三十路岩転道 2本目@武蔵境STATTO


  • RIOT MISSILE

 6時半には会場に到着するよう家を出たのだが、武蔵境へ来るのは6年ぶりぐらいだったせいか、乗り換えに失敗したり道を間違えたりしてしまい、遅刻してしまった。

 到着時には既にこのバンドが演奏中。ハートブレイカーズタイプのパンク・バンドで、「おっ、カッコイイ」と思って見ていたら、ベースを弾いているのは夜のストレンジャーズのY田さんではないか。びっくりしたなあ、もう。ジョニー・サンダースピストルズが好きだと書かれたプロフィールを見た記憶があるが、実際にその系統のバンドをやっていたとは知らなかった。

 「あと3曲やります」とのMCがあったので、あわててカメラをセッティングして撮影開始。夜ストで見慣れたY田さんの別の一面を押さえようと思ったけれど、満足な写真を撮るにはやや時間が足りなかった。興味本位のいやらしい思惑とは別に、バンドとしてもちゃんとパンクで面白いバンドだと思ったので、もっと早く来るべきだったな。

  • THE Zz BLOUSE

 このイベントはタイトル通り三十路のロック・バンドばかりを集めた企画で、何とリハーサル無し、出演順はその場でくじ引きで決められる方式を採用というユニークなもの。1組が終わると「ヒーローインタビュー」と称した司会者(STATTOまんぶー店長)から出演者へのインタビューがあり、次の出演バンドを決めるくじ引きが行なわれるのだ。そのためやたらと時間がかかる(笑)。

 2番手に決まったこのバンドは、ダブルゼータ・ブラウスと読む。日本語詞で歌うビート・バンドで、ギターに貼られたステッカーが物語るように、ブルー・ハーツの影響が感じられた。
 基本はロックンロールながら、肩の力の抜け加減はさすが三十路の貫禄か。現在ベーシストを募集中だそうで、「前のベースは子どもができたので、田舎へ帰って工場で働いてます。その前のベースも田舎へ帰って、バイク屋になりました。今度は音楽的な理由で辞めてくれる人を探しています」というMCには大笑い。全く他人事ではないけれど。もう情熱だけではバンドをやっていけない年頃なのだね。

  • ジェネス

 こちらも日本語詞で歌うバンドで、曲によってはオイ!やメロコアの要素が入っていたりするが、様式先行のパンク・バンドではなく、広義のロックンロール・バンドという印象。

 ヴォーカルの人は盛岡出身だそうで、MCもバリバリのネイティヴな東北弁であった。そのインパクトが強かったせいか、東北特有の情念の炎がメラメラと揺らめいているような迫力が。東北=情念というこちらの思い込みも多少は入っているかもしれないが。しかし曲はメロディアスで覚えやすく、普通にヒットしても良さそうな気さえした。

  • THE TACHOMETERS

 名前は知っていたけど、ライヴを見たのは(多分)初めて。3ピースのシンプルなパンク・バンド。ビート感は確かにパンクのそれだが、ギターのコードはフォークに近いような。メロディーは覚えやすいし、ノリも良いのでライヴはひたすら楽しい。

 ギターのタコ社長曰く、「もう酔っ払ってる。もっと早くやりたかった。くじ運が悪い!」そうで、ギターの出来に満足はできていなかったようだが、パンク・バンドらしいノー・フューチャーな感じは出ていたと思う。

  • THE WEEKENDER


 この日唯一の4人編成。三十路ではないヴォーカリスト(ドラマーもか?)がいる点でも異色であった。そのヴォーカリスト(若き日の三木のり平に似ているけど)のふてぶてしい態度が程よい緊張感を生んでいて、それまでの同年代故理解できる侘び寂び的雰囲気とは一線を画すものだった。ロックンロールにはこういう要素ももちろん必要だ。
 音はやはり初期パンクの影響が強いポップなロックンロール。個人的にも嫌いになりようのないサウンドで○。

  • THEE BAT

 実はこの日はトリのこのバンドを見に来たのだった。活動休止中のパピーズ、トモコ様が加入したバンドで、ギター、ベースのお2人も先日のNYLONのライヴでお会いしていたので、もちろんそれなりに期待はしていた。だがまさかこれほどとは。

 音が出た瞬間に漲る緊張感とエネルギーで、バンドの評価は概ね決まるものだ。THEE BATのサウンドには最初から狂気を孕んだ迫力があり、長時間のライヴでややダレ気味だった店内の空気を一変させる力があった。リフを主体にした曲構成が渋く、それまでメロディアスな曲を演奏するバンドが続いていたこともあって、インパクトは強烈。曲は「BATMAN THEME」などガレージ・バンドが好みそうな選曲だったものの、トモコさんのドラムがヘヴィなので、原始的なハード・ロックにも聴こえる。

 私も音楽評論家の末席を汚す身として、評価は慎重になるし、発言には責任を負う覚悟はある。知り合いだからといって贔屓目に見るつもりもない。公平に見てTHEE BATは最高のロックンロール・バンドである。今のメンバーになってからは初めて、バンドとしてもこれが3回目のライヴだということで、まだ荒削りな面はある。しかしコンセプトや方向性は充分伝わってくるし、狙っているところが正しいことも理解できる。これからライヴをどんどんやっていって欲しいし、音源もリリースして欲しいバンドだ。NYLONとツーマンで全国ツアーなんて実現しないかねえ。これは楽しみが増えたぞ。

 THEE BATはトモコさん以外の2人が都合で到着が遅れ、WEEKENDERとのみくじ引きを行なった結果トリとなったのだが、イベントとしてはTHEE BATがトリで正解だったのではないかな。三十路バンドの面々はどれも楽しいライヴを見せてくれたのは間違いない。ただ出演順が偶然にもほぼ理想的な流れとなったことが、成功の一因だったのは確かだろう。

【7/20写真追加】
 一部非常に暗い写真があるが、STATTO特有の点滅する照明のお陰でこうなってしまったのでご容赦。THEE BATの皆さま、お気に召しまして?