Sex Beatles "Well You Never.... c/w Fatal Fascination" (Charly Records)



 7インチ、それは夢。それは愛。たった数分の楽曲がもたらす可能性を最も効果的に伝えるA面と、オマケ的ではありながら意外なインパクトを期待させるB面が織り成すハーモニー。直径7インチの円盤に刻まれた美しくも甘い世界。手持ちの7インチ盤の中から、不定期に掲載していく。別名ネタ切れ救済企画、またはレコード整理口実企画とも言う。私の個人コレクションからピックアップするので、ガレージ、パンク、パブ・ロック、パワー・ポップなどに偏る可能性は高いし、全く気まぐれに選ばれるため、系統立てたカタログにはならないことを予めお断りしておく。
 記念すべき(笑)1回目に取り上げるのは、Sex Beatles。世界投げやりバンド名ランキングというものがあれば、間違いなく上位に入るであろう。Stone RosesとかVelvet MonkeysとかDeep Jimi Zep Cream(実在)なども中々にスゴイが、Sex Beatlesに比べればまだまだ思い切りが足りない。
 ふざけたバンド名に相応しく、バンド自体は短命だったようだ。このバンドのこれ以外の作品は見たことがない。1979年にCharly Recordsというロンドンにあるレーベルから発売されているが、このレーベルもあまり聞いたことはない。購入に至った理由はまずそのバンド名、そして裏ジャケに「PRODUCED BY HITCHCOCK」とクレジットがあったからだ。HITCHCOCKの名前でまず思い出されるのはアルフレッドではなく、ロビンである。もしかしてロビン・ヒッチコックがプロデュースしたのかと思い、それほど安くはない代金を払ったのであった。聴いてみるとロカビリーをニューウェイヴ風に味付けした「Well You Never....」はなかなかキャッチーで悪くない。つんのめりそうなビートはSoft Boysにも相通じるところがある。これは本当にロビン・ヒッチコックが手掛けたのでは…。7インチを集め続けているとこのような発見はしばしばあるものだ。確証を得ようとネットで検索したところ、ロビン・ヒッチコックのMLのログに次のような投稿を発見。

From: SPIFFINGNY@aol.com
Date: Thu, 21 Mar 1996 08:20:09 -0500
Subject: Sex Beatles

We checked up on the Sex Beatles single. It was said to have been
Hitchcock by everyone in London and New York but when it was brought to The
Man in October of last year, he denied all knowledge of it and said e'd never
seen or heard of it before. It's a fair single anyway, and the A side does
sound a bit on the Hitchcock-ish side, but alas, it is not he.
Carl, SpiFFinG

 orz この音を聴けばロビン・ヒッチコックを知る者が疑うのも無理はない。同じように色めき立ったのは私だけではなかったのだ。しかしまあ、はっきりと否定されてスッキリした。アルバムのようにライナーや詳細なクレジットが無いので、こうした妄想を逞しくできるのも7インチならではの楽しみである。因みにこの7インチ、B面は田舎のロキシー・ミュージックみたいでまるで面白くない。