良い。
 フィールグッズ・ナンバーに関しては今年は3CHORDSに主役を譲る主旨の発言があり、それに対抗すべく、フィールグッズ以外のパブ・ロック・クラシックを演奏してくれたのは嬉しかった。イアン・デューリーの「Sweet Gene Vincent」、ブリンズリー・シュワルツ(というかロックパイル版)の「Play That Fast Thing (One More Time)」などがそれだ。こういう小気味の良いビート・ナンバーをやらせると、このバンドは本当に上手い。ロックンロール・バンドとしての基礎がしっかりできているからだ。
 最近ドラムが代わったそうで、以前のドラマーと比較すると技術的にはやや見劣りするものの、ヘヴィな印象は強まった。そのためブルースをベースにしたビート・ナンバーなどは、むしろ今の方がしっくり来る。
 アンコールは出演者総出での「She Does It Right」、そして「Bonie Moronie 〜 Tequila」。今年は「Violent Love」が無かった(マモル氏が鼻歌で少し歌った程度)が、それ以外は例年通り。DAViESのメンバーを除いて何をやるのか知らされていない面々に、マモル氏が「いつもと同じだよ」と告げセッションが始まる。これがパブ・ロックだね。「テキーラ!」の唱和も、出演者のダイブも、完全にお約束で、お約束通り盛り上がる。ああ、また今年もこのイベントが終わってしまった。
 首謀者であるワタナベマモルは、「何で毎年こんなことをやってるのか分からない」と言っていた。私だって何故毎年のように足を運んでいるのか分からない。単純に楽しいのは認める。しかし変わり栄えのしない内容と分かっているのに楽しめてしまう理由は不明だ。「いつもの店、同じバンド、知らない曲などや〜らな〜い♪」ことが否定的な意味ではないことは理解していても、威張って言えるようなことでもないような気もする。その程度の気概は今でも持ち合わせているつもりだ。今ではドクター・フィールグッドのアルバムを日常的に聴くことは無いけど、年に1度ぐらいこういうイベントがあることは決して悪いことではない。むしろ一過性のブームとして終わらせずに継続しているのは、かつてフィールグッドや数々のパブ・ロック・バンドに心酔した者として実に心強く思う。
 因みに去年懲りたので、今年は写真は撮っていない。元々出勤日に当っていて、定時で退社しても開場時間に間に合わないことが分かっていたこともある。何より、こういうイベントはビール片手にヘラヘラ笑いながら見ているのが一番楽しい。写真なんか撮ってられねえよ。