忌野清志郎@渋谷AX

k_turner2004-12-25



 恒例のクリスマス・ライヴ。RCサクセション時代と違って、近年は必ずしも毎年開催しているわけではないものの、夏の野音とクリスマスのライヴはファンにとって今なお年中行事である。武道館でこそないが、この日のAXは超満員。やはりスタンディングのライヴはこれくらい入ってないと。2階席には筑紫哲也の姿も確認。
 去年からバッキングを務めるナイス・ミドルとニュー・ブルー・デイ・ホーンズがこの夜も盛り立てる。ジェームス・ブラウンのショウを真似たオープニングもすっかり定着した。「50回以上のクリスマスを知っている男、忌野清志郎!」のMCに続き、トナカイとサンタクロースの衣装の黒子4人によって巨大な箱(クリスマスプレゼント仕様)がステージ中央に運び込まれ、イントロに合わせて中から清志郎登場。1曲目は「Midnight Blue」。懐かしい。
 こうした半ばバカバカしい演出も、ファンにとってはお馴染みであり、むしろこのくらいの過剰さが無ければ清志郎のライヴに来た気がしない。全て了解済みであるから観客は大喜びで清志郎を迎え、「Midnight Blue」なんてどちらかと言えば渋めの曲なのにお構い無く大合唱である。これでこそクリスマスの清志郎のライヴだ。
 ナイス・ミドル結成後のこの形式のライヴはもう何度も見ているので、大まかな構成も既に分かっている。あらかじめ予測された範囲に過ぎないのは事実ではあるが、予定調和を飽きさせずに見せるエンターテイナーとしての能力は、来年でデビュー35周年という大ベテランならではだ。相変わらず声はよく出ているし、ステップを踏みながらステージ上を右へ左へ、時にジャンプも披露して汗だくになってシャウトする53歳に感動を覚えずにはいられない。
 加えて最近の曲である「G.O.D.」などは去年から定番のレパートリーになっているせいか、現在のバンドの良い部分が凝縮されたような見事な演奏であり、往年の曲以外にも見所、聴き所を用意しているしたたかさがある。来年発売予定の新作アルバムからも数曲披露され、どれも現在の好調ぶりを反映したような出来であった。発売が楽しみだ。
 もちろん昔の曲を随所に散りばめてサービスすることも忘れてはいない。渋いところでは「お墓」「指輪をはめたい」が聴けたし、定番の「トランジスタラジオ」「雨上がり」「ドカドカ」「スローバラード」「上を向いて歩こう」「Sweet Soul Music〜White Christmas」もちゃんとやってくれた。観客が期待していることをはぐらかすことなく、しっかり応えるのもエンターテイナーの務めだ。定番曲ではもちろん大合唱が起きる。これが歌いたくて来てるのだから、当たり前だ。この日の観客の反応の良さには清志郎も「いいノリしてるぜ」とご満悦だった。客層は30代40代のおじさん、おばさんが多いのは無理も無いが、20歳前後の若者の姿も少なからず見受けられたのは嬉しかった。フジロック効果か?
 アンコールは2回。最後は清志郎が弾き語りで「イマジン」を熱唱し、幕。終わってみれば3時間近いライヴだった。50歳を超えてこれだけ長時間のライヴをこなすということに単純に驚きと感動を覚える。その上だれた部分は全く無く、中身の濃い内容だったのだから、会場を後にする時に不満を抱いた客はおそらく一人もいないはずだ。無論私も充分に満足した。来年以降もクリスマスのライヴがあれば行ってしまうだろうと思う。