◇ニューミュージックマガジン1975年12月号
 をディスクユニオンで購入。735円(税込)のところ、半額セールで368円也。パブ・ロックの特集記事があることを知り、興味を抱いたのだが、何しろ30年前の雑誌である。読み始めたら想像以上に面白くって、もう。

 まず広告に時代を感じる。この時代はキングが洋楽の配給を積極的に行なっており、クリサリス、A&M、ロンドンなどの日本盤がキングからリリースされていたことがわかる。この月のクリサリスレーベル一押しタイトルはジェスロ・タル天井桟敷の吟遊詩人』とアルヴィン・リー『ポンプ・アイアン』である。すごい時代だ。
 この頃はHiの配給をロンドンが行なっていたようで、ジャケットにロンドンのロゴが入ったアル・グリーンの『アル・グリーン・イズ・ラヴ』が「最新盤!」として大きく掲載されている。そのコピーが振るっているので、ちょっと長いけど引用。

愛を売る男… アル・グリーン
前作「シャ・ラ・ラ」に続く10ヶ月ぶりのLP。本格的なソウル・ファンのみならず、アル・グリーンのとりこになっている全世界の女性、ポップス・ファン、今流行のファンキーファン。皆が待っているLPがこれだ。
そのタイトルは「アル・グリーン・イズ・ラヴ」。今アメリカの男性ソウル・シンガーで最高のギャラをとる男。発表するアルバムが、すべてミリオン・ダラーになる男。女性をキャー・キャー言わせて5年にもなる男。他のソウル・シンガーがアルバム発売を待つ男。そのアル・グリーンの最新LPだ!!
どんな内容かまずは聞いてみなくては…

 途中もいちいち笑いがこみ上げる表現が見受けられるが、最後の1行で大爆笑。宣伝なのに聴いてなかったんだ。
 広告ページはもちろんレコードが大半を占める。新譜としてこの号に掲載されているのはエリック・クラプトンの『ワズ・ヒア』、レインボー『銀嶺の覇者』、クロスビー&ナッシュ『ウィンド・オン・ザ・ウォーター』、ジョン・レノン『シェイヴド・フィッシュ』、サディスティック・ミカ・バンド『ホット・メニュー』、ヴァン・マッコイ『ディスコ・キッド』、スタイリスティックス『ユー・アー・ビューティフル』、ジョン・フォガティ『ジョン・フォガティ』、ポール・サイモン『時の流れに』、アート・ガーファンクル『愛への旅立ち』、ザ・フー『ロックンロール・ゲーム』、ダウンタウン・ブギ・ウギ・バンド『ブギ・ウギ・どん底ハウス』、甲斐バンド『英雄と悪漢』など。
 ではこの中で見開き2ページを使った一番大きな広告を出しているのはどのアルバムでしょう?多分一発で当てられる人はいないと思う。正解は何とクロスビー&ナッシュでした。これはこの号が発売された直後に来日公演が決まっていたことも関係があり、来日記念盤としてのリリースだからだろう。その来日公演は武道館2回を含む全国5公演。これも今となっては信じ難い。
 因みにザ・フーはこの中では一番扱いが粗末で、ダン・フォーゲルバーグと同じサイズの1/2ページでこっそり載せられているだけである。やはりこの当時の日本ではマイナーなバンドだったのだな。

 この頃のレコード会社の広告は新作アルバム中心ではあるものの、数ヶ月前の新譜、ベストセラータイトル、シングルなどにも広告を出していることに驚く。CBSソニーなどは「'75年、キミの魂を燃えあがらせたアルバムはどれだ!!」と題して、75年10月現在のCBSソニーから発売中の洋楽40タイトル(ピンク・フロイドからミッシェル・ポルナレフまでと実に幅広い)をピックアップし、「ロック&ソウルベスト40コンテスト」というキャンペーンを行なっている。これは対象の40タイトルから3つを選び、そのレコード番号(広告に明記されている)を「官製ハガキ」に書いて送ると、抽選で500名にアーティスト・カレンダーが当たるというもの。このキャンペーンのために再リリースしたタイトルではないので、購入者特典ではないのだ。このキャンペーンでどの程度の販促効果があったのだろうか。
 その他、輸入レコード店とロック喫茶の広告が多いことも目を引く。ロック喫茶の広告などそれだけで文化財級だ。新宿のローリング・ストーンも今年閉店したし、ここに広告を出している店で現存するのは渋谷のBYGぐらいだろう。

 輸入レコード店に関してもその辺は似ており、青山のパイド・パイパー・ハウス、渋谷西武地下のCISCO、新宿のディスクロード、オム、キニー、吉祥寺の芽瑠璃堂など、みんな移転したり閉店したりした店ばかり。レコード店を30年続けるって大変なのね。一方ディスクユニオンの渋谷店オープンの広告があるのが面白い。これによると渋谷店はユニオンの4号店(ここ以外の3店は新宿店、御茶ノ水店、御茶ノ水丸善店)であり、場所は公園通り沿い、パルコの対面で今バナナレコードがあるあたりにオープンしていることが分かる。知らなかったなー。

 広告の話だけで随分長くなった。肝心の記事の内容についてはまた明日。