MAD3@下北沢Shelter

LOVE WENT MAD



 年末恒例のシェルターワンマン。今年は15周年記念イベントを兼ねての開催だった。狂気の凝り性3人組、MAD3だけにワンマンのライヴではいつも以上に趣向を凝らすのが常であり、数年前の新宿リキッド・ルームでのワンマンなどは3部構成それぞれが異なる衣装で登場し、ゲストも多数という盛りだくさんな内容だった。今年は15周年の節目であり、自主レーベルROCK'N ' ROLL KINGDOMの設立と第一弾シングル「KING PYRAMID SPECIAL」の発売に合わせたライヴでもあったので、どういうことになるのだろうと期待を大いに膨らませて迎えた当日だったが、ゲストは一切無し、気違い3人組の持てる力を存分に発揮しての質実剛健なステージであった。
 オフィシャル・ページにて発表されたセットリストは次の通り。

1.JACK THE VIOLENCE
2.DEVIL MEN
3.DEATH RACER
4.MACHINE BLASTER
5.RAMONES 
6.ACE OF SPADES
7.FUZZ WIZARD ←新アレンジ
8.BLACK LEATHER BLITZ 
9.NEVER FALL IN LOVE AGAIN
10.IL'MATT'
11.TOO KOOL TO DIE
12.SOMETHING ELSE ←EDDIE COCHRANの名曲をMAD COVER
13.PLEASE DON'T TOUCH
14.MAD VIKER
15.SPY FROM KYOTO
16.KEEP ON ROCKIN'
17.DANCE WITH MARIE
18.CARAVAN
19.FOREVER TEENAGE
20.NOSFERATU
21.LOOKIN'FOR THE TROUBLE
22.KING PYRAMID SPECIAL
アンコール1
1.WEDGE
2.SHAKIN'ALL OVER
アンコール2
1.ROCK“N”ROLL KINGDOM
2.I HATE CHRISTMAS
3.LONDON DUNGEON
アンコール3
1.WE'RE THE MAD CREW
2.KING PYRAMID
3.Q

 全30曲、全てを直球だけで押し切った2時間強は、それはそれは凄まじいものであった。2時間を超えるライヴの場合、構成として緩急を付けなければ途中で息切れしてしまうものだが、彼らの場合「引き」というものが無い。最初から最後までアクセル全開で突っ走った末に辿り着くカタルシスたるや、いやもうとんでもない境地でございましたです。
 オープニングから3人それぞれが制御できるギリギリのところで演奏していたため、「ACE OF SPADES」まで演奏したところでHARUTOがベースの弦を切ってしまい中断、後半でもKYOがスネアを潰してしまい、交換するための中断があったほど。ベースの弦が切れた時は修復に時間がかかり、その間ステージではEDDIEとKYOの2人だけで「You Can't Put Your Arms Around A Memory」(ジョニー・サンダース)と「からかわないで」(山口冨士夫)のカヴァーを披露。この時だけはスタジオの空き時間でのMAD3を見るようで、唯一の「引き」の瞬間であった。
 記念イベントだけあって、選曲はデビュー当時のものから最新シングル曲まで幅広く、バンドの歴史を俯瞰できるもの。歴史を重ねている分、昔の曲にはそれなりの懐かしさは感じられたものの、郷愁を誘うというよりは、今でも違和感無く演奏できることを証明して見せた驚きの方が大きかった。相変わらず看板に偽り無く狂っているのだ。しかしそれも悪い意味で変化が無いのではなく、「LONDON DUNGEON」以降近年、特に最新シングル曲である「IL'MATT'」「KING PYRAMID SPECIAL」にはプログレ調の大作志向が現れている点において、歴史と共にMAD3ならではの変遷を重ねたことも示していた。ただのガレージ・パンクとしてのMAD3と、その文脈からは大きく外れるMAD3のどちらもが紛れもなくMAD3である摩訶不思議にして厳然たる事実が彼らの魅力だ。
 最初から最後まで爆音を浴び続け、しかも私はスピーカーの真ん前にいたため、KYOのバスドラが踏まれる度に風圧も受けるほどで、ライヴ終了後は会話もできない難聴状態になってしまった。しかし壮絶なライヴを見た証として、この耳は一種の勲章のようなもののように感じられた。
 終演後、25日の一般発売を前に会場で先行発売された「KING PYRAMID SPECIAL」のシングルを購入。ピラミッド型の変形ジャケットで、何と特殊過ぎて業者が受注してくれなかったためにジャケットはメンバー自ら手作りだったそう。本当にメンバーがカッターで切って、折って、貼ってと完全家内制手工業によってジャケットを作っており、量産がきかないため一般にはあまり流通しないかもしれない。変形ジャケコレクターは早めに手を打っておいた方がよかろう(笑)。