『Cover Song Series Vol.1』全曲解説&予想



 10/8発売予定のNYLONのニュー・アルバム『Cover Song Series Vol.1』については、先日CDJournalで取り上げられ、ここでも紹介した。しかし今日現在NYLONのオフィシャルサイトにも、発売元のTIME BOMB RECORDSのサイトにも、このアルバムに関する情報がアップされていない。ホントに出るんかいなと多少懐疑的になりながらも、待ってる間が暇なので勝手に全曲解説。現時点ではNYLONのヴァージョンが聴けないので予想付きだ。
 実はmixiのNYLONコミュニティにも書いたネタなのだが、加筆の上再利用。情報に飢えているNYLONファンへの一助となりますように。

1. Gibson Martin Fender(パイレーツ)

 ジョニー・キッド&パイレーツはブリティッシュ・ビートの元祖と言ってよいバンドである。ポール・マッカートニーロジャー・ダルトリー、ヴァン・モリスンらも彼らのファンだった。中でもギタリスト、ミック・グリーンの奏法に魅了されたのがドクター・フィールグッドウィルコ・ジョンソンテレキャスターを拳で叩くようなカッティングから生まれるゴリゴリとした硬い音と、リードとリズムを同時に弾くスタイルは、ウィルコを経由してアンディ・ギル(ギャング・オブ・フォー)、アベフトシ(ミッシェル・ガン・エレファント)ら多くのギタリストに影響を与えた。その遺伝子はシマノにも確実に引き継がれている。
 この曲は1976年に再結成後、最初のパイレーツのアルバム『Out Of Their Skulls』に収録。シャッフルのリフと途中のソロでミック・グリーンのスタイルが堪能でき、タイトル通りギタリストのためにあるような曲。NYLON版もシマノのギターが炸裂することが予想される。

2. Nasty Nasty(999)

 70年代に登場したロンドン・パンク一派の中でも、攻撃性は希薄で、キャッチーなメロディーや、ポップで厚みのあるサウンドを得意としたバンド。中心メンバーのニック・キャッシュは美術教師だったイアン・デューリーの教え子であったせいか、パブ・ロック・バンドとして語られることもある。しかしメジャー・レーベル移籍後のファースト・シングル(通算では2枚目)であるこの曲は、初期の彼らの姿を伝えるスピードのあるパンク・ナンバー。この疾走感はNYLONとも共通したものであり、選曲のセンスを称えたい。タイトルを連呼するサビは覚えやすく、ライヴでやったら盛り上がりそう。
 オリジナルはシングル(左)のみの発売だったが、2003年に出たリイシューのファースト・アルバム(右)にボーナス・トラックとして収録。

3. In The Street Today(ザ・ジャム

 ジャムはシマノが10代の頃から好きだったとインタビューで語っていたので、相当思い入れがあったのだと思う。言わずと知れたネオ・モッズの代表的存在で、NYLONがいつも着ているモッズスーツもジャムからの影響を見ることはたやすい。
 この曲はセカンド・アルバム『This Is The Modern World』のB面1曲目に収められている。『In The City』と『All Mod Cons』の間に挟まれて、ジャムとしてはやや印象の薄いアルバムながら、ジャムのというかポール・ウェラーの青臭い部分がしっかり刻まれた隠れた名曲。NYLONが取り上げるのも納得。

4. Palisades Park(フレディ・キャノン)

 フレディ・キャノンはオールディーズのフリークには馴染みのあるマサチューセッツ州出身の白人シンガー。この曲は1962年に全米3位を記録した彼の最大のヒット曲で、ビーチ・ボーイズ(『偉大なる15年』収録)、ラモーンズ(『Brain Drain』収録)もカヴァーしていることで知られる。CD Journalで取り上げられた記事には「デヴィル・ドッグスへのオマージュ」とあるようにデヴィル・ドッグスも取り上げていて、ラモーンズ以上にテンポの速いガレージ・ロッキンなナンバーに仕上げている。NYLONのヴァージョンもこれに近いか?

5. Get On(HURRIGANES)

 このカヴァーアルバムで唯一知らないバンドであった。ハリゲインズと読むのかな?調べたところ70年代初頭から活動するフィンランドハード・ロック・バンドで、地元ではフィンランドのロック黎明期を代表するバンドと評価されているようだ。この曲を収録した『Roadrunner』(1974年)というアルバムはCD化されていないらしく、入手困難。日本ではもちろん、英語圏でもあまり知られていないバンドで、ネットで検索しても出てくるのはフィンランド語のページばかりなのには参った。それでもこの曲のオリジナルを何とかして聴こうと探したところ、数日かけてやっと聴けるところを発見。良い時代である。それがこちら(要Quicktime)↓
http://www.music.helsinki.fi/research/geton/corpus/geton-8bit.au
 ブギー調のヘヴィなロックンロール。それにしてもこんな曲をどこから見つけてきたのか。因みにアキ・カウリスマキ監督の映画で有名になったフィンランドのバンド、レニングラードカウボーイズもHURRIGANESの信奉者で、アルバム『We Cum from Brooklyn 』でこの曲をカヴァーしている。

6. She's A Windup(ドクター・フィールグッド

 パブ・ロック好きには説明不要かと。パンク勃興前のロンドンを席巻したビート・バンドで、この曲はウィルコ・ジョンソン脱退後の最初のアルバム『Be Seeing You』に収録されている。新ギタリスト、ジッピー・メイヨーがフィーチャーされたアップ・テンポのロックンロールで、ウィルコ時代とは異なるポップな感覚で彩られた名曲。第2期フィールグッズの代表曲でもあり、現在のフィールグッズのライヴでもよく演奏される。シホのベースはジョン・B・スパークスのスタイルに通じる部分があると前々から思っていたけれど、この曲でどんなフレーズを弾いているのか楽しみだ。

7. Nowhere Man(ザ・ビートルズ

 ここに収録された曲では最も有名な曲だろう。従来のNYLONの音楽性を考えるとちょっとポップに寄り過ぎとも思える曲だけに、意外な選曲。メロディーの明るさとは裏腹に内省的で暗い歌詞、そしてコーラスとハーモニーが曲の肝でもある。これらをNYLONがどう料理しているのか、ある意味最も楽しみな曲でもある。

 なおこのカヴァーアルバムは昨年秋、オリジナル・ドラマーであるkaccyの脱退後、現ドラマーのマサオが加入する前の時期にレコーディングされている。ドラムを担当したのはパピーズのトモコのようだ。彼女はこのために呼ばれたヘルプとのこと。パピーズの方も現在無期限活動停止中なので、NYLON、パピーズ双方のファンにとっても貴重な音源となる。