5th element will@新宿LOFT

k_turner2006-01-16



 新宿LOFT30周年記念のイベントで、出演はズクナシ、SUPER Goooooood!、そして金子マリ率いる5th element will。13日の日記で書いた通り、HOT STUFFのメルマガ会員の無料招待を利用して行って来た。
 ライヴハウスというところは換気が良くないし、狭い空間に大勢の人が集まるだけあって、独自の匂いがある。大抵はタバコとアルコールが入り混じった匂いで、観客に女の子が多いと化粧の匂いが加わったりする。この日LOFTに足を踏み入れてまず、満員電車の匂いがすることに気付いた。嗅ぎ慣れない匂いに驚きフロアを見渡すと、40代はおろか50代の姿も目立つではないか。ライヴハウスでは極めて珍しいスーツ姿もちらほら。そうか、これは加齢臭だ。比喩的に言っているのではなく、本当にそんな匂いがしたのだ。
 観客の入りはざっと100人ぐらいだろうか。招待メールが流れるぐらいだから、寂しいものであることは予想できたが、LOFTで100人は寂しいな。ステージ前の一番低いフロアにまでテーブルが出ているのは初めて見た。

 開演時間を15分ほど過ぎた頃に着いたら、もう演奏していた。ニュー・ロックとかブルース・ロックという言葉を思い出させる女性4人組。メンバーは20代半ばぐらいではないだろうか。若いのになぜこんな音を?
 明らかにジャニス・フォロワーと思われるヴォーカルは迫力のある歌い方をするし、バンドの演奏力もなかなかのものなのだが、いかんせん個性を感じない。このような音は大昔から何度も何度も繰り返されてきたのに、何故今さら取り組むのか、その必然性が見えてこないため、魅力に乏しい。残念ながら。
 まあ、がんばってね以上の感想は無く、生暖かい目で見守った。

  • SUPER Goooooood!

 元SUPER BADの高田エージ率いるバンド。初めて見たのだが、ギターが高田を含めて3人、ベース、ツインドラムに、3人のブラス、コーラスが2人の大所帯なのには驚いた。もう少しで渋さ知らズじゃないか。
 SUPER BADはモッズ風のビート・バンドで、シャープなビート・ナンバーとファンクを掛け合わせたところが好きだった。ライヴも何度か見に行ったことがある。あれからおよそ15年。SUPER BAD解散後も高田エージはソロなどで活動していることは知っていたが、ライヴは全く見ていなかった。
 このSUPER Goooooood!はミディアム・テンポのファンクに特化したようなバンドだった。高田はSUPER BADの頃からファンクを得意としていたので、それ自体は意外性はない。ただ大半の曲がひとつのリフを反復するだけの構成だった点が淡白で大味に感じられた。ジェームス・ブラウンだって、ジョージ・クリントンだって、曲の基本的な構成は同様だが、そうした大御所ほどのダイナミズムというか、脂ぎった部分が無いのでグルーヴが貧弱に感じられてしまう。
 加えてコール&レスポンスを執拗に繰り返して無理矢理盛り上げようとしていたのも、興醒めした要因。レスポンスの強要は逆効果なのに。こちとら今まで何千というバンドを見てきた、言わばベテランの観客である。音が良ければ放っておいても叫んだり飛び跳ねたりして表現するのだから、自由にさせてもらいたいものだ。
 何度も「盛り上がってるかーーっ!!」と聞かれるので、「それほどでもないぞーーっ!!」と返しておいた。

  • 5th element will

 メンバーは金子マリ(vo)、北京一(vo,g)、大西真(b)、石井為人(key)、松本照夫(ds)、岩田浩史(g)。まずヴォーカル抜きのメンバーでジェフ・ベック風のインストを演奏。歴戦の猛者という感じの彼らはさすがに上手く、思わず聴き入る。岩田浩史はSUPER Goooooood!でも弾いていた。続いて北京一が登場し、パントマイムを披露した後でギターを持ち、歌う。北は元ソー・バッド・レヴューのヴォーカリストで、見るからに奇人。
 そして金子マリが登場すると、ステージに花が咲いたような明るさが。別に照明が強くなったのではない。ステージ映えというか、立っているだけで存在感が違うのだ。これは努力して身に付けられるものではない。そして歌声の太いこと。比較しては可哀想だが、ズクナシのヴォーカリストとはスタイルは近くても、訴求力は段違いだ。日本語詞の「A Change Is Gonna Come」やRCサクセションの「ミッドナイト・ブルー」が素晴らしかった。
 私が金子マリの生歌を聴いたのは、80年代後半にRCサクセションのライヴでコーラスとして参加していた時が最初。ソロのコーナーもあって、「Heart of Gold」などを歌っていたと記憶する。「はぁ、これが下北沢のジャニスか」と感慨深げに眺めたものだ。20歳そこそこの私にとって、しかも80年代という時代の空気の中で聴く金子マリは、歌唱力こそ認めるもののどうしてもアウト・オブ・デイトな歌い手に映った。それから20年近い時間が経過したのに、衰えるどころか当時以上に輝いて見えるのは何故か。他のメンバーもそうだが、ロックをやること自体が反社会的な行為だった時代のミュージシャンが撥ね付けなければならなかった障害たるや、想像を絶するものがある。その時代をくぐり抜けて来たミュージシャン達の生命力は伊達ではなく、彼らがしぶとく生きているのに対し、逆にこちらが肉体的、精神的に衰えてしまったのだろう。
 この日は(西新宿にあった頃の)新宿LOFTがオープンして30周年を記念するイベントの第1弾で、76年の開店の日のステージを務めたのが金子マリバックスバニーと、ソー・バッド・レヴューだったそうだ。30年前の出演者が今もステージに立っているというだけで感動的だが、それ以降に登場したミュージシャンより溌剌としていたのは驚異的ですらある。金子マリより若い世代のひとりとして、我が身の不甲斐なさを恥じ、襟を正して生きていこうと思った。今年のテーマは打倒、50代!だな。