村上世彰のドンとやってみよう!



村上世彰の逮捕に思う2
 昨日の日記を書いてから丸1日と経たない内に村上氏は逮捕されてしまった。その前に行なわれた午前11時からの会見は私も見ていたが、誤解を恐れず言うならば、感銘を受けましたよ。
 今回村上氏が逮捕された容疑は証券取引法違反で、具体的には167条の規定に引っかかったとされている。

第167条 次の各号に掲げる者(以下この条において「公開買付者等関係者」という。)であつて、第27条の2第1項に規定する株券等で証券取引所に上場されているもの、店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの(以下この条において「上場等株券等」という。)の同項に規定する公開買付け(同項本文の規定の適用を受ける場合に限る。)若しくはこれに準ずる行為として政令で定めるもの又は上場株券等の第27条の22の2第1項に規定する公開買付け(以下この条において「公開買付け等」という。)をする者(以下この条において「公開買付者等」という。)の公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実を当該各号に定めるところにより知つたものは、当該公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実の公表がされた後でなければ、公開買付け等の実施に関する事実に係る場合にあつては当該公開買付け等に係る上場等株券等又は上場株券等の発行者である会社の発行する株券若しくは新株予約権社債券その他の政令で定める有価証券(以下この条において「特定株券等」という。)又は当該特定株券等に係るオプションを表示する第2条第1項第10号の2に掲げる有価証券その他の政令で定める有価証券(以下この項において「関連株券等」という。)に係る買付け等(特定株券等又は関連株券等(以下この条において「株券等」という。)の買付けその他の取引で政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)をしてはならず、公開買付け等の中止に関する事実に係る場合にあつては当該公開買付け等に係る株券等に係る売付け等(株券等の売付けその他の取引で政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)をしてはならない。当該公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実を次の各号に定めるところにより知つた公開買付者等関係者であつて、当該各号に掲げる公開買付者等関係者でなくなつた後1年以内のものについても、同様とする。

 普通の人なら最初の3行も読めば、それ以降を読む気力を失わせるに充分な文章だが、法文なんてこんなものだから仕方がない。今回のケースに当てはめると、ライブドアがフジテレビの経営権獲得を目指し、その親会社であったニッポン放送の株の取得に乗り出すつもりであることを、ライブドア幹部の宮内らから直接聞いた村上氏が、それを知った後にニッポン放送株の買い増しを続けたことが違法だということ。
 会見ではたまたま「聞いちゃった」事実であることを確か2度ほど強調していたと思うが、たまたまであろうと、意図的であろうと、知っていたというだけでインサイダー取引容疑を構成する要件には該当するというのが法律上の解釈である。
 ただしライブドアがあの悪名高い時間外取引ニッポン放送株を大量取得したのが2005年2月8日。その作戦を具体的に練り始めたのはそのわずか2週間ほど前だったとされている。ではライブドアがフジテレビを手中に収めようと意思決定したのはいつなのか、またそれを村上が知り得たのはいつなのかが問題になってくるが、堀江、宮内らが村上の元を訪れ「経営権が欲しい」「協力してください」などの意向を聞かされたのが同年1月6日、村上はこのことを知った以降ニッポン放送株の買い増しはしていない。「プロ中のプロ」と認識する村上が、それ以降の買い増しに違法性があることぐらいは気付いていたのだろう。ではこの場合のインサイダー取引の要件を満たす重要事実とは、前年の11月8日に堀江らが「ニッポン放送はいいですね、手に入ったらいいですね」と村上に言ったとされる件である。この時点では本当にライブドアニッポン放送株取得に動き出すとは思っていなかったため、買い増しを続けていたというのが村上の主張だった。
 このあたりの事実関係がどのようなニュアンスを持って行なわれたのかは分からないが、東京地検が握っている証拠によれば11月時点でライブドアは明確な意思決定がなされていたと判断されるらしく、たまたま「聞いちゃった」村上もそれを認め、容疑を受け入れたというのが今回の事件だ。言ってしまえばこれだけの話なのだ。
 私があっぱれだと思ったのは、堀江のように自分が無実であるという主張を曲げず、裁判で争う姿勢を見せるのではなく、逮捕前に記者会見まで開いてはっきりと罪を認め、全ては自分の責任だと謝罪したことだ。その釈明も変に感情的にならず、理路整然と説明して見せ、一切の責任転嫁も行なわなかったことは単純に偉いと思った。何らかの不祥事を起こした時、或いは経営破たんに追い込まれた時などの日本の経営者が、これほど潔い会見を開いたのは見たことがない。用意された原稿を棒読みして、後は土下座とか、酷いのになると現場の人間のせいにするとか。イヤなもの見せられちゃったなあと痛々しい気持ちになることが多い。
 あれだけの切れ者だから今後のことは計算しているだろうし、あっさり容疑を認める方向へ転換した背景には、村上ファンドのブレーン、経営の協力者、金主などへ掛かる迷惑を最小限に抑えるためとの見方もある(→こちら参照)。ファンドからは引退するにしても、今後何らかの事業に乗り出す際、出資者、協力者を募る上ではそうした方が得策なのだろう。
 ライブドアの事件と同様、今回も国策捜査によるものとの印象は拭えないし、根底にはやっかみがあるものと私は思っている。「儲けることはそんなに悪いことですか」と会見でも村上氏は言っていたが、くやしかったら村上以上に儲ければいいだけだと思う。少なくとも儲けている人は、儲けていない人より税金は払ってるのだし、儲けているからといって非難される必要はないだろう。


5/28新宿Red ClothでのDIESEL ANNライヴレポート
 ↑Smashing Magに投稿したら掲載してもらえましたよ。しかも写真付きだ。
 そのDIESEL ANNのファースト・アルバムHow Loud The Engine!『How Loud The Engine!』は本当に素晴らしい。ここ1週間ほど、コステロ&トゥーサンのアルバムと、これの2枚のみを交互に聴いている。日本語で歌うロックンロール・バンドが放つ久々のホームランという感じ。
 「SUGAR BREEZE」はロックンロールの歴史に刻まれるべき名曲だと思うし、「リリーのロック」のための効いたリズムは、久しく忘れていたものを思い出した。ああ、ロックってこうだったなと。また不謹慎だけど「森の人」は「森ビルの人」と解釈するとタイムリーで面白いぞ。
 先日のレコ発ライヴの時、マイティ・ムガルズのネモト・ド・ショボーレが「ホントに最高のアルバムなんで、みんな帰りに必ず買って帰ってください」と言っていたけど、その意見には100%同意する。個人的にも今年のベスト・アルバムの有力候補だ。