来日はやっぱり延期?!



 今日もザック・コーポレーションから公式の発表はありませんでした。ホームページも更新された様子は無し。
 しかし「GERU」と名乗る方が、1月28日付日記のコメント欄に次のような書き込みをしてくれました。書き込まれたのは本日午後6時53分。

2月2日、18:30、ザックに確認しました。コステロのコンサートは中止ではなく、延期が確定したとのことです。私、都内に住んでいないのでホテルも予約していたのに・・・。新幹線チケットも全てキャンセルです。明日以降、払い戻しの手続きに入ると電話に出た女性が話してくれました。かなりショックです。

 既にコメント欄に返答した通り、この書き込みに私が気付いたのは午後7時20分ぐらいでした。ザックの営業時間は午後7時までとホームページにあるので、確認の電話を入れることはできませんでした。
 書き込まれた内容が事実だとすれば、明日には新聞と、ホームページにて告知がなされるはずです。正確な情報は明日まで待ちましょう。しかしザックはどうして情報を小出しにしてしまうのでしょう。一斉に流さないと、先週土曜のような混乱が起きてしまうのに。




◆『The River In Reverse』へ向けての予習と復習 その1
 エルヴィスのファンには残念なニュースが届きそうな気配になってきた今日この頃、少しでも気分を転換するには未来に目を向けるべきではないかと気が付いた。近い将来の最大の楽しみと言えば5月に発売が予定されている『The River In Reverse』だ。アラン・トゥーサンとの共演作とされるこのアルバムはどのような内容になるのだろうと予想しつつ、周辺情報を整理し、エルヴィスはもちろんのこと、共演者であるトゥーサンの関連作品などを洗い出している内に、なかなか面白いことが分かってきたので、音が届く前に書き記しておくことにした。予想の精度に関しては特に意識せず、音楽的に両者がコラボレイトすることで何が起きるのか、希望も込めての連載企画、第1回。
エルヴィス・コステロアラン・トゥーサンの馴れ初め
Punch the Clock (Bonus CD) (Dlx)
 ファンならご存知だろうが、実はエルヴィスとトゥーサンの共演は今度が初めてではない。最初に両者が共同で作品を作ったのは83年9月、ヨーコ・オノのカヴァー「Walking on Thin Ice」のレコーディングでトゥーサンをプロデューサーに迎えたのが最初だ。この経緯については現在発売されている『Punch The Clock』のリイシュー盤の付属ライナーに詳しい。ジョン・レノンが生前計画していたというヨーコ・オノの曲のカヴァーだけを集めたアルバム『Everyman Has A Woman』への作品提供を、ヨーコ・オノから直々に依頼されエルヴィスは快諾する。しかしスケジュールの都合でレコーディングは83年の全米ツアー中に行なわざるをえず、公演日、移動日以外でレコーディングが可能だったのはニューオーリンズかメンフィスのどちらかに滞在している時だけだった。そのためエルヴィスはヨーコ・オノの事務所に連絡を取り、プロデューサーとしてニューオーリンズならアラン・トゥーサンを、メンフィスならウィリー・ミッチェルを呼んで欲しいと頼んだ。結果、アラン・トゥーサンを迎えてのニューオーリンズ録音が実現した。ウィリー・ミッチェル側もレコーディングには意欲的だったらしく、もしトゥーサンの都合が悪ければ、この時のレコーディングはウィリー・ミッチェルと行なっていただろう。
 とにもかくにもニューオーリンズのSea Saint Studio(トゥーサン所有の伝説のスタジオで、ニューオーリンズ・ファンクの傑作の数々が産み出された。現在はBig Easy Recording Studioと改名。)にてレコーディングは行なわれ、この時期のエルヴィスの作品としては一風変わった仕上がりになっている。原曲がヨーコ・オノの作品ということもあるが、辛うじてニュー・ウェーヴという言葉が生きていた時期に、トゥーサンらしいアレンジを融合させたミスマッチ加減が楽しい。エルヴィス自身も認めているが、TKOホーンズのフレーズはトゥーサンの仕事以外の何物でもないし、イコライジングされたエルヴィスのヴォーカルも、トゥーサンらしい浮遊感漂うものである。
 エルヴィスにとってトゥーサンは雲の上の存在に等しい、生ける伝説であったことだろう。しかし初めてのコラボレイトは企画作品への楽曲提供という形であったため、顔合わせ以上の大きな成果を残したとは言い難い。その数年後、今度は自身のオリジナル作品にて、しかもアルバム中のハイライトとも言える大きな成果を残す共演が実現する。『Spike』での「Deep Dark Truthful Mirror」だ。
Spike (Bonus CD)
 アトラクションズを解雇し、レーベルもワーナーへと移籍、心機一転を図ったエルヴィスは87〜88年にかけて世界各地を巡り、数多くのミュージシャンとセッションを重ねながらアルバムを制作した。その内ニューオーリンズでのセッションによって録音されたのが「Deep Dark Truthful Mirror」で、トゥーサンはピアノで参加している。エルヴィス自筆のライナーによれば「驚くべきピアノによってほぼ彼一人で下地を作った」とある。確かにこの曲におけるピアノの役割は楽曲のカラーを決定付けるもので、後にダーティー・ダズン・ブラス・バンドによって重ねられたブラス・セクションと相俟って、実にニューオーリンズらしいサウンドに仕上がっている。エルヴィスがザ・バンドの大ファンであることは有名だが、トゥーサンがアレンジを担当した『Cahoots』あたりに入っていてもおかしくはない出来に、エルヴィス自身感激したに違いない。2枚組エディションのボーナス・ディスクに入っている同曲のデモ・ヴァージョンと比較してみると一目瞭然だが、この曲を味わい深い名曲たらしめたのは、間違いなくトゥーサンの功績だ。トゥーサンのピアノがこれ以上いじりようが無いほど完成されたものだった証拠に、94年のアトラクションズ再編ツアーでこの曲を演奏した際、あのスティーヴ・ナイーヴがトゥーサンのフレーズをなぞって弾いたぐらいなのだ。
 エルヴィスとトゥーサンの直接のコラボレーションは、現在までこの2曲を残すのみだ。しかし幅広い種類の音楽を貪欲に吸収するエルヴィスにとって、トゥーサンや、ニューオーリンズの音楽は有形、無形の影響を及ぼしている。その辺の話はまた次回に。