ROCK'N'ROLL FAN CLUB@新宿Red Cloth



 愚痴と言い訳から始めていいですか?ダメだと言われても始めますけどね。この日は6時開場、7時開演だったので撮影する予定だった私は5時半ごろに新宿に到着してフィルムを購入後、開場と同時に会場に入って撮影ポジションを確保するつもりだった。遅れて行くと人がギッシリでとても撮影できないので。まあ、これはいつものこと。
 ライヴハウスで撮影する場合、私はフジのISO800のフィルムを使い、1/90のシャッター速度優先で撮っている。大抵のバンドはこれで足りるのだが、今日は人並み外れた素早い動きで知られるNYLONを撮らねばならない。1/90のシャッター速度ではブレまくってしまうので、もう一段速い1/125のシャッター速度が必要になる。しかしそうするとISO800のフィルムでは感度が低くて露出が足らなくなってしまうのだ。一度苦い経験をしているので、以来NYLONを撮る時に限ってはワンランク上のISO1600のフィルムを使うことにしている。因みにISO1600のフィルムはカメラの専門店以外ではまず手に入らない代物だ。
 で、予定通り新宿に着いてRed Clothへ向かう途中で東口のビックカメラへ立ち寄った。ところがカメラの売り場の主役は完全にデジタルカメラで、フィルムのコーナーは一番隅にひっそり置かれており、狭いスペースにはISO1600のフィルムが無かったのだ。東口ではここが一番大きな売り場面積を持つカメラ屋なのに。開場時間が迫っており、限られた時間の中で思い出せる限りの東口のカメラ屋を当たったが、どこにも在庫は無し。歌舞伎町の手前にあったカメラ屋なんて店ごと無くなっていた。西口方面まで足を延ばしているような時間はなく、仕方がないのでISO800のフィルムを購入してRed Clothに辿り着いたのが6時10分ぐらい。中に入ると一番乗りでやんの。しかもその状態が10分ほど続き、6時半を過ぎたあたりからポツポツと客が入り始めたものの開演時間になっても50人ぐらいしかいなかった。Red Clothでこの動員はかなり寂しい。もちろん撮影ポジションなど楽々確保。これが分かっていれば目当てのフィルムを買ってこれたのに。
 という訳で、以下に載せた写真は全てISO800のフィルムを使用。NYLON以外のバンドは1/90のシャッター速度で、NYLONのみ1/125で撮影している。ご覧の通り、NYLONだけやや暗い写真になっているのはそのためだ。これでも画像ソフトでかなり補正したのだが。ついでに言えばRed Clothの照明は後ろと斜め後ろからしか当たっておらず、基本的に逆光である。しかも数機しかない照明はスポット的に当たるものばかりで、ステージの一部分だけが明るいのだ。ドラムがセッティングしてある場所など、終始暗いままである。これは撮影する立場から言わせてもらえば泣きたくなるほどの悪条件だ。ライヴの撮影は基本的にフラッシュを使わないことにしているので、どうしても人物の正面が影になってしまう。写真を知っている人ならもっと明るいレンズを使えば良いのにと思われるだろうが、私だってできることならそうしたいです、ハイ。でもレンズはこれしか持ってないのです。
 写真の出来にはかな〜り不満があるものの、何とか見られるものだけチョイス。長々と書いた言い訳をお含みおきの上、ご覧いただきたい。


Midnights

 オーソドックスなロックンロールをやる3ピース。あまりにもオーソドックス過ぎて、印象に残らなかった。言い換えれば小さくまとまっていて、面白くない。卑屈なMCは×。ロックンロールはもっとふてぶてしくないと。


Boy Friends

 「土曜の夜はロッケンロー!!」でお馴染みのボーイフレンズである。ルーズでブルージーな音は相変わらずで、50〜60年代のロックンロールのフォーマットの上で遊んでいるかのような、どこか捉えどころのない飄々とした感じも相変わらず。
 「ジョン・レノンも信用しない/キース・リチャーズも信用しない/セックス・ピストルズも信用しない/…だけど大好き〜」こういう物言いがこのバンドの全てを表していると思う。もちろん私はこのバンドが大好きである。


NYLON


 2ヶ月ぶりの東京でのライヴ。私にとっては長い長い2ヶ月であったが、普通に考えてこの程度の期間でそれほど大きな変化があるはずはない。それはつまりいつも通り凄まじいライヴであるということでもある。
 言うなればNYLONのライヴはカオスである。それ以外に的確に形容する言葉を私は持たない。毎度毎度言っているように、初期パンク、ガレージ、モッズ、パブ・ロックなどの要素を取り入れた音楽性そのものは決して目新しくはない。そんなバンドは掃いて捨てるほど世に存在するにも関わらず、強く魅かれるのはNYLONが唯一無二のライヴを行っているからだ。ロックンロールの形式を持ちながら、超人的なパフォーマンスによってもたらされる感動は、緻密に描かれた曼荼羅を見た時とか、9秒8のタイムを記録した100メートル走を見た時とかに受ける感動に似ている。人はここまでできるのかという驚きを伴うのだ。



 これも毎度言っていることだが、どちらかと言えば大人しい子たちが、一度ステージに上がるとこうも凶暴になってしまう不思議。しかしそこにある狂気が理解できるからこそ感銘を受けるのである。
 こんな文章と写真より、NYLONの凄さを如実に伝える映像があるので、ぜひこちらも見ていただきたい。以前も紹介したTot-Channelより→こちら
 これを見て何も感じないのであれば、あなたは終生ロックンロールとは無縁の人生を歩んでください。実際のNYLONのライヴは見たことがないけれど、この映像には舌を巻いたという方、次はぜひ会場に足を運びましょう。NYLONと同じように素晴らしいライヴをやっていながら、何らかの事情で解散してしまったバンド、解散しないまでも音楽性や内容が変わってしまったバンドを私はいくつも見てきた。NYLONだってそうならないという保証はどこにもないのである。


The Mighty Moguls

 今のメンバーになってからは初めて見た。典型的な東京のガレージ・バンドで、60'sスタイルのトラッシュ・サウンドを忠実に現代に伝えている。形式を超えるようなものではないが、スタイルとは確立されたものだけに強いという側面もある。演奏は手堅く、3人編成とは思えないほど、音に厚みと迫力がある。ネモト・ド・ショボーレのギターは、ガレージ・バンドにおけるお手本だ。


 最終的にこの日の動員は多く見積もっても80人ぐらいだったろうか。この面子としてはあまりにも少ない。ロックンロールが好きな全世界45億人の皆さんはこの日何をしていたのだろう。メタモルフォーゼに行っていた人と、小銭の入った瓶を持って武道館へ行っていた人と、浅草サンバカーニバルへ見物、もしくは出演しに行っていた人、それ以外はRed Clothに集合しなきゃダメじゃないか。