Lee Brilleaux Memorial@下北沢Shelter

Lee Brilleaux



 朝から病院、夕方帰宅し、急いで着替えてカメラを持って下北へ。早いものでリー・ブリローが亡くなって今年で12年。ワタナベマモルが音頭を取る恒例の追悼ライヴも(多分)11回目。
 私がこのイベントに足を運ぶのはこれで7回目か8回目だと思う。今まではフォトジェニックな出演者がいないのでチケットの整理番号がいつも遅かったのと、ヘラヘラ踊りながら見ていたかったので写真を撮ったことはなかったのだが、今年は整理番号12番と例年にない早い番号のチケットをゲットできたので撮影を決意。一度ぐらいは記録しておいても良いかと思ったので。
 この整理番号なら最前列に陣取れるかと思ったのに、会場に入ったら既に最前列は年季の入った女性ファンが荷物やら上着やらで占領して鈴なり状態。あちゃー、と思い仕方がないのでフロアに下りる階段の途中からステージを狙うことにする。
 今年は3バンドしか出演せず。オープニングは初出演の夜スト。

 このイベントはフィールグッズ・ナンバーを中心にカヴァーばかり演奏するのが恒例になっているので、夜ストもカヴァーだらけかと思いきや、いつものライヴと変わらずにオリジナルでスタート。彼らの場合はオリジナル曲がブルージーでいなたくて、パブ・ロック的要素が非常に強いので違和感は全く無いが。

 いつもながらのほろ苦いオリジナル曲を演奏した後、中盤でフィールグッズ・コーナーが設けられていた。この日のために10日前から練習していたという「Baby Jane」「I Can Tell」など4曲を披露。内3曲がジッピー・メイヨ時代の曲だったのが少々意外。ギブソンセミアコを弾くミウラ氏が、ソリッドなウィルコ・ジョンソン時代の曲を敢えて避けるのは分からなくもないが、かと言ってジッピー時代に集中する意図もよく分からず。単にギタリストとして惹かれるものがあったのかな。しかし私が耳目を引き付けられたのはギターよりミウラ氏のヴォーカルだった。
 長いことこのイベントを見ているが、リー・ブリローばりのブルースを歌ったのは多分ミウラ氏が最初である。粘りのある歌い方と低音部分の声質がハッとするほど似ていて、一瞬ブリロー先生が降りてきたのかと思った。

 そして後半はまた何事も無かったかのようにオリジナルへ。ミウラ氏は「緊張しねぇ〜〜〜」と不満げに漏らしていた。本人達には緊張しながら演奏するべきであるという固定観念があるのかもしれないが、見ている側としてはリラックスしたところが彼らの良さだと思う。

  • 赤羽ブリロー

 ここからは毎年お馴染みの面子。例年この日だけ結成されるこのバンドの実態は、変則ピーズである。正直なところあまり真面目に語ろうという意欲が湧かない。それは語るべきポイントが無いほど酷い代物という意味ではなく、頭を空っぽにして踊ったり歌ったりしながら見るのが最適のバンドだからだ。実際例年ならビールを片手に馬鹿笑いしているところ。

 本人は「まだ飲んでない」と言っていたが、どう見てもハルは既に出来上がっている感じ。「何だぁ、夜のストレンジャーズは。自分たちの曲ばっかりやりやがって…。さては売れようと思ってるな?」などと管を巻いているようなMCを連発し、いちいち可笑しい。

 曲は「Going Back Home」(だったかな)に始まり、大半がフィールグッズ・ナンバー。他にはチャック・ベリーなどオーソドックスなR&R、R&Bのカヴァーばかり。カメラを構えて冷静に見ているのがバカらしくなる程に最高の演奏だ。アビさんのストラトが文句なしに素晴らしい音で、前の方に出てきて弾くと良い感じのフィードバックがかかってこれまた素晴らしい。ハルはちゃんと歌ってはいるものの、終始足元に置いた歌詞を見ながらで、目線がずっと下に。あんたはシューゲイザーか。

  • MAMORU & THE DAViES

 トリは元締めでもあるこの人たち。今の面子になってからは初めて見る。今年はセッション・メンバーを入れず、レギュラーのDAViESでの演奏だった。

 マモル氏がスーツ姿で帽子を被らずにステージに立つのもこのイベントぐらいだろう。半分ほどの曲はギターを持たずハンドマイクで歌い、これもまたこのイベントならでは。もちろんリー・ブリローに敬意を表してのことだ。マモル氏はハープも非常に上手く、ここにも遺伝子が受け継がれていることを証明。

 赤羽ブリロー同様、御託を並べる必要を全く感じないイッツ・オンリー・ロケンロー。何故かフィールグッズの曲は少なかったような。ただしよく覚えていないけれど。はっきり覚えているのは中盤で「I Got A Woman」「Too Much Monkey Business」「Please Don't Ever Change」などを連発したこと。これらはロックンロールのスタンダードであると同時に、ビートルズハンブルグ時代にレパートリーとしていた曲でもある。ハンブルグ時代のビートルズと言えばガレージであり、元祖パブ・ロックとも呼べるバンドであって、恐らくはそれを意識しての選曲であろうが、ロックンロールの濃厚なダシが効いた演奏は仮にジョン・レノンに聴かせたとしても絶賛したと思う。こういう単純なコードの曲を演奏した時にこそ分かる、そのバンドの本領というものがある。彼らは間違いなくロックンロールの超エリート集団だ。遥か異国の地にこんな息子達が生まれていたなんて、リー・ブリローも草葉の陰で喜んでいることだろう。泣けてくるほどに素晴らしい演奏であった。

 アンコールはこれもお馴染みとなった大セッション。この日の出演メンバーがずらりとステージに並び、「Violent Love」「She Does It Right」「Bonie Moronie〜Tequilla」を演奏。しかしこの2〜3年アンコールはこの3曲に固定されているんじゃないか?まあ硬いことを言うのは野暮というもので、無条件に楽しいセッション。「Tequilla」ではお約束のダイブもあり、今年も大盛況のうちに幕。


 本音を言えばこういうイベントは毎週開催してくれても良いぐらいだが、そうもいかないだろうからまた来年を楽しみに待つこととしよう。


 例によって写真は現像→スキャン→レタッチという行程を経なければアップできないので、また後日。

  • 4/12写真追加

 本文中にあるように、ステージから離れた位置からの撮影だったため基本的に同じ方向からしか狙えず、アングルが同じ写真ばかりで申し訳ない。しかもステージ直下から撮るつもりで来ていたので、28-70mmのズームレンズしか持っていなかったため、大雑把な描写になってしまいました。まあ、単なる記念写真ということで。
 最下段右は夜ストのミウラ氏がダイブした瞬間。恐らく彼の人生において初めてのダイブであろう。貴重なひとコマである(笑)。