Happy 50th Birthday to Elvis Costello on 25 August!(リンクの有効期限は25日のみ)
エルヴィス・コステロがとうとう50歳になられました。めでたいことには違いない。しかし改めて考えてみると、デビュー当時から創作のペースや質を落とすことなくこの歳まで来た人は、ロック史上において他に例を見ないことに気付く。
先達の例を見ても、50歳の頃の作品というとポール・マッカートニーなら『OFF THE GROUND』、ミック・ジャガーなら『WONDERING SPIRIT』、ボブ・ディランなら『GOOD AS I BEEN TO YOU』がそれに当たる。いずれも意欲作ばかりではあるが、それぞれのピーク時と比較すると見劣りすることは否めないし、評価は常に「まだ大丈夫」という安心感を与えてくれるかどうかにかかっている。「もう駄目だ」と思わせないことが重要なポイントになってきていて、往時の作品を超える内容ははなから期待されていないのだ。
エルヴィス・コステロにおいてはそのような捉えられ方は未だにされていない。再評価、もしくは復活という言葉で語られたことはないし、今なお毎年のように新作を発表し、世界中でライヴを行っている。次回作が最高傑作かもしれないと思わせる50歳なのだ。
10歳以上年上の先達を比較の例に挙げたのはフェアではなかったかもしれない。彼らはロックの歴史そのものであって、20代のうちにその概念、文化を形成してしまった人たちだ。それをさらに20年、30年と維持せよというのは酷である。77年にデビューしたエルヴィスにとっては、自分の音楽が10代のフラストレーションのはけ口であり続ける必要がなかった分、先達よりラッキーだ。確かにデビューから数年の間はポップスターであり、商業的なピークもその時期にあったと言えるが、開拓者であった先達の後を追う世代に与えられた特典として、既に市場は成熟していたし、ロックはボーイズ&ガールズに独占されるべきものという概念も崩れていた。一定の水準さえ保っていれば(これは言うほど簡単なことではないが)、歳相応の変化は受け入れられ、評価もセールスも着いてきたのだ。
20年以上この人の音楽を聴いてきて時々思うのは、トップに立つことをあえて避けてきたのではないかということだ。それがどの程度意識的なものだったのかは分からない。しかしトップに立てば、ピークを経験すれば、それ以後は下降を辿るしかないことは自明の理だ。そうならないためにはトップに立たなければ良い。実際、ファンサイトなどで時々行われるアルバムの人気投票は、ものの見事に結果が割れる。これだけのキャリアがありながら、誰もが認める最高傑作というものが存在しないのだ。
「死ぬまで18歳」とか「伝説の男」とか、まぬけなコピーとは無縁でいられた理由はそこにある。それにしてもデビューから27年、50歳を迎えるまで創作活動は一定の水準を保ってきたわけで、それだけでも才能の証明には充分だという気もする。今年も既に2枚のアルバムの発売と、12月の来日公演が発表になっている。こうなったらこの類まれなる才能がどこまで行くのか、見届けてやるぞと闘志が湧いてくる。